メッセージ
YOYOKOGAWAグループでは、中期経営計画「Growth for Sustainability 2028」の基本戦略の一つに「無形資本の活用・育成による価値創造」を掲げ、人的資本の強化に取り組んでいます。人財は企業の成長の鍵であり、新しい価値を共創していくための源泉です。社員一人ひとりの成長とエンゲージメント向上を実現することによって、持続的な企業価値の向上を目指します。
YOKOGAWAグループの中核である横河電機では、健康経営を組織の活力と生産性を高める基盤と位置付けています。健康経営の基本方針として2016年9月に制定した「健康宣言」のもとに、社員の心身の健康を支えるさまざまな取り組みを実践しています。
■健康宣言
YOKOGAWAは、心身の健康の維持・増進に自ら努める社員を支援し、いきいきと活力のある職場を作り、より豊かな人間社会の実現に貢献できる会社を目指します。
健康は、仕事のパフォーマンスにも人生の充実にも直結します。今後も社員の健康に関する取り組みを加速するとともに、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
横河電機株式会社
取締役 代表執行役社長
重野 邦正
背景
YOKOGAWAが持続的な価値を提供し社会課題の解決をリードしていくためには、全社員が共通の目標に向かい、結束してチーム力を最大化すること、またその中で多様な人財が、自らの意思で成長し、チャレンジし続けることが重要です。
その重要な鍵となるのが社員エンゲージメントの向上です。
YOKOGAWAのミッションや価値観に共感し、誇りをもち、働きやすい労働環境のなかで活発かつ自律的に働き、組織の一員としての貢献を実感する社員の姿の実現の先にエンゲージメントの向上があります。
この目指す姿を実現するために、社員の組織に対する考えや感情、帰属意識、組織風土、職場環境、個人の成長の機会、心身の健康などの様々な視点から定期的にエンゲージメントの要素を測定しその向上に努めています。
中でも、ウイリス・タワーズワトソンモデルを用いた組織の業績成長との関係性の強い「持続可能なエンゲージメント」のスコアをKPIに設定し、長期経営構想における2030年度で目指すサステナビリティ目標の一つに「社員のWell-beingを高めるエンゲージメント84%以上」を掲げ、達成に向け推進しています。スタート時の2019年度は78%でしたが、コロナ禍を経て2024年度は82%に向上しています。
横河電機では、社員一人ひとりの心身の健康や働きやすい職場環境の整備はこのエンゲージメント向上の基盤と考え、健康経営に取り組んでいます。
目的
横河電機では、健康管理を経営的視点で捉え、戦略的に実践する「健康経営」を推進することで、社員の疾病発症リスクの低減や法令遵守のみならず、社員の活力向上、生産性の向上、労働環境の充実、優秀な人財の確保、そして重要課題である社員エンゲージメントの向上につなげます。
※「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。
体制

取締役 代表執行役社長が最高責任者となり、総括安全衛生管理者である労働安全衛生担当役員を中心とした経営陣の牽引のもと、安全・衛生委員会を核に人財総務本部の診療センター、総務部が担当部署として産業医や横河電機健康保険組合・労働組合と連携するなかで健康経営を推進しています。
健康経営計画マップ
YOKOGAWAは、長期経営構想においてサステナビリティ目標の一つにエンゲージメントを、また、中期経営計画においても人的資本の施策の一つとしてWell-beingとエンゲージメントの向上を掲げています。横河電機は健康経営を組織の活力と生産性向上の基盤として位置づけ、この考え方に基づく施策の推進を通じて経営目標の達成を後押ししています。
健康課題
- 少ない運動習慣
- 不適正体重者の多さ
- 良好な睡眠がとれている社員の減少
実績と目標
| 2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
2024年度 実績 |
2025年度 実績 |
2025年度 目標 |
2030年度 目標 |
|
|---|---|---|---|---|---|---|
| 社員の健康増進への意識 | ― | 69% | 74% | ― | 80% | 100% |
| 30分以上の運動週2回以上 実施率 |
男性41.5% 女性28.1% |
男性42.5% 女性29.2% |
男性43.5% 女性31.1% |
― | 男性44.5% 女性35.0% |
男性50% 女性50% |
| 毎日1時間以上の歩行等の運動実施率 | 34.5% | 40.1% | 44.4% | ― | 45.40% | 47% |
| 社内walkingイベント参加者数 | 250人 | 244人 | 301人 | 321人 | 350人 | 600人 |
| 適正体重維持者率 | 男性65.6% 女性65.1% |
男性66.0% 女性68.8% |
男性65.5% 女性68.8% |
― | 男性66.3% 女性69.0% |
70.00% |
| 睡眠についてアンケート結果 良好な回答の割合※1 |
82.9 | 82.5 | 82.1 | ― | ― | ― |
| 禁煙率 | 89.5% | 88.0% | 88.8% | ― | ― | ― |
