
人手不足、少子化……雇用環境が変化する日本。若者の考え方や価値観も大きく変化し、企業はその理解に戸惑っている。そのような企業や社会の課題に提言を行っているのが、金沢大学の金間大介教授だ。
金間教授は、物理情報工学の博士課程に在籍中、バージニア工科大学大学院へ研究留学する機会を得た。そこで、イノベーション・マネジメントの分野と出会う。2001年当時のアメリカでは「イノベーション」という言葉が広まり、技術をマネジメントするという概念が取り入れられ始めた時代だった。帰国後、金間教授は専門を物理情報工学からイノベーションへと転向し、現在はスタートアップ・エコシステムや人材育成論をメインに研究している。
研究を進める中で金間教授は、日本の20~30代半ばの多くに、ある共通の傾向があることを見いだした。
正解のない時代。未来のリーダー育成のためには、若者の価値観を理解することが極めて重要である。金間教授に話を聞いた。
※本記事では、所属する組織ではなく、個人の見解として語っていただきました
※所属や役職は記事制作時(2025年11月)のものです
「いい子症候群」とは何か
2022年に出版され、反響を呼んだ本『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』(東洋経済新報社)。その著者の金間教授に、ご自身が考える「いい子症候群」について伺った。
「僕が考える彼らの代表的な特徴は、安定志向です。怖い上司がいない、定時で帰れる、メンタルが安定する……そんな環境が良いと思っています。加えて彼らが気にすることは、横と比較して自分が落ちていないかどうか。社会人として持つべき知識やスキルも、友人や会社の同期と同じかどうかがポイント。つまり、平均でいることが至上命題なのです」

では、好奇心や挑戦することについては、どう考えているのだろうか?
「彼らは独自の興味を追求するというよりは、皆が好きなものを好む傾向があります。また、挑戦には興味を示しません。失敗を極端に恐れるからです。挑戦するときは、うまくいくという結果が見えているときです」
一方、40~50代の上司に、その“いい子”たちは、どう映るのか? 金間教授が続ける。
「いい子症候群の若者は、偉い人の前では、なるべく匿名でいようとする傾向があります。名前を覚えられ、新しい仕事を振られるのは嫌。今の安定した給料で十分。だからといって、対人関係が苦手なわけではなく、実際にはコミュニケーション能力が高い。また性格も爽やかで、意欲的であるように見えます」
現代日本の若者の特徴
現代の日本で、いい子症候群の若者はどれぐらいいるのだろうか? また、他にどんなタイプがあるのか? 金間教授は次のように説明する。

「『いい子症候群』の若者は、全体の5割ぐらい。その真逆にある『自己実現系』と呼ばれる若者が1割。そして、その『中間層』が、残りの4割。しかし、それぞれの境目は明確に区別できず、グラデーションになっています。
自己実現系の特徴は、『今日は何を学んだ。明日はこれをやるのが楽しみ』。失敗しても『ああそうか、違ったんだ、じゃあこうしよう』という気持ちになれる。“経験は宝”という言葉がありますが、これを地で行っています。一方、他者からの評価も意識していて、目立つ仕事をするし、承認欲求も強い。つまり自己実現系は、認められたいという心情を隠していないだけです。彼らに対しては、人々の前で評価して、インセンティブを与えることが大事です。
中間層は、いい子症候群と似ており、安定志向で、目立つことはしない。しかし、そんな部分が実は好きではなく、違和感を感じています。本当は挑戦してみたいけれど、ガツガツ出ていく自己実現系のような行動には出られない。怖い気持ちが一段上にあるんです」
働きやすさ vs. 働きがい
若者の雇用を維持するために、企業は「働きやすさ」や「働きがい」に関心があるようだ。金間教授は、この2つは、全く違う活動であり、誤った理解をしないようにと警鐘を鳴らす。
「働きやすさとは、給料が安定している、ハラスメントがない、環境が良い、嫌な人がおらず人間関係が良好、リモートワークか出社かを選択できるなどの、マイナスを無くす活動です。日本の企業が改善してきたのは、この働きやすさなんです」

近年は、日本企業での働きやすさが格段に上がっている。一方で、働きがいのある組織について、金間教授は次のように語る。
「働きがいのある組織というのは、実は存在しません。なぜなら、働きがいは個々人で違うし、企業や誰かが与えるものではなく、個人が考えて決めることだからです。ですから、働きがいについては『1対1』の対応が重要なのです」
リーダー育成のカギは中間層
ここで、「変革を起こす主体性のある若い人財を、いかに確保・育成し、組織に定着してもらうか?」という問いを投げ掛けた。金間教授は、以下のように答える。
「自己実現系の若者は、大企業ではなく、スタートアップ企業に流れています。だからこそ、大企業における人財育成のポイントは中間層だと思います。彼らは挑戦したいと思いつつ、怖さが勝っている。そんな彼らを引き上げることが大事で、一人一人に異なる対応が求められます」

「未来共創イニシアチブ」のプロジェクトリーダーである玉木伸之は、自らの経験をこう話す。
「未来共創の第1世代は、イノベーター気質がありそうな人や、将来良いアントレプレナーになりそうな人を各部署に推薦してもらい、スカウトしました。一方、第2世代の募集では、挙手制に変更しました。その結果、ギラギラした野心は少ないですが、真面目に学ぶ意欲が高い人が集まったように思います」

金間教授によると、未来共創イニシアチブの第2世代は、中間層の特徴を持っているという。この中間層の若者こそが、企業で主体性を発揮し、リーダーとなる可能性を秘めている。
詳細
未来共創イニシアチブメニュー

HOME
YOKOGAWAが推進する「未来共創イニシアチブ」のトップページ

インタビュー
「未来共創イニシアチブ」に関わる社内外の関係者が、対話を通じ、多様な視点で語る活動の価値や意義

活動概要
シナリオプランニングを活用した次世代リーダー育成と、境界を超えた共創ネットワーク構築を目的とした活動の紹介

活動への想い
「正解のない時代」に生まれた、活動発足の背景や志

未来シナリオ
未来を担う若手社員たちが、シナリオプランニングと共創的な対話で描いた「未来シナリオ」

シナリオアンバサダー
YOKOGAWAの各部門から選ばれたミレニアル世代中心のシナリオアンバサダー紹介と成長や学び

未来共創ネットワーク
YOKOGAWAグループ内外のサポーターやパートナー、個社と緩く繋がり、産官学連携で築くネットワーク

Sponsor Article
米国発テックカルチャー・メディア『WIRED』に掲載された、「未来共創イニシアチブ」の英文記事
本件に関する詳細などは下記よりお問い合わせください
お問い合わせ