生体内分子イメージングで挑む メタボリックシンドロームの病態解明

「生組織イメージング」でみる肥満脂肪組織リモデリング

 脂肪組織は長年「何もしない臓器」と考えられてきました。しかし、近年のライフスタイルの変化( 食生活の欧米化) に伴う肥満・メタボリックシンドロームの蔓延により、脂肪組織は様々な病気を引き起こす「活発な代謝臓器」として一躍、注目を浴びるようになりました。メタボリックシンドロームの病態解明を目指し、肥満に伴う脂肪組織の再構築( リモデリング) と機能異常に注目してイメージング手法を用いた検討が行われています。
 従来の切片標本を用いた観察では、脂肪組織における血管や組織間質に存在する細胞群の三次元的構造の詳細は不明であり、生体内の動態も明らかではありませんでした(図1a)。
そこで脂肪組織をよりよくみるために、スピニングディスク共焦点顕微鏡を用いて、生きたままの組織をそのまま染色する「生組織イメージング手法」を実施しました。

Images of the remodeling of adipose tissue in live animals

図1 生組織イメージング手法でみる脂肪組織
a:従来の脂肪組織切片標本、正常動物(db/+ マウス) 血管構築など詳細な構造は不明です
b、c: 新たに開発した生組織イメージング手法によりとらえた、8週齢痩せ型マウス(db/+) の白色脂肪組織像
 青: 脂肪細胞、赤: 血管内皮、緑: 核
 詳細な組織構築が三次元的に明瞭に描出されています
d:8週齢の肥満動物(db/db) 脂肪組織
 肥大した脂肪細胞とともに小型脂肪細胞分化と血管新生( 矢印) を認めます

実験内容

1.麻酔下のマウスに蛍光色素を静脈全身投与
2.組織をマウスより取り出し、未固定のまま細かく切り出す
3.蛍光色素の入った培養液中でインキュベートし、生きたまま蛍光標識
4.脂肪細胞は蛍光標識された脂肪酸で、血管内皮は蛍光標識レクチンで、核はヘキストで染色
5.共焦点レーザ顕微鏡により観察

結果

 本手法を用いて、肥満に伴う脂肪組織リモデリングの詳細が明らかになりました(図1b-d)。 肥満の形成には血管新生が必須であり、脂肪細胞分化は免疫細胞(マクロファージ)・血管 内皮細胞との相互作用の元で生ずる事がイメージングにより示されました。
 これらの組織構築・細胞連関は、厚みのある脂肪組織をそのまま三次元的に画像取得 することで初めて可視化されます。

まとめ

 これらのイメージング手法を用い、立体的な微細構造を生体内で明瞭に描出するとともに、 組織・細胞の機能・動態を直接観察することができます。
 本手法により、肥満に伴う脂肪細胞の再構築( リモデリング) と機能異常が可視化されました。

 

「生体内分子イメージング」でみる肥満脂肪組織と慢性炎症

 心筋梗塞や脳血管疾患などの動脈硬化性疾患のリスク要因として、内臓肥満とインスリン 抵抗性を基礎とするメタボリックシンドロームが注目されています。
 近年、メタボリックシンドロームは内臓肥満が引き起こすことが明らかになりました。 内臓肥満は慢性炎症に伴い脂肪組織の再構築(リモデリング) をもたらします。リモデリング した脂肪細胞は、組織機能異常から全身のインスリン抵抗性をもたらし動脈硬化病変を 進展させ新血管イベントを引き起こすと考えられます。
 従来、様々な病態に対する実験的アプローチとして、細胞レベル(in vitro)・個体レベル (in vivo) それぞれが独立した実験系により評価されてきました。この両者を結びつけるため には、「個体で細胞をみる」ことが非常に重要であると考えられます。
 「生体内分子イメージング手法」により全身臓器の微小循環、細胞動態が可視化されます。 動脈硬化のように血管が主な傷害の場になる病態だけでなく、腫瘍やメタボリック シンドロームにおいても、細胞動態・血流・血管機能といった生体内のダイナミックな 変化をとらえることは非常に有用であり、組織学的変化に先行する肥満に伴う初期の炎症 性変化を捉える事が可能となります(図2)。

Images of the remodeling of adipose tissue in live animals

図2 共焦点顕微鏡を用いたマルチカラー生体内分子イメージング
a: 正常動物(ob/+ マウス) 脂肪組織中毛細血管での血流イメージ
 血管内を変形して流れる血球( 赤色は血小板) が明瞭に描出されている
 緑:FITC デキストラン、赤:抗CD41 抗体    
b: 正常動物(ob/+ マウス) 及びc: 肥満動物(ob/ob マウス) 脂肪組織における細静脈の血流イメージ
 FITC デキストランにより可視化
 肥満脂肪組織では、血管壁への白血球・血小板の付着を認める( 図c 中矢印)
d: 肥満動物(ob/ob マウス) における白血球のrolling
 アクリジンオレンジにより可視化

Images of the remodeling of adipose tissue in live animals

図3 各種臓器への生体内分子イメージングの応用例(a: 骨格筋、 b: 肝臓、 c、d: 腎・糸球体の血流イメージ)

実験内容

1.麻酔下のマウスに蛍光色素を静脈全身投与し、観察部位を切開・露出
2.観察部位を生理食塩水により湿に蛍光色素を静脈全身投与し、観察部位を切開・露出
3.観察部位を生理食塩水により湿潤した後観察窓を設け、マウスを倒立顕微鏡上の チャンバーにおいて蛍光観察
4.共焦点レーザ顕微鏡により観察
   生体内の高速で起きる事象を捉えるには高速な画像取得は必須ですが、共焦点スキャナユニットCSU とEMCCD カメラを用いたシステムでは最小1ピクセル80nm、最短1フレーム1msec の高時間・空間解像度を達成しており、二波長励起二波長観測による同時マルチカラー撮影も可能です。

結果

 本手法を用いて、肥満脂肪組織における微小循環を検討したところ、血管壁への白血球・ 血小板のrolling・adhesion が増加していました。肥満脂肪組織中では血流が間歇的に 低下し、低酸素も認められ、血管内皮・白血球・血小板の相互の活性化が肥満に伴う 炎症を脂肪組織微小循環内で増幅していると考えらました。

まとめ

 これらのイメージング手法を用い、立体的な微細構造を生体内で明瞭に描出するとともに、 組織・細胞の機能・動態を直接観察することができます。
 本手法により、肥満に伴う脂肪細胞の再構築( リモデリング) と機能異常が可視化されました。

データご提供:東京大学循環器内科・TSBMI、JST さきがけ 西村 智先生
参考文献:
・生体外、組織イメージング  1) Nishimura S, Manabe I, Nagasaki M, et al. Adipogenesis in obesity requires close interplay between differentiating adipocytes, stromal cells and blood vessels Diabetes 2007,56:1517-1526.
・生体イメージング  2) Nishimura S,Manabe I, Nagasaki M, et al. In vivo imaging im mice reveals local cell dynamics and inflammation n obese adipose tissue J Clin Invest. 2008, 118(2): 710-721.


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