
※本記事では、所属する組織ではなく、個人の見解として語っていただきました
※所属や役職は記事制作時(2025年9月)のものです
※取材場所は、MIRAI LAB PALETTE(MLP)
地域視点を未来シナリオに活かす
グローバルに事業展開するYOKOGAWAだが、日本国内の販売は、全国に点在する代理店ネットワークが大きな役割を果たしており、地域とのつながりが極めて重要だ。
未来共創イニシアチブのプロジェクトリーダーである玉木伸之は、次のように語る。
「YOKOGAWAの主なお客さまである製造業の工場は、大都市圏ではなく、むしろ大都市圏以外の地域にあるわけです。そのため、YOKOGAWAの代理店も全国各地にサービス拠点を構えています。だからこそ、地域の視点が非常に大事なのです。東京本社にいながらも、地元の人たちや代理店と同じ目線で、『現地がどうなっているのか?』という肌感覚を持たないといけません。
以前、全国代理店会議に呼ばれて、未来共創イニシアチブの活動について話したことがありました。その話を、代理店の社長や関係者の皆さんが真剣に聞いてくださったんです。各地の代理店の皆さんは、社会変化に対して切迫感のある方々が多く、人手不足の問題や事業の長期展望などについても、課題を共有してくださった。
だからこそ未来共創イニシアチブでも、全国の皆さまとの関係を大切にして、現場からのインプットをもっと増やしていきたいんです」

故郷の原風景がなくなるという危機感
乘附 諒(のつけ・りょう)は、「2040年の未来シナリオ」を作成したシナリオアンバサダーの一人だ。彼は若手リーダーの一人として、さまざまな地域からのインプットを、どのように捉えているのだろうか?
「YOKOGAWAのメンバー同士だと、どうしても“東京にいる大企業のサラリーマン”の思考で考えてしまいます。例えば僕たちは、『気温が何℃上がって、海面上昇が何%……』というふうに、数字で語りがちです。
しかし、ある地域でファミリービジネスとして酒造業を営んでいる方は、未来シナリオを見て『これ以上、気候変動が進むと、自分たちが代々暮らしてきた土地の自然の恵みが損なわれ、酒米が育てられなくなるかもしれない』と話されていました。生態系というか、テロワール(その土地特有の風土や環境)が壊れる危機感を強烈に感じられていて、『これは重要な視点だ』と思いました」

さらに、シナリオアンバサダーの一人、茂木豪介(もぎ・たけゆき)は、ある地方都市で行った対話の経験を踏まえて、重要な問いを投げ掛けた。
「その地域の若い人たちは、地元に根づいた文化を愛し、大事にしています。都市化は世界中で起きている現象ですが、大都市への一極集中は本当に良いことなのか? それを、すごく考えさせられました」

“通訳者”として、都市と地域の共創をもたらす
産官学融合のラーニングコミュニティ「Green Phoenix Project(以下、GPP)」参加者の中で、最も出席率が高いのは、中矢氏である。彼をGPPへ向かわせる理由は、何なのだろうか?
「大都市が持つ強みは、“多様な人と情報”ですね。GPPに参加することで、最先端の知見やノウハウを得られる。これが一番大きな理由だと思います。
実情を言うと、大企業やグローバルな人たちは視点が外向きですが、松山のような地方都市にいるとどうしても情報が少なく、内向きになりがちです。松山でGPPの人たちの話をすると『いや、それは、東京の大企業やけん、できる』という反応で片づけられてしまうことが多い。だからといって、松山の視点に合わせ過ぎると、“気づき”のインパクトがなくなってしまう。こうした感覚の違いをすり合わせることが重要になります。
中矢氏が担う仕事の一つに、企業向けの研修会の開催がある。年間100本ほどを企画し、勉強会やセミナーを開催しているが、そこでもGPPの知見が役立っているという。
「GPP関係者の方々に松山へお越しいただいて、講演をしていただき、地元企業の人たちとつながって対話ができるような場を設定しています」

