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渦流量計VYシリーズはなぜ蒸気流量計として最適なのか?:選定から交換まで一貫して最適な渦流量計

目次

1. はじめに

蒸気は多くの産業で利用されている高温・高圧の熱媒体です。蒸気は化学プラントや工場に張り巡らされた蒸気ラインから供給され、反応炉や装置の温度管理、殺菌、洗浄、空調管理など多数の用途に用いられ、蒸気エネルギー需要は増加傾向にあります。また、近年の省エネルギー要求及び環境意識の高まりから蒸気流量測定の需要も増加しています。

このような需要に応える最適な蒸気流量計として、渦流量計 VY シリーズを提案します。この記事では、蒸気測定にまつわる背景を含め、その理由を示します。

2. 蒸気流量測定の需要が増加している理由とは?

近年、製造業における更なる省エネルギー化、効率化、そしてスマート工場化 ( DX 化 ) は重要なテーマとなっています。加えて、SDGs のゴール達成やカーボンニュートラル社会の実現は、製造業のみならず、世界全体の重要な課題となっています。例えば、日本においては 2023 年5月に成立した『脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律 ( 通称: GX 推進法 ) 』の遵守が求められています。
DX と GX の取り組みの例として、まずは DX の実現によって、生産性効率改善や異常検知などを行うために設備やプロセスデータの「見える化」が行われます。そのデータを用いて、炭素排出量を正確に計測するカーボンフットプリントなどの「見える化」を実現することで GX を実現していく手順となります。

このような取り組みの中で、蒸気の「見える化」の第一歩として、蒸気流量を測定することは、エネルギー利用量や燃料使用量のモニタリングを実現し、エネルギーロスの削減や燃料効率改善につながります。上記のような課題に応えるため、蒸気流量計の需要は増加しています。

3. 蒸気流量計に求められる条件とは?

図1 に示すように、蒸気流量計に求められる要求は多岐にわたります。生産設備としての蒸気ラインは長期間連続的に稼働し続けますが、運転条件は常に一定ではなく、生産計画の変更や季節変動などの多くの要因から影響を受けるため、変化に対応しながら長期的に安定した測定ができることが求められます。VY シリーズは多彩な要求を満たすような特長を備えています。

図1:蒸気流量計に求められる要求と渦流量計VYシリーズの対応
図1 : 蒸気流量計に求められる要求と渦流量計 VY シリーズの対応

 

4. 蒸気流量計として渦流量計 VY シリーズはどうして最適なのか?

この項では、選定から交換までの製品ライフサイクルを通じて VY シリーズが蒸気流量計として最適な理由を、蒸気ラインの例と共に具体的に示します。測定原理などの渦流量計の基本を学びたい方は、チュートリアル [渦流量計の基本: 測定原理と測定対象] をご覧ください。

図2 に一般的な飽和蒸気パッケージボイラーによる蒸気供給の例を示しました。パッケージボイラー ( スペック: 最大蒸気流量 2500 kg/h・飽和蒸気温度 170 ℃・飽和蒸気圧力 0.69 MPaG / 0.79 MPaA) 4台で生産設備の蒸気 ( 稼働時の最大蒸気流量 8000 kg/h ) を全て供給するような蒸気ラインです。
蒸気はボイラーから蒸気ヘッダに供給され、そこから枝分かれし、減圧弁で減圧され、それぞれの蒸気利用設備へと供給されます。蒸気ライン全体を効率的にモニタリングするために、蒸気ヘッダ前 ( 供給側 ) と各蒸気利用設備である大型加熱炉、加熱炉、熱交換器 ( 使用側 ) へ蒸気を供給する配管に A ~ G の計7台の VY シリーズを設置しています。
また、VY シリーズを設置する箇所の配管口径・蒸気流量・温度・圧力は表1 のとおりです。

 

図2: 蒸気ラインの例
図2 : 蒸気ラインの例

 

表1 : 蒸気ライン例における VY シリーズ設置箇所での条件

渦流量計 VY シリーズ No. 配管条件 常用温度 (℃) 最大温度 (℃) 常用圧力 (MPaG) 最小圧力 (MPaG) 常用流量 (kg/h) 最小流量 (kg/h) 最大流量 (kg/h)
A : ボイラー 流出量 100A Sch80
JIS 10K
170 190 0.691 0.4 2500 1000 8000
B : 大型加熱炉 1 流入量 80A Sch80
JIS 10K
170 190 0.691 0.4 500 350 4000
C : 加熱炉 2 流入量 80A Sch80
JIS 10K
150 170 0.374 0.2 500 180 1000
D : 加熱炉 3 流入量 80A Sch80
JIS 10K
150 170 0.374 0.2 500 160 1000
E : 加熱炉 4 流入量 80A Sch80
JIS 10K
150 170 0.374 0.2 500 150 1000
F : 熱交換器 1 流入量 50A Sch40
JIS 10K
130 150 0.169 0.1 350 100 700
G : 熱交換器 2 流入量 50A Sch40
JIS 10K
130 150 0.169 0.1 150 60 300