| 健康診断実施率 | 100% | 100% | 100% | ― | 100% | 100% |
| 二次検査受診率※2 | 37.2% | 34.3% | 37.9% | ― | ― | ― |
| 特定保健指導実施率 | 82.4% | 82.4% | ― | ― | 55.8%※3 | 60.0%※3 (2029年度) |
| ハイリスク者の※4 管理(治療継続)率 |
88.6% | 85.7% | 87.1% | ― | 100% | 100% |
| 女性の健康に関する E-ラーニング/セミナー参加率 |
セミナー 4.1% (アーカイブ視聴含まず) |
セミナー 11.2% アーカイブ視聴含む |
E-ラーニング 70.6% |
― | ― | ― |
| 上記についてアンケート結果 「参考になった」/「活用できそう」等良好な回答の割合 |
98% | 98% | 99% | ― | ― | ― |
| 女性のがん検診率 | 60.0% | 63.4% | ― | ― | ― | 80% |
| ストレスチェック受検率 | 99.7% | 98.7% | 99.9% | ― | 100% | 100% |
| 高ストレス者率 | 6.8% | 7.2% | 8.3% | ― | 7.2% | 5.0% |
| 平均月間総実労働時間 | 164時間 | 163時間 | 163時間 | ― | ― | ― |
| 平均年次有給休暇取得率 | 76.9% | 78.5% | 79.8% | ― | ― | ― |
| 平均年次有給休暇取得日数 | 20.4日 | 20.8日 | 21.1日 | ― | ― | ― |
| 年度末休職者率 | 0.64% | 0.64% | 0.82% | ― | ― | ― |
| 平均勤続年数 | 18.4年 | 18.0年 | 17.1年 | ― | ― | ― |
| 絶対的プレゼンティーイズム※5 | 64.4点 | 63.5点 | 63.8点 | ― | 64.4点 | 65.0点 |
| 4~10月一人当たりの体調関連休暇日数※6(アブセンティーイズム) | 2.16日 | 2.76日 | 2.70日 | ― | ― | ― |
※1 ストレスチェックにおける質問「よく眠れない」に対し、「ほとんどなかった」「ときどきあった」の回答をした群
※2 二次検査受診率は実人数による率ではなく、検査項目による受診率。システム移行に伴い2023年度は実人数
※3 特定保健指導実施率の目標は横河電機ではなく、横河電機健康保険組合の目標値
※4 血圧180/110mmHg以上あるいは血糖値200mg/dl以上あるいはHbA1c8%以上者の治療継続率
※5 WHO-HPQ日本語版を用いて算出
※6 疾病休業の人事データと勤怠データを使用し算出。通院での休暇取得を含む

取り組み
一次予防・二次予防
横河電機では、運動・食事・睡眠・物事の捉え方・コミュニケーションなどについての良い生活習慣が、心身の疾病予防・改善のみならずストレスの軽減や仕事のパフォーマンス向上に最も重要との考え方から、「横河健康心得8か条」を2015年度に作成し、経営トップから折に触れてメッセージを発信するなど、その社内浸透と実践による生活習慣の改善に取り組んでいます。
2015年度より、社員自身がコンディションを確認し、セルフケアを進め、健康を増進させる健康増進施策として「健康開発プログラム」を実施してきましたが、コロナ禍による働き方の変化に伴いこのプログラムを見直し、2022年度からは、新たに全社員を対象とした健康増進プログラム「Let’sシャイン!」を開始しました。従来同様8項目の生活習慣改善を目的とし、個人の健康行動だけでなく、会社や職場といったチームでの課題の共有と行動を促進していく仕組みを意図しています。社員の健康はもちろんですが、コロナ禍で希薄化した社員間のコミュニケーション増加や結束強化にもつながることを期待しています。
初年度の2022年度は、課題である運動不足の改善に対し特に力を入れ、運動に関する情報発信や健康保険組合との連携によるウォーキング大会に加え、社内事業部対抗のウォーキング大会を労働組合の協力を得て勧誘するなど力を入れ実施しました。ウォーキング大会については、2023年度より運動習慣づけアプリの導入や景品の付与など実施しているものの、参加者増加が今後の課題です。
2024年度より、社員一人ひとりの健康に関する関心の向上と、社員にとって産業保健師がより身近な相談者となることを目指して、職場内に「出張健康相談所」を設置しました。健康について考えるきっかけづくりや身近に相談できる場として社員に活用されています。
また、近年、良好な睡眠を取れている社員の減少がみられることから、2024年度より、新たな課題として取り上げ、セミナーやEラーニングによる睡眠ヘルスリテラシー向上に取り組むとともに、定期健康診断時にエプワース眠気尺度*を希望者に対し実施、産業医による指導を行うなど取り組んでいます。
2025年度は、社員食堂の運営会社と共に健康測定会を実施し、管理栄養士による個別指導を行うなど自律的な生活習慣の改善を支援しています。
このほか、課題である不適正体重者をはじめとする健診有所見者の指導、高ストレス職場指導、ストレスに関する管理職研修、介護やがん治療と仕事との両立支援や女性の健康問題に関するセミナー・E-ラーニングなどの実施に加え、働きやすいオフィスの整備や1on1ミーティングなどを実行し、社員の健康維持増進を図っています。
