YOKOGAWAの役割
求められた品質特性を満たす紙の効率的な生産と環境負荷の低減を支援
紙はいろいろな場面で使用され、求められる種類や特徴、品質などはさまざまです。パルプの原料には、木材、植物などの非木材、古紙などがありますが、品質はそれぞれに異なり、同じ原料でも品質にばらつきがあります。
YOKOGAWAは、製造した紙の最終品質を生産ライン上で測定し制御する品質管理システム(QCS:Quality Control System)を提供しています。このシステムは、日本ではBM計(Basis Weight and Moisture Sensor)と呼ばれ、紙の生産には不可欠な設備です。製造工程の管理ポイントを的確に捉え、製造部門間を連携させて、プラント全体を最適化させることにより、生産コストを削減しながらも安定した操業と生産効率の改善に貢献しています。また、環境負荷を低減するため、製造工程で発生する廃棄物の回収や再利用の取り組みも支援しています。
紙ができるまで
紙パルプ製造プラントでは、国内外から運ばれてきた木材チップや古紙を高温、高圧で溶かしてパルプ繊維を取り出し、 抄紙 工程でローラーを使って平らにして紙を製造しています。それぞれの工程には、計測機器や制御システムが取り付けられており、中でも特徴的なのがBM計です。紙の重量、水分量、厚さなどを計測し、基準値内に収まっていない場合には、制御システムで機械の動きを修正し、求められた品質特性の紙に仕上げて出荷します。
紙パルプ製造プラントにおける計測と制御
パルプ工程
化学薬品を使用して木材チップからパルプを作る場合、木材チップに含まれるセルロースと呼ばれる繊維を取り出します。セルロースは、細胞同士を接着させるリグニンによって強固に結びついているため、浸透タワーで木材チップを蒸解しやすくするための白液という薬剤に浸します。その後、高温・高圧の蒸解釜でリグニンを溶かすことで、セルロースを抽出します。そして、洗浄、脱水、不要成分の除去(さらし)、漂白などを行い、パルプが生成されます。また、古紙からパルプを作る場合、古紙を溶解し、インクやちりなどの異物を除去した後に漂白し、再度パルプ化します。
パルプ工程では、流量計、レベル計、圧力計、pH計、温度センサなどが計測したさまざまなデータを元に、設備が制御されています。中でも、パルプの原料である木材チップの取り扱い工程では常に火災のリスクがあり、注意が必要です。チップヤードでは監視カメラやサーモカメラで常時監視し、ベルトコンベアでは温度センサが温度の上昇を検知しています。現場の状況を把握し、適切な対応が取れるように、YOKOGAWAの監視システムが導入されています。
調成工程
生成されたパルプは、調成工程に送られます。リファイナーの中で、パルプの繊維を機械でたたき押し潰す 叩解 と呼ばれる作業を行い、製造する紙の種類に応じて叩解の度合いを調節して紙の強度を高めていきます。その後、求められている紙の品質や機能に合った薬品を配合し、原料タンクに投入します。YOKOGAWAのシステムが原料や薬品の配合比率、添加量、配合状態などを制御します。
抄紙工程
機械で原料のパルプをすいていくのが抄紙工程です。網(ワイヤー)の上にパルプが均一になるように広げて薄いシート状にします。布で挟み、ローラーで圧力をかけて脱水します。熱した金属の円筒にシート状の紙を密着させて乾燥させた後、ローラーを使ってリールに巻き、紙が出来上がります。
この工程では、温度計や圧力計などのYOKOGAWAの計測機器や、紙の重量、水分量、厚さなどを計測するBM計が設置されています。紙の品質をオンラインで正確に計測し、基準値の許容範囲内に収まっていない場合は、制御システムに情報を送り、機械の動きを修正します。均一な品質の紙を製造するため、BM計が、抄紙工程全体を監視、管理しています。
塗工工程
出来上がった紙の表面に塗料を塗り、紙の表面を加工するのが塗工工程です。塗工工程でもBM計が使われています。光沢を出すため、塗料に薬剤を添加します。製造する紙の種類によって異なる薬剤や配合で塗工し、熱風や赤外線などで乾燥させた後、仕上げ工程に進みます。
仕上げ工程
完成した紙を巻き取った後、BM計の測定結果などから出来上がったロール内の不良部分を特定し、取り除きながらロールに巻き直します。そして、必要な形に裁断します。YOKOGAWAの小型コントローラが、これらの作業を高速制御しています。
搬送、倉庫管理
完成した製品は倉庫に搬送され、保管、出荷されます。
紙パルプ製造プラントにおける環境への取り組み
紙パルプ製造プラントでは、大量の水とエネルギーを消費します。環境負荷の低減と資源循環への取り組みが積極的に行われており、YOKOGAWAの制御システムがこれらを支えています。
回収工程
木くずや紙くず、プラスチックなどの廃棄物に加えて、蒸解釜で繊維(セルロース)を取り出す時に黒液と呼ばれる廃液も発生します。水分を蒸発させて濃縮した黒液をバイオマス燃料として焼却し、回収ボイラーで蒸気を発生させます。蒸気は抄紙工程などで利用したり、タービンを回して発電させたりします。
また、回収ボイラーの燃焼後に残った物質(残渣)は生石灰と反応させて白液として再生します。再生した白液は浸透タワーで再利用されます。
YOKOGAWAの制御システムは、回収ボイラーの最適運転、コスト削減、電力の流れと工場内電力の需給監視、製造工程で発生する有害物質の管理記録などを行っています。
排水処理工程
繊維、ごみ、化学物質などが含まれた排水はクラリファイヤーに集められ、高度な技術で適切に処理された後、再利用されます。排水処理時に発生する汚泥は焼却され、セメントの原料、土木資材などに有効利用されます。YOKOGAWAのシステムが、排水量の制御や水質を中和する薬品添加の制御などを行っています。
関連業種
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紙パルプ
YOKOGAWAは、紙パルプ業界のお客様に「紙パルプDXソリューション」による革新的なものづくりの実践を展開し、 新たなものづくりの革新と持続的な成長に貢献します。







