離島の挑戦

壱岐市は九州北部の玄界灘沖、福岡県と対馬の中間地点に位置する離島です。
近年は大型化する台風による被害の増加、海水温の上昇に伴う漁獲量の大幅減少など、地球温暖化の影響が顕著に現れており、2019年に全国の自治体で初めて気候非常事態を宣言しました。
島内で使用する電力は、内燃力発電所(計39MW)を中心に、風力発電(2MW)と太陽光発電(約8MW)で供給されていますが、九州本土の電力系統と海底ケーブルでつながっていないため、島の小さな電力系統では、天候により出力の変動する太陽光発電と風力発電の導入には限界があり、出力抑制が頻繁に実施される状況となっています。そこで、島内で発電した再生可能エネルギーを島内で消費する「エネルギーの地産地消」を実現するべく、地域の個性を生かした多様性に富んだ島づくりに向け、化石燃料の削減への挑戦が始まっています。
2050年 再生可能エネルギー100%へ向けたフェーズプラン
Phase1
主力電源は従来通りの内燃力で、再エネを順次導入していく段階です。再エネの増加に伴い余剰電力が発生するため、ESS(電力貯蔵システム)の活用が必要です。ESSには蓄電池と水素貯蔵が想定されますが、それぞれのメリット・デメリットを勘案し、変動のある再エネを無駄なく使用するために蓄電池と水素貯蔵を適切に組み合わせることが有効です。
Phase2
主力電源が内燃力から徐々に再エネに移行していく段階です。地域内における再エネ設備とESSについて、適切な場所への最適な規模の導入を検討するとともに、再エネの安定性を高める対策が必要になります。そのために電力会社と連携し、内燃力と送配電網の維持管理計画を策定しつつ、系統のシミュレーションや送配電のネットワーク管理を行う必要があります。再エネが引き起こす周波数変動により電力系統が不安定になるというリスクに備え、系統全体の周波数と力率の安定化を目的とした制御を導入します。
Phase3
再エネが主力電源となり、内燃力はバックアップ電源の役割を担う段階です。この段階においても課題となるのは、再エネの大量導入によって周波数変動が引き起こされ、電力系統が不安定になることです。再エネを主力電源化するためには、再エネ設備とESSを島内に分散して整備することが想定されますが、さまざまな分散エネルギーリソースを統合することは非常に複雑であるため、適切な測定及び制御システムが不可欠なのです。
離島マイクログリッドの目指す未来
マイクログリッドとは、再生可能エネルギーや蓄電池などを組み合わせて電力供給量を制御し、公共施設、オフィス、学校などの需要家のエネルギー需要量を把握することで、独立して電力の安定供給を実現する小規模なエネルギーネットワークのことをいいます。災害・非常時にも系統から独立してエネルギーの安定供給を継続するレジリエンスの高いマイクログリッドの運用を実現することで、地域エネルギー事業を通じた島の活性化と発展を目指します。
壱岐市独自の再生可能エネルギー導入による「エネルギーの地産地消」
壱岐市と未来環境エネルギー(株)、(株)エーディエス、(株)エノア、(株)三社電機製作所等が産学官連携して取り組む実証事業で、(株)なかはらが運営するフグの陸上養殖場に太陽光発電システム、水電解装置、燃料電池などを併設しています。水素は蓄電池に比べて長期間エネルギーを蓄えることができ、他所に運ぶことも可能で、加えてこの実証試験は、システムから発生する酸素や排熱も有効活用することで、これまでにない独創的な特徴を持つ取り組みとなっています。壱岐市は晴天下ではかなりの余剰電力が発生します。太陽光発電の余剰電力を無駄なく活用することが、島の基幹産業の未来にも貢献しているのです。
RE水素システム実証事業
関連製品&ソリューション
-
ESS運用最適化サービス
お客様の再生可能エネルギー設備とエネルギーストレージを最適に運用することで、再生可能エネルギーの価値最大化を目指します。
-
脱炭素経営に向けた実現シナリオのご提案
2050年カーボンニュートラル化に向けて、企業や個人での脱炭素化は今後必須となっていきます。お客様とともに、目標設定から目標達成までのタスクや課題を考えます。