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世界で再評価される日本型リーダーシップ

世界で再評価される日本型リーダーシップ

(1)からの続き

日本企業のリーダーシップモデルに注目

第25回GPP講演&ワークショップ開催レポート(全3回)。第2弾となる今回は、GPP共同発起人である早稲田大学ビジネススクールの池上重輔教授(大学院経営管理研究科 研究科長)の基調講演をお届けする。

まず池上教授は、最新刊の自著『ジャパン・ウェイ(原題:Resolute Japan)』の内容について触れた。

著書お呼び資料

「私たちの研究は、失われた30年が回復に転じ始めた2019年頃から始めました。共著者のハビール・シン教授とマイケル・ユシーム教授は、ビジネススクールランキング世界1位であるペンシルベニア大学ウォートン校のスーパースターで、それぞれが戦略・国際経営とリーダーシップ分野での世界的権威です」

3名は、日本企業の中でも近年目覚ましい復活を遂げた企業群を研究し、世界中の企業が学べるように形式知化しようと努めた。日立、NTTデータ、アサヒビール、ローソン、ソニーなど、事業の多様化や変革に成功した企業を対象に、復活の本質を探求するためトップリーダー105人にインタビューを実施。YOKOGAWAも、その中の1社である。

そこから見えてきたのが、世界の企業も学ぶ価値のある、日本の新しいリーダーシップモデルだった。池上教授らは、このモデルを「Resolute Japan(毅然とした日本、以下RJ)」と名付けた。このリーダーシップモデルは、以下のような特徴を持つ。

  1.  「内部資源の重視」や「長期的視点」といった日本の伝統的な経営手法と、革新的な経営の融合
  2.  1.を活かしつつ既存事業の深化と新規事業の探索を同時に行う「両利きの経営」による、事業ポートフォリオの変革
  3.  トップ層は、毅然とした決断力、人間力を併せ持つリーダーシップがあり、従業員に対してオープン
  4.  マルチステークホルダーの視点を持ち、株主を含めた社内外のステークホルダーを互いに補完し合うパートナーと捉える
  5.  雇用保障と年功序列から、能力開発を重視するタレントマスタリーの組織管理へと移行

池上教授

池上教授は、次のように説明する。

「世界中の企業が、ステークホルダーのガバナンスについて悩んでいます。一方で、RJ型リーダーシップモデルの企業は、株主を含めたマルチステークホルダー主義をきちんと実施しています。ハッピーな従業員がいることで、良い商品やサービスが生まれ、それによって顧客が満足し、売上と利益が上がる。その結果、さらに株価が持続的に上がるため、株主もハッピーになり、企業として社会貢献を考える余裕が出てくる。そして、ビジネスパートナーや社員にも良い影響が出る。そのような循環が実現されるのです」

世界の企業が、RJ型のリーダーが率いる日本企業から学べること

「毅然とした決断力」と「人間力」を併せ持つ、このようなRJ型のリーダーは、目立たなくとも組織に深く根ざすリーダーシップを発揮し、確かな戦略的思考と持続的な実行力で、変革を牽引している。

YOKOGAWAの前代表取締役社長、奈良 寿(現・取締役会長 代表執行役)も、RJ型モデルのリーダーの1人として池上教授のインタビューを受けた。奈良は当時、若い世代が「社会貢献」や「自分と社会のつながり」を重視する価値観への変化にいち早く気づいており、一人一人の社員エンパワーメント(主体性の強化)に努めていた。しかしながら、企業としての支援がまだ不十分であり、シニア・マネージャー層にも、若者に対する理解不足を感じていた。

そうした中で、玉木から「未来共創イニシアチブ」という新プロジェクトの提案があった。未来志向で共創型の若手リーダー育成という考えに賛同した奈良は、初代オーナーとして後方から支援した。

スライド

その他、RJ型リーダーシップモデルの代表例として、池上教授はソニーの平井一夫元CEOを挙げた。平井氏は、2012年にソニー社長兼CEOに就任。当時のソニーは、巨額赤字を計上して経営危機が囁かれていた。

「ソニーをリカバリーさせた最大の要因は、事業ポートフォリオの大転換です。かつて主力だったエレクトロニクス事業を縮小し、映画・音楽・ゲーム・ネットワークサービスをメイン事業へとシフトさせ、事業ポートフォリオを大きく変革しました。現在は、エンタメやコンテンツの会社として成長しています。また平井さんのリーダーシップは、人間力の高さ。現場の人との距離感が近いのです。
新しい事業を始める際、欧米圏では企業や人を新調しますが、日本は現有資源を活かす傾向があります。既存のものを活用すると同時に、新しい領域を探索するという両利きの経営のため、社員にもその気になってやってもらわなければなりません。そのために時間がかかる。だからこそ、ビジョナリーなリーダーが必要になるのです」

次にRJ型リーダーシップモデルとして、豊田通商を取り上げた。同社はトヨタグループの総合商社で、自動車関連を軸としたグローバル事業を展開している。

「2011年に加留部 淳さんが社長に就任したとき、業績も成長率も絶好調でした。日本でも最も安定した会社であるトヨタとの売上がマジョリティだったのだが、それを逆転させる方針を打ち出した。それはトヨタの未来を懸念したからではなく、トヨタ以外の新しいパートナーも加えなければ、自社の将来的成長が持続できなくなると判断したからです。彼は極めてビジョナリーに、未来を見据えていたのだと思います」

日本には、まだまだ将来有望な産業がある

日本にも「未来に向けて成長する可能性を秘めた産業がある」と、池上教授は言う。

「自動車の生産台数と、2024年の世界経済フォーラム『旅行・観光開発指数』によるランキングは、共に日本が世界のトップクラス(それぞれ第3位)に入っています。自動車産業全体の市場規模が400兆円。旅行産業が1,000兆円で、そのうちインバウンドが現在300兆円くらいです。これが、次の10年で400〜500兆円となり、自動車業界と同規模になるといわれています」

スナップショット

池上教授によれば、日本の観光産業にかけるエネルギーや教育度は、製造業を“100”とした場合に比べて、“5”程度しかない。だからこそ、市場規模が大きい観光産業は、世界的にも競争力と将来性が高い分野であり、日本にとって有望であると言う。

「その他、誰もが知っているキャラクターコンテンツIPにおいては、日本が世界トップ10のうち5つを制覇しています。これらのチャンスを未来志向で考えられるか? ここで、シナリオプラニングと結び付くのです」

(3)に続く

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