*日中の眠気の程度を評価するための自己記入式の質問票。睡眠時無呼吸症候群など睡眠障害のスクリーニングや、眠気の程度を客観的に把握するために用いられます
感染症予防
当社では、社員の健康維持および社内での感染症を防ぐため、自己負担ではありますが、社内において毎年インフルエンザの予防接種を実施しています。また国の風疹対策を受け、定期健診の際にワクチン接種推奨年代の社員全員を対象に、風疹抗体検査をできるようにしました。
新型コロナウイルス対応としては、感染拡大を防ぐため、2021年6月から8月まで、および2022年3月に新型コロナウイルスワクチンの職域接種を実施しました。
健康増進活動のグローバル展開
海外勤務者の健康管理
海外拠点への駐在者とその家族が、安全・安心・健康に過ごすことができるように、健康管理に関する赴任前研修、予防接種や健康診断をはじめ、赴任中のストレスチェック実施とそのフォロー、産業医による面談など帰任に至るまで健康に関する継続的なサポートを実施しています。社員の健康意識を高める施策や健康情報は、赴任中においても国内同様に提供されており、産業保健スタッフ等による相談も可能です。海外拠点から日本国内への赴任者については、産業保健スタッフ等への相談窓口のほか滞在期間に応じたサポートをしています。
海外拠点における活動
健康宣言のもと、海外各拠点ではそれぞれの地域・習慣などを踏まえ、敷地内禁煙やセミナーの実施など、実態に合った活動を行っています。
Global Conversation
健康に関してYOKOGAWA全体で考える場を開設し、世界禁煙デーや熱中症対策などGlobal共通のテーマを中心に会話がされ、各拠点での取り組みを互いに学び合う、リテラシー向上の場となっています。
取引先への取り組み支援
横河電機は、構内業務委託先である協力企業との連絡会を定期的に開催し、その中で健康経営や健康経営に関する取り組みについての情報提供を行うほか、熱中症対策やアルコールの正しい知識に関するセミナーを行うなど、協力企業の健康経営の取り組みを支援しています。
また、取引先向けにパートナーズデイを開催し、労働安全と心身の健康管理の必要性について触れることで取引先の健康経営の取り組みを支援しています。
社外からの評価
健康経営優良法人(ホワイト500)認定
従業員の健康管理や健康増進の取り組みについて、特に優良な健康経営を実践している企業として「健康経営優良法人2025(ホワイト500)」に認定されました。
スポーツエールカンパニー認定
従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行っている企業として、スポーツ庁より「スポーツエールカンパニー2025」に認定されました。


今後の展開
当社では、社員の健康維持増進に関する施策として、場所や時間にとらわれない働き方や働きやすい職場環境の整備、労働時間管理、健康増進プログラムなどに取り組んできました。今後は、一つひとつの活動の連係、担当部署間およびグループ各社との連携をより強くすることで、活動の効果をさらに高めるとともに、グループ全体での社員エンゲージメントや生産性の向上を目指してまいります。
方針
2025年度 労働安全衛生方針
「労働・安全衛生は経営の基盤である」という認識の下に、安全の確保、健康の保持増進及び快適な職場環境を形成し、労働・安全衛生に対する一人ひとりの意識の向上を図る。
- 労働・安全衛生関係諸法令を順守するとともに、必要な自主基準を設け、労働・安全衛生管理レベルの向上を図る。
- 労働・安全衛生管理体制を確立し、役割、権限および責任を明確にし、労働・安全衛生活動を推進する。
- 労働・安全衛生上の危険性および有害性の事前評価を行い、 多様な働き方におけるリスクを低減し、労働災害発生ゼロ、社員の健康増進を目指す。
- 労働・安全衛生の確保のため、多様な働き方における良好なコミュニケーションを促進する。コミュニケーションには、従業員等の協議及び参加を含める。
- 労働・安全衛生の有効性を周知し、労働・安全衛生確保に必要かつ充分な教育および訓練を実施する。
- 本方針の実行に当たり、適切な経営資源を投入し、定期的な監査、効果的な改善を継続的に実施する。
横河電機株式会社
執行役
人財総務本部長 朝長正隆
(2025年4月)
体制
安全衛生委員会による職場及び全社での安全衛生巡視活動に加え、職場安全衛生委員会を中心に職場における労働安全衛生についての危険源の特定、リスク評価およびリスクの大きさに応じた低減措置を実施し、安全・衛生委員会において共有するとともに、意見交換を行うなど、PDCAサイクルに基づく体系的なしくみを有効的に活用することで安全衛生の維持強化に努めています。
実績
| 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2024年度実績 | |
|---|---|---|---|
| 度数率 | 0.00 | 0.20 | 0.20 |
| 強度率 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
労働安全衛生マネジメントシステム
国際規格に準拠した労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)を認証取得しています。


