化合物による細胞数変化とマルチパラメータ解析

はじめに

化合物の細胞への影響評価において、「細胞数」は最も基本的かつ大切な測定指標のひとつですが、この細胞数に密接に関係している細胞周期パターンの変動や細胞死の発生程度さらには分子レベルの現象を解析することは、化合物の作用機序を理解するうえで有効な手段となります。特定の細胞周期ステージマーカーやアポトーシス発生過程で出現する分子を、それぞれ異なった蛍光色で標識し、CQ1のマルチカラー撮像機能で撮影と数値化を行うことで細胞数の変動に関与する要因の情報を同時に定量的かつ多元的に得ることができます。ここではガン化学療法剤VX-680(Tozasertib)を処理したHeLa細胞を例にマルチパラメーター解析の基本的な説明をいたします。

図1 VX-680の分子作用機序およびHeLa細胞に及ぼす影響

図1 VX-680の分子作用機序およびHeLa細胞に及ぼす影響
(a) VX-680の分子作用機序の概略
(b) 細胞数のVX-680に対する用量反応曲線。エラーバーは標準誤差(n=3)
(c) HeLa細胞のマルチカラー画像
上は薬剤非処理、下はVX-680添加の細胞検体
リン酸化ヒストンH3Ser10免疫蛍光染色(赤色)、活性型カスパーゼ3の免疫蛍光染色(緑色)およびDraq7核染色(青色、疑似カラー)

実験手順

96ウエルマイクロプレートにHeLa細胞をウエルあたり2 X 104ずつ播種した。
段階希釈したVX680を投与した(n=3、図2)。24時間作用させてからホルムアルデヒド溶液を加えて固定した。
リン酸化ヒストンH3Ser10(G2/M進行のマーカー)および活性型カスパーゼ3(アポトーシスのマーカー)を二重に蛍光免疫染色の後、Draq7で核染色を行った。CQ1で撮影を行った。
対物レンズは4倍、蛍光励起用レーザーは488/561/640 nmを用いた。
取得した画像をCQ1で解析した。数値化されたデータはFCS Express™ 5 Image Cytometry, (De Novo Software、オプション)と統計ソフトウエアを使ってさらに解析を行った。

図2 VX-680用量反応計測実験用のプレート配置

 

図2 VX-680用量反応計測実験用のプレート配置

結果と考察

VX-680の濃度勾配で処理したHeLa細胞の細胞数の変化に関し、CQ1を使ってマルチパラメーター解析を行いました。
細胞周期ヒストグラムより4N細胞の蓄積が認められ、G2/M期での細胞周期停止が発生していることが示されました(図3a上段およびc)。
リン酸化ヒストンH3Ser10の免疫染色強度を表すスキャッターグラムのデータより低濃度の薬剤処理においても染色強度の低下が起こっており、オーロラキナーゼの阻害活性が認められました(図3a中段およびb)。
活性型カスパーゼ3の免疫染色強度を示す濃度プロットよりアポトーシス発生量が薬剤濃度とともに上昇していることが認められました(図3a下段およびd)。
これら3つのパラメーター解析を相互に比較すると、リン酸H3Ser10の免疫染色強度の低下が低濃度の薬剤濃度ですでに開始していることから、VX-680によるオーロラキナーゼの活性阻害が初期現象として起こり細胞周期進行の抑制につながっていることが推察されます。さらに、アポトーシスが発生し最終的に細胞死に至ります。これらの連鎖的に発生する現象が細胞数の減少が発生に関する作用機序であることを示す結果が得られました。

図3 VX-680で処理したHeLa細胞の3種類のパラメーターによる解析

図3 VX-680で処理したHeLa細胞の3種類のパラメーターによる解析
(a) CQ1より出力した解析結果の数値データをさらに3種類のパラメーターで詳細に解析
DNA含量による細胞周期(上)、細胞周期とリン酸化ヒストンH3Ser10免疫染色強度(中)、細胞周期と活性型カスパーゼ3免疫染色強度(下)
(b-d) 用量反応曲線のグラフ; G2/Mゲート内のリン酸化ヒストンH3Ser10 (b)、核あたりのDNA含量の平均(c)、細胞群全体の活性型カスパーゼ3の発生量(d)
エラーバーは標準誤差(n=3)



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