共焦点スキャナユニット CSU-W1

イノベーションが新たなイメージングを切り開く
CSUシリーズの特長を引継ぎつつ光学系を一新し、さらに特性・機能をアップしました。

  • 広視野(Wide)・高画質(Clear)を実現
  • 785nm励起の近赤外光まで対応するNIRポートを用意
  • 1カメラモデル、2カメラモデル、分割視野モデルの3基本構成を用意
  • 明視野光路を標準で装備
  • ピンホール径50µmと25µmのニポウディスクを用意
  • 光刺激等を可能にする外部光ポートを用意
  • 10穴フィルタホイール(1カメラモデル・2カメラモデル)を内蔵
  • 切換機構をすべてを電動化し、実験の自動化に対応

Wide

ニポウディスクを大径化することで視野サイズが4倍に。
最新の広視野高感度カメラの視野を十分に活かし、高精細な観察ができます。

広視野マイクロレンズ付ニポウディスク

 


Clear

ピンホール間隔を広くすることでピンホールクロストークを大幅に低減、フレアの少ないクリアな画質が得られます。従来見え難かった厚いサンプルをより深部まで観察することができます。

XZ Slice XZ Slice:従来モデル
XY MIP:CSU-W1

XY MIP XY MIP:従来モデル
XY MIP:従来モデル

XZ Slice:CSU-W1
XZ Slice:CSU-W1

XY MIP:CSU-W1
XZ Slice:従来モデル

ES細胞コロニー
蛍光色素:H2B-EGFP(励起波長:488nm)、mCherry-MBD-NLS(励起波長:561nm)
対物レンズ: 60xシリコン ピンホール:50µm Zスライス:100µm(0.4µm/251枚)
画像ご提供:大阪大学 微生物病研究所 山縣一夫先生

 

ピンホール間隔を2倍にし, 迷光をカット

ピンホール間隔を2倍にし, 迷光をカット

 

Flexible

観察方法・サンプルに合わせた構成に自由に組み合わせできます。

ハイコンフォーカリティ・ピンホール(構成オプション)

従来の50umピンホールに加え、高いコンフォーカリティを得られる25umピンホールディスクユニットをラインナップ。どちらか一方、あるいは両方を選択いただけます。電動切り替えにより、実験に合わせて容易にピンホールを切り替えられます。

構成オプション

新明視野光路(標準装備)
光路からディスクが退避する新機構により、共焦点画像と明視野画像の重ね合わせが従来機種より容易になりました。明視野観察や位相差観察などに標準で対応します。

2波長同時観察機構(T2、T3 モデル)
従来機CSU-X1の2波長同時観察機構を更に発展させ、2カメラによる同時観察に加えて1カメラでの分割視野による同時観察にも対応しました。広視野化により分割視野の場合でも従来に比べほぼ2倍の視野を確保しています。さらに、2カメラ・分割視野のいずれにおいても、蛍光分離用のダイクロイックミラーを複数搭載できるため、G/R、C/Yなど、いろいろな2波長同時観察に柔軟に対応*1します。

*1 対応する励起光源が別途必要です。

基本構成

CSU-W1は、3つの基本構成、2種類のピンホール径、明視野光路の標準搭載、近赤外光対応、フォトブリーチングに活用する外部光ポートなどを用意、さまざまな観察手法に対応できます。また、すべての切り替え動作を電動化し、実験の自動化に対応します。

基本構成

フィルタホイールを切り替えシーケンシャルに多波長観察する1カメラモデル、ダイクロイックミラーで蛍光を分離し2波長同時観察できる2カメラモデル、視野を2分割し1カメラで2波長同時観察もできるスプリットビューモデルの3つの基本構成を設けました。将来的なアップグレードにも対応可能です。

基本構成

フィルタ構成例

フィルタ

オプション

SoRaディスク

スピニングディスク共焦点をベースにした超解像技術で、光学的分解能が約1.4倍向上します。さらにデコンボリューションを行うことで、最終的に光学限界の約2倍の分解能を実現します。
CSU-W1からのアップグレード:CSU-W1 SoRa

NIRポート

785nm まで励起光帯域を拡張し、低侵襲で深部観察を可能にするNIR ポートを用意しました。標準の可視光ポートと同時に専用ファイバで 導入し、内部で可視光とビームコンバインして可視光との同時励起も可能です。

