
2025年9月12日、早稲田大学で25回目となるGreen Phoenix Project(以下、GPP)講演&ワークショップが開催された。GPPは、2021年にYOKOGAWAと早稲田大学ガバナンス&サステナビリティ研究所(以下、早稲田大学GSRI)の共同プロジェクトとして発足した産官学融合のラーニングコミュニティだ。混迷を深める時代に未来を多角的に描き、業界や立場の垣根を超えた創造性と協働によって、新たな価値を生み出す「共創の場」である。現在、のべ39法人が名を連ねる。
今回は22法人・53名が参加。若手はもとより、イギリスやサウジアラビアなど海外からのオンライン参加もあった。本イベントでの学びや対話の様子を、全3回の連載でお伝えする。
未来について自由に語り合う場、GPP発足の背景

司会進行を務めたのは、「未来共創イニシアチブ」シナリオアンバサダー(※)の大崎昇吾(横河電機 人財総務本部)。まず開会の言葉として、早稲田大学GSRI初代所長であり、本活動の共同発起人である川本裕子氏(現人事院総裁)が挨拶を述べた。
※未来共創イニシアチブで中心的な役割を担うメンバーのことで、各部門より選抜された、20代後半から40代前半のミレニアル世代に当たる若手社員で構成される
「玉木(伸之)さんが4年前にこのプロジェクトを開始されたとき、『シナリオプランニングという手法を活用して、俯瞰力を備えた人財を育てたい』とおっしゃっていて、とても共感しました。会議のメモの取り方から何から、非常に斬新で、毎回すごく楽しかった。特に心に残っているのは、『シナリオプランニングは未来のリハーサル』という言葉です。変化が速く不透明な時代だからこそ、こういう機会は非常に大事だと思います」

続いて、GPP創設時から本活動の推進を強力に支援してきた早稲田大学ビジネススクールの池上重輔教授(大学院経営管理研究科 研究科長)がにこやかに登壇し、GPPの概要を紹介した。
「通常のGPPワークショップでは、経済、技術、地政学、経営トレンドなど、多様な分野を学び、議論します。そして、『参加者の皆さんが所属する会社の肩書にとらわれず、自由な発想で語り、互いに学び合う場』という趣旨で開催しています。そこで運営の原則として、反対意見も受け入れ、建設的に語る『建設的な意見の対立〈Constructive Conflict〉』、TakeだけではなくGiveも大事にする『貢献のマインドセット〈Contribution Mindset〉』、そして発言者を特定しない『チャタムハウスルール〈Chatham House Rule〉』という3つを設けています」

オープンな共創プラットフォーム
次いで、池上教授と共にGPPの共同発起人で、未来共創イニシアチブ プロジェクトリーダーの玉木伸之がマイクを引き継ぎ、本活動の狙いを説明した。
「本活動では、共創的なリーダーやカルチャーを育み、社内外のステークホルダーとの対話を通じて、システムチェンジを促すことを目指しています。秘密裏にやるのではなく、オープンな対話から若手が未来シナリオを作成し、一般に公開するのが特徴です。
しかし、この未来シナリオを作ること自体が目的ではありません。真の狙いは、共創的なリーダーシップとネットワーキングを育むことであり、その手段として、シナリオプランニングを行うという独特の方法を取っています。
毎回、さまざまな業種の企業や組織から、経営者、経営幹部、次世代リーダーに来ていただいています。テーマによって、いろいろな方々が交わり、対話や学びを楽しんでいます」

社内発の未来共創イニシアチブと、多分野の企業が参画するGPP。これら2つをつなげることで、ビジネスのオープンな共創プラットフォームとなっている。
経営幹部や有識者との対話から生まれた「2040年の未来シナリオ」
開会の挨拶後、「2040年の未来シナリオ」の概要を、シナリオアンバサダーの千代田真一(横河電機 マーケティング本部)が発表した。
「YOKOGAWAは主にBtoB領域で、製造業向けのソリューションを提供しています。お客さまの未来を考えるためには、最終顧客である一般消費者・生活者の未来像を描くことも必要だと考え、今回はシナリオプランニングのスコープをBtoBtoCまで広げました」
プロセスの第一段階は、次のような外部環境分析である。
「最初のステップとして、『STEEP』や『ファイブ・フォーシズ』という外部環境分析のフレームワークを使い、長期的に社会に影響を与える重要なマクロ変化要因をひたすら列挙していきます。その後、将来の産業構造を踏まえて選定した10業種に対して、ミクロ変化要因を洗い出します。そこで得られたのが、1,364項目のドライビングフォースです。

その後、この膨大な数のドライビングフォースを抽象化したクラスターにまとめ、それらの影響度と不確実性を主観評価します。これらのドライビングフォースから、発生時のインパクトが大きく、ほぼ確実に発生する『メガトレンド』を5つ、抽出しました」

続いて、同じくシナリオアンバサダーの小林惇(横河電機 マーケティング本部)が「シナリオドライバー」について概説した。
「シナリオドライバー(シナリオ軸)とは、未来の方向性を大きく左右する重要な不確実性要因のことです。組み合わせによって多様なシナリオが描けるため、慎重に対話を重ねました。 物質的成長が限界を迎える中、持続可能性や幸福度など、定量化しにくい項目の位置付けについても議論し、生物圏とテクノロジーという2つの軸を置くこととなりました」
1つ目は「生物圏に迫る危機への対策」、2つ目は「変革的テクノロジーのガバナンス」だ。これら2つのシナリオドライバーについて、池上教授は指摘する。
「YOKOGAWAさんは、人間がコントロールできる要素でシナリオドライバーを取っているのが特徴です。人間がコントロールできないシナリオドライバーを取る会社もありますが、YOKOGAWAさんは人間の可能性を信じているのだと思います」
これら2つのシナリオドライバーを縦軸と横軸に組み合わせることで、以下の4つのシナリオが生まれた。

最後に、小林はこう締めくくった。
「われわれシナリオアンバサダーは、シナリオ構築の過程で積極的にAIも活用し、さらに社外の経営層や有識者と対話を重ねます。皆さまのおかげで、シナリオのコアに関わる部分まで、貴重な知見を得ることができました。
今後、異業種および産官学連携の拡大、事業ポートフォリオの変革などの機会に、未来共創イニシアチブのメンバーと経営層が対話を重ねて得られた未来のビジョンを、戦略につなげていく必要があると思います。各メンバーが社内外で『バウンダリー・スパナー(越境する者)』となり、相手の“変革する心”に火を点けて回る。また、自社組織の指揮系統とは異なる『ウィーク・タイズ(緩やかなつながり)』を広げ、今までにない気づきや取り組みにつながることを目指していきたいと思います」

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インタビュー
「未来共創イニシアチブ」に関わる社内外の関係者が、対話を通じ、多様な視点で語る活動の価値や意義

活動概要
シナリオプランニングを活用した次世代リーダー育成と、境界を超えた共創ネットワーク構築を目的とした活動の紹介

活動への想い
「正解のない時代」に生まれた、活動発足の背景や志

未来シナリオ
未来を担う若手社員たちが、シナリオプランニングと共創的な対話で描いた「未来シナリオ」

シナリオアンバサダー
YOKOGAWAの各部門から選ばれたミレニアル世代中心のシナリオアンバサダー紹介と成長や学び

未来共創ネットワーク
YOKOGAWAグループ内外のサポーターやパートナー、個社と緩く繋がり、産官学連携で築くネットワーク

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米国発テックカルチャー・メディア『WIRED』に掲載された、「未来共創イニシアチブ」の英文記事
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