概要
1.高信頼、高効率運転
改修後のプラントは、安定稼動を維持。また、改修前よりも高い負荷変化率で、高効率運転を実現。
2.保全作業の効率化
統合機器管理パッケージ(PRM: Plant Resource Manager)により、フィールド機器をリアルタイム、リモートで管理。保全作業を効率化。
3.コミッショニング期間の短縮
4つの発電ユニットのうち、2ユニットの改修が完了。予定より早い工期で完遂し、コストセーブを実現。
背景
エラーリン火力発電所は、シドニーの北に位置し、4ユニットの660 MW石炭焚き発電設備を有する豪州最大の発電所の一つです。
1981年から安定的に操業を続けていましたが、豪州電力市場での一層の競争力強化のため、高信頼性を維持しながら運転効率を上げるということが求められていました。そこで2003年から発電所の改修プロジェクトが始動、計装制御全般のリプレースを、横河オーストラリアと、横河電機100%子会社テクコム・シミュレーションが担当、現在2つの発電ユニットの改修が完了しています。
このプロジェクトでは、従来のアナログ制御システムに代わり、横河のDCS、プラント情報管理システム、統合機器管理パッケージ、フィールド機器などボイラー、タービン、補機、周辺機器を統合制御監視するためのトータルソリューションを提供しました。また、オペレータ訓練用、制御機能検証用に高精度なプラントシミュレータを納入しました。
課題とソリューション
運転の効率化
運転面の課題は、発電制御の信頼性、安定性を維持しながら、運転操作と管理の両面から、改善を図ることでした。
横河が提案したDCS 「CENTUM CS 3000 R3」は、エラーリン発電所の入出力点数65000におよぶ大規模アプリケーションをシングルアーキテクチャーで統合監視するのに最適でした。二重化照合方式の高信頼コントローラによるプラットフォーム、これをベースに安定した運転と効率改善ができる制御ロジックを組み込みました。
さらに運転情報の効率的な運用のために、Exaquantumプラント情報管理システムを導入、DCSの情報を自由に加工、長期保存し、ユーザーの運転管理形態に応じた情報を発電所のイントラに接続したPCからオンラインで監視、運用できるようになりました。
一方運転操作では、実際のプラントと同じ運転体験ができる高精度なフルレプリカシミュレータを導入、オペレータの訓練やスキル向上を図りました。オペレータは実機を運転する前に、このシミュレータを使って、実際のプラントの立ち上げ・定常・非定常運転、緊急処理等を訓練、本番ではスムーズに新システムへ移行できました。
さらにオペレータがストレスなく運転に集中できるよう人間工学に基づいた制御室のデザインを行いました。
運転の効率化について、マシンと人間の両面から最適なソリューションを提供することができました。
保全作業の効率化
保全面での課題は、フィールド機器の保全作業の省力化と効率化でした。
エラーリン発電所では、今回の改修プロジェクトに先立ち1990年代後半から、フィールド機器のリプレースを段階的に進めていました。リプレースされたフィールド機器は、横河の伝送器を含む複数ベンダで構成されおり、従来の紙の管理から脱却して、リアルタイムで保守管理できる統合的な手法が求められていました。
横河が提案したのは、オープンで情報の一元管理ができる統合機器管理パッケージPRM(Plant Resource Manager)でした。伝送器などのフィールド機器やコントロールバルブの診断情報は、HARTプロトコルを使っていた為、DCSのHART対応のI/Oモジュールを介して収集、マルチベンダーの機器情報をインテグレーションしました。
これにより現場の機器にリモートアクセスできるようになり、異常発生時には現場に行くまでもなく、関連機器の状態や構成、メンテナンス情報を直ぐに確認でき、省力化、効率化を実現することができました。
コミッショニング期間の短縮
コミッショニングでの課題は、プラント停止期間を最小限にするということでした。
プラント停止期間を最小限にするため、できるだけ事前に出来ることは完了しておき、機器の据付後は速やかにプラントを立ち上げるということに注力しました。実際の運転に沿った制御ループのダイナミックな機能テストや制御パラメータのチューニング、オペレータの新しいシステムでの訓練に威力を発揮したのが、フルレプリカシミュレータでした。詳細なデータをもとに実際のプラント構成でプロセスモデルが組み込みまれているため、コミッショニング時のエンジニアリング作業も事前に準備することができました。これによりコミッショニング期間での現場作業を最小化でき、スムーズにプラントを立ち上げることができました。
結果
高信頼、高効率運転
改修後のプラントは、安定稼動を維持すると同時に、改修前よりも高い負荷変化率でスムーズなプロセスの追従が実現でき、市場の電力デマンドによる負荷変更も効率よく容易になりました。
保全作業の効率化
エラーリン発電所・技術主任のジェフ・ホーガン氏は、横河の統合機器管理システムを、次のように評価しています。
「フィールド機器はまだ更新中ですが、PRMの導入により、我々の作業場から現場の全機器にリモートアクセスできるようになりました。異常発生時には現場に行くまでもなく、関連機器の状態や構成を直ぐに確認できるようになりました。PRMは、横河のDCSシステムをさらに強化する、素晴らしい機器管理ツールです。」
コミッショニング期間の短縮
4つの発電ユニットのうち、2ユニットの改修を終え、1号機は2004年8月に、2号機は2005年初めから順次運転を再開しています。両ユニットとも、制御システムの改修は予定よりも早く完了。特に2号機については約2週間前倒しで完遂し、工期短縮に貢献できました。顧客からは高い評価を受けています。
分散形制御システム:
CENTUM CS3000 R3
バーナーマネジメントシステム:
CENTUM CS3000 R3
プラント情報管理システム:
Exaquantum
統合機器管理:
PRM(Plant Resource Manager)
プラントシミュレータ:
フルレプリカプラントシミュレータ(テクコム・シミュレーション)
フィールド機器:
差圧/圧力伝送器EJAシリーズ、ガス密度計GDシリーズ
エンジニアリング/サービス:
制御機能設計
制御ロジック作成
立会検査
設置
コミッショニング