外部光ポート

外部からディスクを通さず顕微鏡に光を導入する光路です。フォトアクティベーション装置等を接続し、光刺激等にご活用いただけます。

結像倍率切り替え

各種変倍レンズの中から最大で2個を切り替えてご使用になれます。

可変アパチャー

CSU-W1の視野サイズを変更できる機構です。必要部分以外への励起光照射を防ぐことで、サンプルへのダメージを抑えることができます。

オプション適応表

オプション 1カメラモデル 2カメラモデル スプリットビューモデル
NIRポート
可視光ポート
可変アパチャー -
カメラポートレンズ 0.83x、1xから選択 0.83x、1x から選択(1カメラ)
0.83x、1x から選択(2カメラ)
0.83x、1xから選択
レンズ切替機構追加レンズ 0.83x、1x、2xから選択 -

システム構成

2カメラモデル、1カメラモデル

2カメラモデル、1カメラモデル

 

スプリットビューモデル

スプリットビューモデル
*1 2カメラモデル対応オプション
*2 2カメラモデル、スプリットビューモデル対応オプション
*3 1カメラモデル、2カメラモデル対応オプション

 

寸法図

寸法図

 

各社顕微鏡取付例

Zeiss Axio Observer
Zeiss Axio Observer

Nikon ECLIPSE Ti
Nikon ECLIPSE Ti

Olympus IX83
Olympus IX83

Leica DMi8
Leica DMi8

製品仕様

製品仕様
モデル 1カメラモデル(T1) 2カメラモデル(T2) スプリットビューモデル(T3)
共焦点走査方式 マイクロレンズ付きニポウディスク方式
ディスク回転数 1,500rpm~4,000rpm  最大200fps
ディスクユニット 50umピンホール、25umピンホールから最大2個選択(電動切り替え)
外部同期 パルス信号による走査速度同期 
入力/出力:TTL 300Hz~800Hz
明視野観察 ディスクユニット移動による共焦点観察との電動切り替え
有効視野 17×16mm
 【オプション】
可変アパチャーにより調整可能
17×16mm
励起波長 405nm~785nm
レーザ光導入 専用ファイバ*1、整形光学系 可視光ポート (405~647nm)
【オプション】NIRポート (685~785nm)
観察蛍光波長 420nm~850nm
DM切り替え 電動3ch(ダイクロイックミラーブロック交換可能)
EMフィルタホイール 10穴フィルタホイール
フィルタサイズφ25mm
隣接切り替え
100msec以下(標準モード)
40msec以下(高速モード)
6穴フィルタホイール
隣接切り替え
100msec以下
外部制御 RS232C接続 
共焦点スキャナユニットCSU-X1と主要コマンド互換
顕微鏡取付用マウント 各社用専用アダプタ
カメラアダプタ Cマウント 結像倍率1倍 (倍率可変:0.83x)
外部光導入 【オプション】フォトブリーチ等
動作環境 15~30℃、20~75%RH 結露なきこと
消費電力 入力:100~240VAC±10%、50または60Hz、250VAmax
外形寸法 本体 327.1(W)x 251.5(D)x 475.1(H)mm 471.6(W)x 251.5(D)x 475.1(H)mm 420.8(W)x 251.5(D)x 373.6(H)mm
電源
ボックス
225.4(W)x 151.9 (D)x 378.3(H)mm
質量 本体 17kg 20.5kg 18kg
電源
ボックス
4.5kg
対応顕微鏡 Olympus IXシリーズ、Nikon ECLIPSE Ti 、Zeiss Axio Observer、Leica DMIシリーズ*2

*1 CSU-W1 本体と専用ファイバはペアで調整しています。ファイバ交換は販売店にご相談下さい。
*2 顕微鏡の視野数によって制限を受ける場合がありますので、販売店にご相談ください。

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概要:

マウス初期胚のタイムラプスイメージング

マウス初期胚

タイムラプス動画(MIP表示) 再生

撮影条件
Z撮影枚数 100um(1um/101slices)
励起波長 488nm:H2B-EGFP
561nm:mCherry-MBD-NLS
ピンホール 50um
対物レンズ 60x シリコン
撮影時間 48 時間(10分間隔)
 Early stage mouse embryo