4.1. 選定

渦流量計は流量、温度、圧力、配管の条件をふまえて最適な口径を選定するサイジングが必要です。今回は表1 の条件から、サイジングを行います。サイジングについての詳細は一般仕様書をご覧ください。渦流量計 VY シリーズは豊富な防爆認証、配管接続規格、レデューサ形、そして付加仕様をラインアップしており、様々な用途やお客様環境や要求にあわせた仕様選定が可能です。

表2 に今回の例におけるサイジング及び仕様選定結果を示しました。内蔵温度計仕様による流体温度と機器が持つ飽和蒸気表から飽和蒸気密度を演算し、蒸気質量流量をモニターするような利用方法を想定しています。通信形は HART とし、各設置条件による仕様及び付加仕様を選択しています。

今回の例では一般的な温度・圧力条件の飽和蒸気ラインを取り扱っていますが、渦流量計 VY シリーズは過熱蒸気も測定可能です。温度は最高450℃、圧力は 40 MPa まで対応します。外部圧力計の電流出力を VY に取り込み、温度と圧力から過熱蒸気密度を正確に演算できます。また、内蔵温度計付の接続口径は 25~300 A に対応しており幅広い蒸気流量測定に適用できます ( 400A は特注となります )。
仕様については VY シリーズの製品ページをご参照ください。詳細なサイジングと選定についてのご要望は、担当営業までお問い合わせください。

 

表2 : 渦流量計 VY シリーズの選定例

渦流量計  VY シリーズ No. 選定仕様の説明 渦流量計 VY シリーズ
選定 MS コード
A : ボイラー 流出量 接続口径100A 内蔵温度計付 ロングネック形 JIS 10Kフランジタイプ
HART通信形 アレスタ付 ステンレスタグプレート付
保温施工に便利なロングネック形を選定
屋外のため落雷を考慮してアレスタを付加:/A
管理用のステンレス鋼タグプレートを付加: /SCT
VY100-000-0HBLBBJ1-10JA100/A/PJ/SCT
B : 大型加熱炉 1 流入量 接続口径80A 内蔵温度計形 JIS 10Kフランジタイプ 分離形
HART通信形 ステンレスタグプレート付
天井付近の配管のため、分離形を選択:分離形
管理用のステンレス鋼タグプレートを付加: /SCT
VY080-000-0BBLBBJ1-10NNN00/PJ/SCT
VY4A-000-10JA100/PJ/SCT
VY1C-1-10M
C : 加熱炉 2 流入量 接続口径80A 内蔵温度計形 JIS 10Kフランジタイプ
HART通信形 ステンレスタグプレート付
管理用のステンレス鋼タグプレートを付加: /SCT
※レデューサ形もサイジングを満たすため選択可能
VY080-000-0BBLBBJ1-10JA100/PJ/SCT
D : 加熱炉 3 流入量 VY080-000-0BBLBBJ1-10JA100/PJ/SCT
E : 加熱炉 4 流入量 VY080-000-0BBLBBJ1-10JA100/PJ/SCT
F : 熱交換器 1 流入量 接続口径50A 内蔵温度計付 JIS 10Kフランジタイプ HART通信形
ステンレスタグプレート付 変換器向き変更
管理用のステンレス鋼タグプレートを付加: /SCT
ディスプレイが壁側とならないように変換器向き変更: /RH
VY050-000-0BBLBBJ1-10JA100/PJ/SCT/RH
G : 熱交換器 2 流入量 接続口径50A レデューサ形 内蔵温度計付 JIS 10Kフランジタイプ
HART通信形 ステンレスタグプレート付
常用流量/最低流量が低いため、レデューサ形を選定: (000)-1(BBL)
管理用のステンレス鋼タグプレートを付加: /SCT
VY050-000-1BBLBBJ1-10JA100/PJ/SCT