乘附は、中矢氏のことを“GPPの通訳者”に喩える。
「中矢さんは、東京で行われるGPPの講演内容を“地域の論理”に翻訳してくれます。例えば、『今の話は地域コミュニティから見ると、こういうふうに解釈されるんです』とか」
この“通訳者”の存在こそ、未来共創イニシアチブでも語られる「バウンダリー・スパナ―」だともいえるだろう。
中矢氏は「商工会議所は、そういう役割の仕事なんです。職業的に鍛えられているのでしょうね」と謙遜する。
世界の人々にも、日本のローカル事情を知ってほしい
かつて江戸時代は、それぞれの藩で独自の文化が育まれる緩やかな地方分権制だった。ところが明治時代になると、欧米列強に対抗するため、強力な政府をつくるべく中央集権型の国家体制となった。中矢氏は、東京一極集中が進んだのは、この頃からだという。
“世界の人々に伝えたいこと”として、中矢氏は次のように話す。

「日本が世界に誇れる自然やその資源、そして文化や芸術は、大都市圏の外に広がる地域にこそ残されています。国土が比較的細長く広がっているので、各地に独自の文化が残っている。それが日本の良さでもあります。松山を含む西日本では、日本古来のルーツが残っていることが多いんです。
海外の人々には、そういった日本の豊かな自然、歴史や文化を、ぜひ体験していただきたい。その上で、先進国が抱える『人口減少』という共通の課題を、国を超えて一緒に考える。各地域の人々が、それぞれの文化とともに地域をどう維持していくか? 日本だけに限らず、グローバルな視野で考えてほしいですね」
より良い未来に向けて、地域創生をどう推進するのか。最後に、中矢氏に聞いてみた。
「少子高齢化が進んで、圧倒的に若い人たちが減っていく地方こそ、世代間の共創が必要だろうなと思います。これまで、地域コミュニティの意思決定をするメンバーは一部の方に限られていることが多くありました。しかしこれからは世代に偏らず、次の世代を担う若い人たちも意思決定に参加できるような組織をつくり、地域に貢献することが必要だと思います」
今回は、住みやすさと伝統文化が共存する松山という中核都市で、長期的な視点を持ちながら、地域の課題に取り組む中矢氏に語っていただいた。人口減少による都市の消滅や社会保障の破綻など、問題が山積する日本。だがそれは、世界各国が共通して抱える喫緊の課題でもある。いまだかつて、どの先進国も達成したことがない「人口減少下での経済成長」。それを地域創生によって成功させることで、日本発の良いモデルを世界に示すことができるかもしれない。
「地域を知り、地域から学ぶ」――この姿勢が、日本のみならず、地球のより良い未来について探索する機会を、広げてくれるのではないか。
未来共創イニシアチブは、これからも全国の地域の皆さんと対話を続け、あらゆる世代・国・産業をつなげ、未来を共に描いていく。

左から:茂木 豪介(YOKOGAWA)、清水 香織(YOKOGAWA)、中矢 斉氏(松山商工会議所)、玉木 伸之(YOKOGAWA)、乘附 諒(YOKOGAWA)

中矢 斉(なかや・ひとし)
松山商工会議所
事務局長
趣味:ジャンルを問わない音楽鑑賞
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インタビュー
「未来共創イニシアチブ」に関わる社内外の関係者が、対話を通じ、多様な視点で語る活動の価値や意義

活動概要
シナリオプランニングを活用した次世代リーダー育成と、境界を超えた共創ネットワーク構築を目的とした活動の紹介

活動への想い
「正解のない時代」に生まれた、活動発足の背景や志

未来シナリオ
未来を担う若手社員たちが、シナリオプランニングと共創的な対話で描いた「未来シナリオ」

シナリオアンバサダー
YOKOGAWAの各部門から選ばれたミレニアル世代中心のシナリオアンバサダー紹介と成長や学び

未来共創ネットワーク
YOKOGAWAグループ内外のサポーターやパートナー、個社と緩く繋がり、産官学連携で築くネットワーク

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米国発テックカルチャー・メディア『WIRED』に掲載された、「未来共創イニシアチブ」の英文記事
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