タイムラプス(染色体:MIP表示)の一部を抜粋

画像ご提供:大阪大学 微生物病研究所 山縣一夫先生

アプリケーションノート
概要:

共焦点スキャナユニットCSU-W1の論文リストです

アプリケーションノート
概要:

はじめに

ニューロンは巨大回路システムの機能素子です。したがって回路の挙動様式や作動原理を解明するためには、膨大数のニューロンの活動を一斉に、かつ細胞個々の個性を損なうことなくモニターする必要があります。
多ニューロンCa2+ 画像法(functional multineuronal calcium imaging、fMCI) は、ニューロンの細胞体の一過性Ca2+上昇がスパイク出力を反映していることを利用して、光学的にスパイク時空パターンを再構築する手法です。fMCI は数百個のニューロンの活動を同時にモニターできるため、神経ネットワーク研究に有用な知見をもたらす新世代の大規模記録法として注目を集めています。

実験内容

  1. ラット・マウスの海馬・大脳皮質スライス(350-430μm 厚)を準備
  2. 蛍光指示薬をロード(10μM 溶液中37℃で約60 分)  
    Oregon Green 488 BAPTA-AM もしくは Fluo-4AM
  3. 共焦点スキャナユニットCSU で画像取得
    フレーム速度:10~2000fps、対物レンズ:16~20 倍、NA:0.85~1.00

結果

多数(1000 個以上) のニューロンから一斉にCa2+蛍光強度をモニターすることができました。
スパイク活動の時空パターンを大規模に再構築することが可能になりました(fMCI 法)。

fMCI

まとめ

これまで脳波の研究では、CA3 で記憶の固定などが行われるときには、リップル波(ripple) という脳波が出現することがわかっています。fMCIによる観察によって、CA3のニューロンの活動によるリップル波のメカニズム解明が期待されます。
共焦点スキャナユニットCSU-X1を搭載した共焦点顕微鏡システムを使えば、最速2000fps で画像形成できます。

データご提供:東京大学大学院薬学研究科 准教授 池谷 裕二先生


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概要:

はじめに

気孔とは葉の裏側などに多く存在する間隙であり、植物と大気環境との接点としてガス交換や水分調節を担う重要な器官です。気孔の開閉は光や湿度などの周囲の環境変化に応じて厳密に制御されており、これは気孔を形成する一対の孔辺細胞の膨圧運動によって実現されています。すなわち、孔辺細胞が膨張すると気孔は開き、逆に収縮すると気孔は閉じます。この気孔開閉運動の機構解明は細胞生物学における中心課題であるばかりでなく、植物の炭酸同化作用を通じた大気環境改善に向けた基礎研究と位置づけられます。
本研究では、気孔開閉における孔辺細胞の細胞内構造・オルガネラの動態を明らかにすることを目的に、ライブイメージング法により立体画像(XYZN) および経時画像(XYT)の取得と解析を行いました。

実験内容

  1. 各種の細胞内構造・オルガネラを蛍光タンパク質によって可視化した播種後5~7 週目のシロイヌナズナ形質転換体から成熟ロゼット葉を採取
  2. 葉の裏側の表皮を剥離し、basal buffer に浮かべてプレパラートを作製
  3. 共焦点ユニットCSU による顕微鏡システムを用いて画像取得

     
    システム 共焦点ユニット CSU10
    レーザ 488nm 半導体レーザ (HPU-50101-PFS2, 古河電工)
    561nm半導体励起固体レーザ (85-YCA-025-040,CVI Melles Griot)
    顕微鏡 IX70(オリンパス)
    カメラ CoolSNAP HQ (PhotoMetrics)
    対物レンズ UplanApo 100x/1.35 oil (オリンパス)
    ソフト Metamorph 7.0 (Molecular Devices)
    撮影条件 露光時間:0.5-1.0 sec (1090x762 pixels)
    3Dデータ取得条件:10-20画像/1立体 (0.5μmステップ)

     

結果

15種の細胞内構造・オルガネラについて孔辺細胞の立体構造を複数(50~500 細胞対)撮像しました(図A)。本研究で取得した立体画像は東京大学大学院・馳澤研究室の顕微鏡画像データベースとして公開予定です。また、気孔開閉に応じてアクチン繊維の配向と束化状態が変化することを見出しました(図B)。さらに、アクチン繊維を経時的に観察した結果、1~2秒のうちに配向をおよそ60度も変化させるダイナミックな動きを捉えることが出来ました(図C)。

