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オートファジー解析

はじめに

オートファジーは細胞内の不要なタンパク質や細胞小器官を分解し、再利用または代謝するためのシステムです。細胞がある生理条件下に置かれると不要物を覆う隔離膜が出現し、オートファゴソームを形成します。オートファゴソームはリソソームと融合し(オートリソソームの形成)、リソソームからの酸性加水分解酵素により不要物が分解されます。オートファジーは癌やアルツハイマー、パーキンソン病等の神経変性疾患との関わりや、老化等において生理機能を持つことが明らかになり、注目を集めています。
このアプリケーションノートでは生細胞膜を透過し、オートファゴソーム形成時に不要物とともに取り込まれ、リソソームと融合した後に酸性環境となったオートリソソーム内で蛍光が増大するDALGreen-Autophagy Detection (株式会社 同仁化学研究所)*を用いて、CQ1でタイムラプス撮像、ハイコンテント解析ソフトウェアCellPathfinderで解析を行った実験例をご紹介します。

実験手順

  1. HeLa細胞を96ウェルプレート(Greiner #655087)に播種し、一昼夜培養
  2. DALGreen – Autophagy Detectionを製品付属のプロトコールに従い添加、30分間処理
  3. 培地にて洗浄し、通常培地、オートファジー誘導培地(アミノ酸不含)、オートファジー阻害培地(誘導培地にBafilomycin終濃度100nM添加)に置換後、CQ1で撮像
    撮像条件は、20倍対物レンズ、蛍光 - DALGreen(Ex:405nm/Em:500-550nm) と明視野、各ウェル4視野、Zスライス6枚、30分ごとに6時間のタイムラプス撮像
  4. CellPathfinderにて明視野画像からDPC画像*を作成し、細胞をカウント、蛍光画像からオートファジーの顆粒を認識

Autophagy detection

図1 オートファジー検出
コントロール(A)とオートファジー誘導(B)、オートファジー阻害(C)の培地置換後6時間での蛍光画像
(D)(E)(F)はそれぞれ(A)(B)(C)のDPC画像(スケールバーは100 µm)
(G)は(B)の一部拡大、各タイムポイントごとの画像
左から培地置換直後、3時間、6時間後(スケールバーは50µm)
オートファジー誘導のタイムラプス動画 : Play


Autophagy analysis result

図2 オートファジーの解析結果
(A)コントロールと(B)オートファジー誘導、(C)オートファジー阻害の解析前画像(培地置換6時間後)
(D)(E)(F)はそれぞれ(A)(B)(C)の解析後の画像、水色は認識した細胞の中心部分を示した点、赤はオートファジーの顆粒の認識領域
(G)(H)は細胞一個当たりに存在する顆粒の数と平均面積の時間変化(単位:µm2) 。エラーバーは標準誤差(n=3)
(青:コントロール、赤:オートファジー誘導、緑:オートファジー阻害)
オートファジーを誘導したサンプルでのみ時間とともに顆粒数および顆粒の面積が増加していることが認められた

結果と考察

CQ1とDALGreen-Autophagy detectionを使用することで、生細胞を用いてオートファジーの検出が簡便に実施可能であることが示されました。アミノ酸不含の培地ではオートファジーが誘導され、Bafilomycinを加えることによりオートファジーの阻害が起こることが認められました。CQ1はステージヒーターにより温度と湿度を、ガス混合器との組み合わせによりCO2、O2濃度を制御できるため、培養環境を維持したままオートファジー顆粒の継時変化を捉えることができます。解析ソフトウェアCellPathfinderでは、細かい顆粒も高い定量性と再現性で自動で解析することができるほか、明視野画像からDPC画像を作成することで、非染色で細胞を認識できるラベルフリー解析が可能です。

*1 参考文献: Iwashita et al., Small fluorescent molecules for monitoring autophagic flux, FEBS Lett,2018,592(4),559.

*2 CE Bright Field images
Contrast-enhanced Bright Field (CE Bright Field) Digital Phase Contrast。明視野画像から画像処理によって細胞の肥厚部分を強調した画像(Fluorタイプ)、細胞の輪郭や細部を強調した画像(Phaseタイプ)を作成する。非染色での細胞認識に適している。

CE Bright Field images


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