4.2. 設置・配線

VY シリーズはフランジとウェハの幅広い接続規格に対応しており、加えて、水平配管・垂直配管・傾斜配管に柔軟に設置可能です。また、他社渦流量計と比較して必要直管長やフランジタイプでの面間寸法が短く設置の制約が少ないのも特長です。耐熱を考慮した設置の制約も少ないです。渦流量計 VY シリーズに必要な直管長についての詳細は、チュートリアル ”渦流量計に必要な直管長” をご参考ください。

また、配線に関しては、2線式流量計のため4線式に比べて配線は容易です。加えて、ゼロ調が不要のため、電源を投入するだけで蒸気流量測定が可能です。

蒸気流量計を設置する場合の重要なポイントとして、放熱によるエネルギーロスを避けるための保温施工があります。VY シリーズは保温施工性に優れたロングネック形もラインアップしておりますので、ご活用ください。

図3: 設置性に優れた渦流量計VYシリーズ
図3 : 設置性に優れた渦流量計 VY シリーズ

4.3. 試運転・立ち上げ

試運転及びボイラーの立ち上げ時には、急激な温度変化、湿り蒸気及びドレン流れや配管振動が発生する場合があります。VY シリーズは、渦発生体、2つの流量センサ、温度センサ ( オプション ) が一体となった横河電機独自の構造を有します。ドレンによって導圧管内の差圧が乱れるオリフィス流量計とドレンによって超音波が減衰及び分散する超音波流量計に比べて、渦発生体全体でカルマン渦を検知する構造のため、ドレンの影響を受けにくく、安定して測定ができます ( 図4 )。

また、蒸気ラインの運転開始直後はドレンによる配管振動が発生する場合があります。そのような場合でも、配管振動によるノイズを横河電機独自の信号処理技術である SSP によって低減することで安定した測定が可能です。

また、VY 内蔵温度計付はボイラー立ち上げ時の蒸気の予熱温度を同時に測定することができ、設備投資費用の削減につながります。更に、内蔵温度計は配管中心付近に配置されるため、配管放熱やドレンの影響を受けにくく、正確に蒸気温度を捉えることができます。

 

図4: ドレンや振動ノイズの影響を受けにくい横河電機独自の構造
図4 : ドレンや振動ノイズの影響を受けにくい
横河電機独自の構造

試運転・立ち上げ時に測定の健全性を確認したい場合には、FieldMate 及び FSA130 電磁流量計・渦流量計ベリフィケーションツール ( どちらも別売り ) を用いた、渦波形モニター ( Vortex Waveform Monitoring ) が有用です。渦流量計での流量測定は、渦が規則的に発生していることが重要です ( 参考: チュートリアル [渦流量計の基本: 測定原理と測定対象]  )。

渦波形モニターは、センサが捉えた渦波形と渦周波数を計算するためのパルス波形を機器内部で収集し、画面上に表示する機能です。渦波形が規則的な正弦波となり、渦波形に応じたパルス波形が発生していれば、安定した蒸気流量測定であると判断できます。立ち上げからの時間経過と共に蒸気流量測定が安定してきたことを確認することはもちろん、必要に応じて渦波形とパルスを確認しながら VY シリーズのパラメータを調整することもできます ( 図5 )。

このように渦波形から安定した測定であることを確認することは、従来だとオシロスコープを持ち込むなどの大掛かりな準備が必要でしたが、VY シリーズでは計器室など離れた場所から HART 通信で可能となりました。

図5: 試運転・立ち上げ時における渦波形モニター機能の活用
図5 : 試運転・立ち上げ時における渦波形モニター機能の活用

4.4. 運転

渦流量 VY シリーズの検出構造は、長い販売実績に裏付けされた信頼と長期安定性があります。横河電機は 1969 年に世界で初めて産業用渦流量計を発売し、1979 年に汎用型の渦流量計 YEWFLO シリーズを発売しました。発売から50 年以上、お客様やアプリケーションによる要望に応え続けて進化し続けてきた YEWFLO シリーズの最新機種が渦流量計 VY シリーズです ( 図6 )。

図6: 横河電機の渦流量計の歴史
図6 : 横河電機の渦流量計の歴史

更に、渦流量計 VY シリーズはレンジアビリティと温度範囲が広いため、季節変動や負荷変動による蒸気流量の変化が起こっても、安定した測定が可能です。加えて、急激な温度低下などでドレンが発生し蒸気品質が低下した場合でも、横河独自の検出構造によりカルマン渦を正確に捉えることで、測定が影響を受けにくいのが特長です。