Interface of Plants & Atmospheric Environment

(A)孔辺細胞における細胞内構造・オルガネラの網羅的ライブイメージングの一例
  細胞表層から細胞中央部までを捉えた連続光学切片の最大輝度投影像を示す
   a: アクチン繊維(GFP-ABD2)、 b: 微小管(GFP-tubβ)、 c: 液胞膜(GFP-AtVAM3)、 d: 細胞核(HistoneH2B-tdTomato)、
   e: 小胞体(GFP-ER)、 f: ゴルジ体(ERD2-GFP)、 g: エンドソーム(ARA6-GFP)、 h: ミトコンドリア(mt-GFP)
(B)気孔開閉時のアクチン繊維の立体構造
(C)孔辺細胞におけるアクチン繊維の動態観察
(D)お使いのCSUシステム

まとめ

本研究により、孔辺細胞における細胞内構造・オルガネラの動態を記録することができました。また、アクチン繊維の高次構造変化が気孔開閉運動に重要な役割を果たすことが示唆されました。
近年、画像解析技術の発達によって生物の多次元的な情報を効率的に捉えられるようになり、大規模な顕微鏡画像取得の必要性はますます高まっています。CSU を利用した本システムは、スループットの高い画像取得法のひとつとして有用と考えられます。

データご提供:データご提供:東京大学大学院新領域創成科学研究科、BIRD JST 桧垣匠先生、馳澤盛一郎先生
参考文献:Higaki T, Sano T, Hasezawa S, Actin microfilament dynamics and actin side-binding proteins in plants. 2007, Curr Opin Plant Biol 10:549-556.


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概要:

はじめに

受精・初期胚発生過程では、様々な現象が時空間的に制御され、かつそれらの多くが「個体発生」という最終目標に向かって原因と結果という関係で結ばれています。その作用機序を解析する上で、細胞の固定や破壊を必要とする従来の実験手法では限界がありました。この問題を解決するには、一連の過程を経時的に観察でき、かつ観察後も引き続き個体まで発生させることが必要です。そこで、個体発生にダメージを与えない初期胚長時間多次元ライブセルイメージング技術の確立を目指しました。

Experimental flow
Movie example

図1 初期胚長時間多次元ライブセルイメージング技術は胚の個体発生に影響しない
(a)実験の流れ
(b)ムービーの代表的な例
ここでは紡錘体を緑に(EGFP-α-tubulin) 核を赤に(H2B-mRFP1) にラベルしてある
写真はZ 軸方向に51 枚ある画像を最大輝度合成によって1 枚の画像に変換し、7.5 分おきに撮影したものから2 時間間隔で抜粋
(c)約6万枚近くの蛍光画像を取得した胚を移植して生まれた仔とその仮親

実験内容

マウス受精卵にEGFP-α-tubulin およびHistone H2B-mRFP1 のmRNA をマイクロインジェクションし、3 時間インキュベーションした後にCSU10 を付加した顕微鏡システム(図2) にセットしました。着床前初期胚発生過程について約70 時間に及ぶ長時間の3次元イメージング(詳細な撮影条件は表参照)の後、胚盤胞期胚を仮親の子宮に移植しました(図1a)。

 

CSU System
No. Devices Manufacturer Model
1 Inverted fluorescence microscope Olympus IX71
2 Nipkow disk confocal unit Yokogawa CSU10
3 EM-CCD camera Andor iXON DV887-BV
4 Z motor Ludl Mac5000
5 XY auto stage Sigma Koki XY30100T
6 CO2 incubator Tokai hit MI-IBC
7 Filter wheel Ludl Mac5000
8 Software Molecular Devices MetaMorph

図2 本実験で用いた初期胚多次元イメージング用顕微鏡システム
倒立顕微鏡にCSU10 およびEM-CCD カメラをアドオンしてあり、自動XY ステージ、Z 軸モータの制御により、多点かつ立体観察が可能です
ステージ上のCO2インキュベータで培養しながら観察します

CSU システムでの撮影条件
Total time 70 hours
Interval 7.5 min/stack
Z-axis slices 51 sections (at 2μm intervals)
Channel 3(DIC, EGFP, mRFP1)
Position 6(Total 72 embryos)
Laser power(Measured at objective lens) 488nm (0.281 mW), 561nm (0.225 mW)

