横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

Vol.60 No.1 (2017)

No.1 お客様と共創する研究開発 特集

巻頭言 マーケティング・ドリブンな研究開発 (PDF:348KB/2ページ)

  • 阿部 剛士 *1

*1 執行役員,マーケティング本部本部長 博士(学術)


お客様と共創する研究開発 (PDF:726KB/4ページ)

  • 八木原 剛 *1
  • 加藤 暁之 *2

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター
*2 マーケティング本部 イノベーションセンター 研究開発部

コーポレート・ブランド・スローガンに込められた,お客様と新しい価値を共創していくという横河電機の強い意志は,研究開発部門の活動にも反映されている。その状況の中で,研究開発活動をどのように進めて,その活動の中でお客様とどのように価値を共創していくかが,研究開発部門に課せられた重要な課題である。本稿では,その課題に対して,横河電機の研究開発部門がどのように取り組んでいるかについて説明する。具体的には,3つのステージからなるイノベーション活動という形で,バイオ,マテリアル,エネルギーの3つの分野をターゲットとしてテーマを選定し,研究開発活動を進めている。それぞれのテーマにおいては,お客様が抱えているニーズや課題を一緒に探りながら,新しい価値を生み出すことを目指している。


迅速微生物検査に向けた核酸検出法の開発 (PDF:1002KB/6ページ)

  • 蓼沼 崇 *1
  • 田口 朋之 *1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター 研究開発部

食の安全は食品製造における重要課題の一つである。食物中に混入した微生物の情報を得ることは食品の衛生管理において不可欠であるが,従来の培養法による微生物試験法では試験結果が得られるまでに数日から数週間程度の時間を要し,その検査時間を短縮する技術が望まれている。我々は,標的核酸分子が結合することで蛍光を発する核酸検出プローブで核酸検出を行うシグナリングアレイ技術を開発した。本プローブを遺伝子解析による微生物検査等に用いられるDNAチップに適用することで,蛍光物質などで標識していない標的核酸分子をワンステップで検出できるDNAチップの作製が可能になった。本技術により,微生物の検出を迅速・簡便に行い,誰でも再現性の高い検査を行うことができる。本稿では,我々が開発した技術について詳細を述べ,その応用について議論する。


プリンテッドエレクトロニクス製造の品質管理を実現する偏光イメージング計測技術の開発(PDF:1136KB/4ページ)

  • 村山 広大 *1
  • 濃野 友人 *1
  • 舩﨑 草吉 *1
  • 熊木 大介 *2
  • 時任 静士 *2

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター 研究開発部
*2 山形大学 有機エレクトロニクス研究センター

プリンテッドエレクトロニクスは,従来の半導体デバイスにはない「フレキシブル性」,「透明性」というデバイス自体の特徴に加え,「低環境負荷」,「低コスト」という製造上の利点を有しており,研究開発が活発化している。特に,フィルム上に塗布・印刷技術でデバイスを連続的に形成できることからRoll-to-Roll(R2R)生産の実現に大きな期待が寄せられている。R2R生産は,フィルムを搬送状態で連続生産を行なう方法であるため非接触・高速なセンシング機器が求められる。横河電機は,山形大学との共同研究を通して,有機半導体層の結晶性がプリンテッド有機半導体デバイスの重要な品質特性であることを見出し,結晶性をインラインで可視化可能なR2R生産向け偏光イメージングインラインセンシング技術を開発した。


電気光学効果を用いた電界センサとその応用 (PDF:1523KB/4ページ)

  • 勝山 純 *1
  • 松本 憲典 *1
  • 杉野 弘幸 *1
  • 田中 宏明 *1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター 研究開発部

一般的に電界強度の測定には,金属を用いたアンテナが使用されている。しかし,微小な電界発生源から発生する微弱な電界を測定すると,アンテナ自身が被測定電界を乱し,正確な測定を行うことができない。そこで,電気光学効果を持つ光学結晶をアンテナエレメントに使用した,低擾乱(ていじょうらん)で低域の周波数特性に優れた電界センサと,そのセンサを用いた非接触電圧測定技術を開発したので紹介する。従来の電気光学効果を使用したセンサでは,低域が数MHz程度までしか感度を持つことができなかったが,開発した電界センサでは,光学結晶中の光伝導効果の抑制により帯域を約20 Hzまで伸ばすことができた。その結果,太陽電池の非接触電圧測定へ応用範囲を広げることが可能になった。本論文ではその測定結果を示し,その他の応用例として電子機器のEMC測定や非接触でのプリント板の信号波形観測についても報告する。


拡張現実技術を活用したフィールドコミュニケーションの効率化 (PDF:795KB/4ページ)

  • 櫻井 康樹 *1
  • 石井 庸介 *1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター インキュベーション部

プラント操業における大きな問題として,熟練技術者の減少・不足が長年指摘され続けている。これによる現場の技術力低下がプラントの安定操業を妨げ,あるいは重大事故を引き起こしかねない問題として危惧されている。この問題に対し,若手の教育・技術伝承が急務となっているが,それを行う熟練者がそもそも少なくなっている。そのため,現場即戦力の確保が難しくなってきており,お客様にとって望ましくない負の循環が生まれつつある。このような問題に対し我々は,熟練技術者不足を補い技術伝承を促進するためのソリューションとして,拡張現実(AR: Augmented Reality)技術を用いたリアルタイム視覚情報共有システムを提案し,概念実証(PoC: Proof of Concept)活動を行ってきた。本稿では,ソリューションのコンセプトや開発状況を報告するとともに,プロトタイプを用いたお客様との課題・ニーズの探索活動について紹介する。