渦流量計には圧力損失が存在し、運転時のエネルギー損失を抑えるために考慮が必要です。VY シリーズにおける圧力損失は温度に換算すると、条件によって変化はあるものの、今回の例において常用流量では 0.5 ℃ 以下と小さい値になります ( 表3 )。渦流量計 VY シリーズは、絞り比等にもよりますがオリフィス流量計と比べて約 50 % ~ 80 % ほど圧力損失が小さく、運転時のエネルギーロスを抑えます。

 

表3 : 渦流量計 VY シリーズによる圧力損失の例

渦流量計  VY シリーズ No. VY 口径 常用温度 (℃) 常用圧力 (MPaG) 常用流量での 圧力損失 (kPa) 圧力損失による 温度低下 (℃) 常用流量 (kg/h) 最大流量での 圧力損失 (kPa) 圧力損失による 温度低下 (℃) 最大流量 (kg/h)
A :ボイラー流出量 VY100 170 0.691 8.45 0.4 2500 27.0 1.4 8000
B : 大型加熱炉 1 流入量 VY080 170 0.691 2.57 0.1 500 20.6 1.1 4000
C : 加熱炉 2 流入量 VY080 150 0.374 1.04 0.1 500 2.1 0.2 1000
D : 加熱炉 3 流入量 VY080 150 0.374 1.04 0.1 500 2.1 0.2 1000
E : 加熱炉 4 流入量 VY080 150 0.374 1.04 0.1 500 2.1 0.2 1000
F : 熱交換器 1 流入量 VY050 130 0.169 3.24 0.4 350 6.5 0.8 700
G : 熱交換器 2 流入量 VY050 -1
レデューサ形
130 0.169 1.87 0.2 150 3.7 0.5 300

4.5. メンテナンス

渦流量計は適切な条件下でほぼメンテナンス不要で安定した蒸気流量測定が可能ですが、VY シリーズは更に機器とプロセスの健全性を優れたデジタル化技術で支えます。状態基準保全 ( CBM ) を実現する、渦発生体やセンサ素子を含めた機器全体の「自己診断機能 ( ビルトインベリフィケーションツール ) 」と、測定信号の特徴から特定流体の脈動や配管振動などを検知する「プロセス診断機能」を搭載しており、常時自動で診断を実行しアラームなどで発報する機能を備えています。

また、センサ・信号処理・アラーム等を検査しレポートを出力する「ベリフィケーション機能」と、渦波形モニター、周波数分析結果及び出力信号感度のトレンド取得と表示を行う「リモートメンテナンス機能」を FieldMate 及び FSA130 電磁流量計・渦流量計ベリフィケーションツール ( どちらも別売り ) で提供します。
詳しくは、FSA130 の製品ページをご確認ください ( 図7 )。

図7: 渦流量計VYシリーズの診断機能
図7 : 渦流量計 VY シリーズの診断機能

 

蒸気ラインにおいて、配管及び渦発生体にスケールや錆の付着などが発生する場合があります。また、ウォーターハンマー発生などの不測の事態で渦発生体が破損する場合もあります。
このような場合に、渦流量計を配管から取り外すことなく渦発生体のみを取り外して清掃や交換が可能のため、ダウンタイム及び費用を削減できます ( 図8 )。

このように、渦流量計 VY シリーズは、デジタル化機能及びハードウェア構造の両面から、蒸気ラインの保全業務の効率化・省人化を支援します。

図8:渦流量計VYシリーズのインラインでの分解イメージ
図8 : 渦流量計 VY シリーズのインラインでの分解イメージ

4.6. リプレース

渦流量計 VY シリーズの面間寸法は、1987 年販売開始の YEWFLO Style D 以降、歴代 YEWFLO シリーズと同じです。そのため、配管の追加工事不要で同じ場所に設置することが可能で、仕様を変更する場合でもリプレースが容易です ( 図9 )。リプレースについては、”既存蒸気設備をアップグレード:渦流量計 VY シリーズの導入”をご覧ください。

図9:従来機種からリプレースする際のメリット
図9 : 従来機種からリプレースする際のメリット

5. おわりに

本記事では、渦流量計 VY シリーズはなぜ蒸気流量計として最適なのか?という問いに回答する形で示しました。それは、選定から交換まで一貫して、蒸気流量計に必要な多くの要望に応えられることです。ここでは紹介しきれていない仕様や機能もございますので、関連製品のリンクから渦流量計 VY シリーズの製品ページをご覧ください。

本記事が、蒸気流量計及び蒸気流量測定の理解の助けとなり、渦流量計 VY シリーズがお客様の生産性向上のみならず DX 及び GX 実現の一助となれば幸いです。

 

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    長期安定性と高い信頼性により、お客様の生産性向上に貢献しています。
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