結果

受精直後から胚盤胞期までの長時間イメージングに成功しました(図1b)。イメージング後の胚(計6万枚近くの蛍光画像を取得) を移植した結果、正常に産仔が得られました(図1c)。得られた産仔は健康に育ち、生殖能力を有していました。以上から、本初期胚イメージング技術は個体発生にダメージを与えないことが明らかとなりました。

まとめ

CSU を用いることで、細胞に対して極めて低毒性の長時間多次元イメージング技術を確立することができました。これは、サンプルに当たる励起光が極端に弱いというCSUの特徴によるものと考えられます。この技術革新により、ライブセルイメージングにより細胞をただ「見る」だけだった時代から、イメージング後にさらにその細胞を別の解析法に 「活用する」時代に移ったのではないでしょうか。今後はイメージングをもとに遡及的・予後予測的に細胞現象の原因と結果を関連付ける研究がさかんになると考えられます。

データご提供:理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 若山照彦研究室 研究員 山縣一夫先生
参考文献:Yamagata, K., Suetsugu, R. and Wakayama, T. Long-term, Six-dimensional Live-cell Imaging for the Mouse
     Preimplantation Embryo That Does Not Affect Full-term Development. J. Reprod. Dev. In press 2009; 55: 328-331
     顕微鏡活用なるほどQ&A 羊土社 宮戸健二、岡部勝 編集


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ミトコンドリアの超解像リアルタイムライブセルイメージング

画像ご提供:産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 加藤薫先生


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概要:

「生組織イメージング」でみる肥満脂肪組織リモデリング

 脂肪組織は長年「何もしない臓器」と考えられてきました。しかし、近年のライフスタイルの変化( 食生活の欧米化) に伴う肥満・メタボリックシンドロームの蔓延により、脂肪組織は様々な病気を引き起こす「活発な代謝臓器」として一躍、注目を浴びるようになりました。メタボリックシンドロームの病態解明を目指し、肥満に伴う脂肪組織の再構築( リモデリング) と機能異常に注目してイメージング手法を用いた検討が行われています。
 従来の切片標本を用いた観察では、脂肪組織における血管や組織間質に存在する細胞群の三次元的構造の詳細は不明であり、生体内の動態も明らかではありませんでした(図1a)。
そこで脂肪組織をよりよくみるために、スピニングディスク共焦点顕微鏡を用いて、生きたままの組織をそのまま染色する「生組織イメージング手法」を実施しました。

Images of the remodeling of adipose tissue in live animals

図1 生組織イメージング手法でみる脂肪組織
a:従来の脂肪組織切片標本、正常動物(db/+ マウス) 血管構築など詳細な構造は不明です
b、c: 新たに開発した生組織イメージング手法によりとらえた、8週齢痩せ型マウス(db/+) の白色脂肪組織像
 青: 脂肪細胞、赤: 血管内皮、緑: 核
 詳細な組織構築が三次元的に明瞭に描出されています
d:8週齢の肥満動物(db/db) 脂肪組織
 肥大した脂肪細胞とともに小型脂肪細胞分化と血管新生( 矢印) を認めます

実験内容

1.麻酔下のマウスに蛍光色素を静脈全身投与
2.組織をマウスより取り出し、未固定のまま細かく切り出す
3.蛍光色素の入った培養液中でインキュベートし、生きたまま蛍光標識
4.脂肪細胞は蛍光標識された脂肪酸で、血管内皮は蛍光標識レクチンで、核はヘキストで染色
5.共焦点レーザ顕微鏡により観察

結果

 本手法を用いて、肥満に伴う脂肪組織リモデリングの詳細が明らかになりました(図1b-d)。 肥満の形成には血管新生が必須であり、脂肪細胞分化は免疫細胞(マクロファージ)・血管 内皮細胞との相互作用の元で生ずる事がイメージングにより示されました。
 これらの組織構築・細胞連関は、厚みのある脂肪組織をそのまま三次元的に画像取得 することで初めて可視化されます。

まとめ

 これらのイメージング手法を用い、立体的な微細構造を生体内で明瞭に描出するとともに、 組織・細胞の機能・動態を直接観察することができます。
 本手法により、肥満に伴う脂肪細胞の再構築( リモデリング) と機能異常が可視化されました。

 

