
少子高齢化が深刻な日本。2008年の1億2,800万人をピークに、人口減少が続いている。地方から大都市圏への人口流出や、地元を離れる若者・女性の増加が続いており、地域の人手不足は深刻である。そこで日本政府は2025年、刷新版の「地方創生2.0」を発表。その内容は、「地方こそ成長の主役」という考えの下、大都市圏と地方の交流や、AI・デジタル技術を活用するための基盤整備といった構想を含んでいる。
YOKOGAWAの「未来共創イニシアチブ」では、シナリオプランニングを活用し、多様なステークホルダーとの対話を通じて、超長期の未来を描く。2025年に公開された「2040年の未来シナリオ」には、大都市圏のみならず、地方の視点も積極的に取り入れていることが特徴だ。
今回のインタビューでは、「未来共創パートナー」である松山商工会議所事務局長の中矢 斉(なかや・ひとし)氏を紹介する。四国で人口最多の中核都市でありながら、人口減の課題に直面している愛媛県松山市。経済を軸とした地域創生に取り組む中矢氏に、“中核都市の未来”について伺った。
※本記事では、所属する組織ではなく、個人の見解として語っていただきました
※所属や役職は記事制作時(2025年9月)のものです
※取材場所は、MIRAI LAB PALETTE(MLP)
地元企業間の架け橋
「商工会議所」とは、それぞれの地域の商工業者が集まって組成した、会員制の経済団体のこと。そのルーツは、中世から近世にかけて、西欧の諸都市で商工業者が結成した「ギルド」だといわれている。我が国では1878年、近代日本の“資本主義の父”と称される渋沢栄一が、東京で国内初の商工会議所を創設。その後、全国の都市で次々と設立され、松山もその一つとなった。
松山商工会議所は現在、約6,000社の会員を有する。その運営の実務を担うのは、44歳から6年を超えて事務局長を務める中矢氏だ。同氏はこれまで、地元企業と地域経済の発展のために、中小企業向けの経営サポート、地域活性化のイベントやDX推進、行政への要望活動など、活動の幅を広げてきた。

生まれも育ちも松山という、中矢氏。長い歴史と伝統文化が根づく街で、その魅力を守るために、彼は何を考え、どのような課題解決に取り組んでいるのか? 最初に、彼が生まれ育った松山市の魅力や課題をご紹介する。
“住みたい田舎ランキング1位”の都市が直面する人口減
江戸時代に築かれた松山城の天守がそびえ、美しい瀬戸内海に面した都市・松山市。約3000年の歴史を持ち日本三大古湯としても知られる道後温泉など、数々の観光名所を持つ。韓国・台湾からのインバウンド客にも人気である。2024年には、“住みたい田舎ベストランキング”で全国1位に選ばれたというが、その理由を伺った。

松山城

道後温泉
「松山は海と山が近くて、自然の恵みと食べ物、そして歴史や文化が豊かです。物価が安く、気候も温暖で、災害も少ない。学校や病院などのインフラやショッピングは一通りそろっているコンパクトシティです。例えば、商工会議所の職員の通勤時間は、概ね約15分以内なんです」
中矢氏は、この人気のある都市でも起きている人口減や若者離れなどに危機感を持っており、その原因の一つは「今後の成長を見込める中核的な産業がないことだ」と指摘する。
「松山は第三次産業や中小企業が多く、人口約50万人を長期的に支えることができる成長可能な中核的な産業はありません。インバウンドのおかげもあって経済自体は堅調ですが、若者が東京などの大都市圏に流出していて、少子化の影響もあり、人手不足が深刻です。昨今、大都市圏と地方との賃金格差が広がっており、それも人口流出を加速させる一因になっているんです」
しかし、その変化が穏やかなため、市民の危機感は薄いという。
「20~30年前に比べると、小学生の生徒数が半分ぐらいに減りました。でも、人口減少はじわじわと起きている変化なので、実感がない。そのため大きな課題は、地元の人たちが『これまでの仕事や暮らしが今後もずっと続くだろう』と思い込んでいることです」

「マイナスの情報」を集めて分析する
中矢氏はこれまで、商工会議所の活動の一環として、地域創生の在り方を探索するために日本各地を会員各位と一緒に視察して回り、年間約2,000人に会って話を聞いてきた。ただ、全国的に製造業の雇用モデルが転換期にある現在、各地の中核都市で「持続可能だ」と思える事例は、まだ見いだせていないという。
国内大手の製造業が地方から撤退し、各工場が集約・縮小するトレンドになっています。日本全体で見ると、製造業を中心に所得を増やすという従来のモデルが変化しているのです」
では、その解決のために、中矢氏はどんなことを行っているのか?
「今は『上手くいかなかった』という“マイナスの情報“を、できるだけ多く拾うことが大事だと思います。そんな情報を、いろんな地域を訪れて集め、分析していく。こういった“マイナスの情報“は、通常あまり教えてくれないんですが、幸い、我々のような商工会議所の立場だと、訪問先の人たちは温かく迎えてくれて、マイナスの情報も快く提供していただけます」

そして次に必要なのが、未来志向の視点だ。
「グローバルな観点から、超長期の未来に何が起きるかというのを認識するということが大事だと思います。前々会頭の時に、30年後の愛媛のビジョンが策定されました。未来共創イニシアチブの皆さんに教えていただいたシナリオプランニングの手法も使いながら、楽観論でも悲観論でもない、中庸で持続可能な未来のシナリオを描く。それをみんなで共有する。大きな変化だと拒否反応が出ますので、小さな取り組みを少しずつ積み上げていくことが、中核都市にとって“持続可能なまちづくり”を進める有効な方法だと思います」

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インタビュー
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米国発テックカルチャー・メディア『WIRED』に掲載された、「未来共創イニシアチブ」の英文記事
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