電池状態推定技術と蓄電池システムの効率運用ソリューション (PDF:1145KB/6ページ)

  • 虎井 総一朗 *1
  • 数見 昌弘 *1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター インキュベーション部

再生可能エネルギーを導入した分散型のエネルギーシステムを構築していくことが世界的に求められている。この中で,電力ピークシフトや出力変動の安定化対策として,定置型蓄電システムは不可欠なものとなってきている。蓄電池システムの効率的な運用のためには,充電状態や劣化状態といった電池の状態を的確に把握し,組電池としての性能を最大限引き出すことが重要である。本稿では,独自の電池特性モデルに基づく電池状態推定技術による蓄電池システムの効率運用ソリューションについて紹介する。


全固体ガラスレスpHセンサの開発 (PDF:1232KB/4ページ)

  • 新谷 幸弘 *1
  • 小河 晃太朗 *1
  • 猿谷 敏之 *1
  • 川原田 洋 *2

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター 研究開発部
*2 早稲田大学 理工学術院

pH値測定の業界標準はガラス電極式pH計である。当社でもガラス電極式pH計を製品販売し,化学・上下水・石化・バイオ等の幅広い業界のお客様に使用されている。しかし,ガラス電極pH計は,ガラス破損リスクと内部液漏洩による試料汚染リスクの課題を抱えている。そこで,当社では次世代のpHセンサである全固体ガラスレスpHセンサの実現を目指し,早稲田大学との共同研究を進めている。本論文ではその技術を紹介し,試作品の評価結果を報告する。


機械学習を用いたセンサデータ解析の可能性Part2 (PDF:1000KB/4ページ)

  • 鹿子木 宏 *1
  • 髙見 豪 *1

*1 IA プロダクト&サービス事業本部 新分野開発センター フィールドデジタルイノベーション部

近年,機械学習あるいは人工知能と呼ばれる技術の進歩は目覚ましく,プラントへの応用が強く期待されているが,同時に多くの誤解も生まれている。例えば,「人工知能を使えば,何か未知の知見がすぐ得られる」はよく聞かれる誤解で,問題に適した手法を選択する必要がある。一方で,悲観的な考え方「結局,人工知能は役に立たない」も,特定分野で顕著な成果(画像・囲碁等)が出ていることを考えると,同じく誤解である。ならば,機械学習・人工知能とは一体何なのか? 本論文では,データ解析時の機械学習の特徴を具体例で説明し,プラントデータ解析に適用した横河電機の実例を紹介する。


シリコンレゾナント気圧センサの高分解能化 (PDF:1187KB/4ページ)

  • 野田 隆一郎 *1
  • 松尾 雄祐 *1
  • 渡辺 哲也 *1
  • 吉田 隆司 *1

*1 IA プロダクト&サービス事業本部 半導体応用開発センター

近年IoT(Internet of Things)や環境計測の分野で高精度の気圧センサのニーズが高まっている。気圧センサはIoTの分野では高度計や気圧計として,環境計測の分野では地震や津波の発生などに起因するインフラサウンドと呼ばれる微小且つ低周波の圧力変動を検知する気圧計などの用途で用いることができる。横河電機は1980年代からシリコンレゾナント圧力センサの開発を続けており,このセンサが搭載された差圧伝送器DPharpは長年にわたって多くのお客様に使用されている。我々はこれまで培ったシリコンレゾナントセンサの技術を応用し,上述したニーズに応えるため,差圧伝送器や圧力センサ以外にも応用が可能な新しいセンサを開発している。今回試作した気圧センサは,使用した圧力標準器の仕様2.5 Paと同等の精度を持ち,分解能は0.1 Paを達成する見込みを得ることができた。


シリコンレゾナント高感度ひずみセンサ (PDF:987KB/6ページ)

  • 鮫島 健 *1
  • 鈴木 良孝 *1
  • 濱松 伸到 *1
  • 横内 裕 *1
  • 吉田 隆司 *1

*1 IA プロダクト&サービス事業本部 半導体応用開発センター

差圧伝送器DPharpに採用しているシリコンレゾナント圧力センサは,圧力によって変形したダイアフラムのひずみを,内蔵のシリコンレゾナントひずみゲージにより測定し,このひずみから圧力を求めている。シリコンレゾナントひずみゲージは金属箔ひずみゲージやピエゾ抵抗式ひずみゲージよりも高感度であるが,被測定物との熱膨張係数の違いにより温度誤差が生じるという課題があった。今回新しく,温度補償構造体上にシリコンレゾナントセンサを配置することにより温度誤差を改善し,さらにひずみゲージを静電駆動式とすることにより,高感度で低消費電力なシリコンレゾナントひずみセンサを作製できる見込みを得たので報告する。本センサは,無線計測やIIoT(Industrial Internet of Things)との親和性に優れるという特長を持つ。



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