「生体内分子イメージング」でみる肥満脂肪組織と慢性炎症

 心筋梗塞や脳血管疾患などの動脈硬化性疾患のリスク要因として、内臓肥満とインスリン 抵抗性を基礎とするメタボリックシンドロームが注目されています。
 近年、メタボリックシンドロームは内臓肥満が引き起こすことが明らかになりました。 内臓肥満は慢性炎症に伴い脂肪組織の再構築(リモデリング) をもたらします。リモデリング した脂肪細胞は、組織機能異常から全身のインスリン抵抗性をもたらし動脈硬化病変を 進展させ新血管イベントを引き起こすと考えられます。
 従来、様々な病態に対する実験的アプローチとして、細胞レベル(in vitro)・個体レベル (in vivo) それぞれが独立した実験系により評価されてきました。この両者を結びつけるため には、「個体で細胞をみる」ことが非常に重要であると考えられます。
 「生体内分子イメージング手法」により全身臓器の微小循環、細胞動態が可視化されます。 動脈硬化のように血管が主な傷害の場になる病態だけでなく、腫瘍やメタボリック シンドロームにおいても、細胞動態・血流・血管機能といった生体内のダイナミックな 変化をとらえることは非常に有用であり、組織学的変化に先行する肥満に伴う初期の炎症 性変化を捉える事が可能となります(図2)。

Images of the remodeling of adipose tissue in live animals

図2 共焦点顕微鏡を用いたマルチカラー生体内分子イメージング
a: 正常動物(ob/+ マウス) 脂肪組織中毛細血管での血流イメージ
 血管内を変形して流れる血球( 赤色は血小板) が明瞭に描出されている
 緑:FITC デキストラン、赤:抗CD41 抗体    
b: 正常動物(ob/+ マウス) 及びc: 肥満動物(ob/ob マウス) 脂肪組織における細静脈の血流イメージ
 FITC デキストランにより可視化
 肥満脂肪組織では、血管壁への白血球・血小板の付着を認める( 図c 中矢印)
d: 肥満動物(ob/ob マウス) における白血球のrolling
 アクリジンオレンジにより可視化

Images of the remodeling of adipose tissue in live animals

図3 各種臓器への生体内分子イメージングの応用例(a: 骨格筋、 b: 肝臓、 c、d: 腎・糸球体の血流イメージ)

実験内容

1.麻酔下のマウスに蛍光色素を静脈全身投与し、観察部位を切開・露出
2.観察部位を生理食塩水により湿に蛍光色素を静脈全身投与し、観察部位を切開・露出
3.観察部位を生理食塩水により湿潤した後観察窓を設け、マウスを倒立顕微鏡上の チャンバーにおいて蛍光観察
4.共焦点レーザ顕微鏡により観察
   生体内の高速で起きる事象を捉えるには高速な画像取得は必須ですが、共焦点スキャナユニットCSU とEMCCD カメラを用いたシステムでは最小1ピクセル80nm、最短1フレーム1msec の高時間・空間解像度を達成しており、二波長励起二波長観測による同時マルチカラー撮影も可能です。

結果

 本手法を用いて、肥満脂肪組織における微小循環を検討したところ、血管壁への白血球・ 血小板のrolling・adhesion が増加していました。肥満脂肪組織中では血流が間歇的に 低下し、低酸素も認められ、血管内皮・白血球・血小板の相互の活性化が肥満に伴う 炎症を脂肪組織微小循環内で増幅していると考えらました。

まとめ

 これらのイメージング手法を用い、立体的な微細構造を生体内で明瞭に描出するとともに、 組織・細胞の機能・動態を直接観察することができます。
 本手法により、肥満に伴う脂肪細胞の再構築( リモデリング) と機能異常が可視化されました。

データご提供:東京大学循環器内科・TSBMI、JST さきがけ 西村 智先生
参考文献:
・生体外、組織イメージング  1) Nishimura S, Manabe I, Nagasaki M, et al. Adipogenesis in obesity requires close interplay between differentiating adipocytes, stromal cells and blood vessels Diabetes 2007,56:1517-1526.
・生体イメージング  2) Nishimura S,Manabe I, Nagasaki M, et al. In vivo imaging im mice reveals local cell dynamics and inflammation n obese adipose tissue J Clin Invest. 2008, 118(2): 710-721.


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