2013年横河技報[Vol.56 No.2]

No.2 研究開発 特集 -人の行動変容を促す-

巻頭言 勇気なき賢者より勇気あるバカを (PDF:234KB/2ページ)

  • 生田 幸士 *1

*1 東京大学大学院 情報理工学系研究科 システム情報学専攻 教授


持続可能社会の社会基盤を支えるイノベーションの展開 (PDF:668KB/4ページ)

  • 白井 俊明 *1

*1 イノベーション本部

産業・社会インフラを支える製品やソリューションを提供することを使命とする当社は,計測・制御・情報の技術をコアとして,中長期的視点に立って持続可能社会の構築に貢献できる事業活動を目指している。 社会のメガトレンドを考察する中で,機械システムと人間システムの調和や人間能力の拡張支援が,当社の持ち味・強みを生かした新しい技術開発の方向となることを認識し,イノベーション・ビジョンを設定した。このビジョンの実現を通して,持続可能社会の構築に貢献できる新しい技術・市場の創出を図ってゆく。


サイバー・パーセプション・コンセプト:人に着目したオートメーションの革新 (PDF:1001KB/4ページ)

  • 岡部 宣夫 *1

*1 イノベーション本部 研究開発部

オートメーション・システムの健全なオペレーションは,多くの専門家に支えられている。このような専門的な知識と経験の蓄積と伝承に,人同士の無形の伝承が欠かせない。人員・後継者の減少は,人の能力に頼った知識と経験の蓄積と伝承のコストをプライスレスにする。サイバー・バーセプション・コンセプトの目的は,最新の技術と研究の成果を活用することで,前述した知識と経験の伝承問題を解決し,人が本来もっている適応性(adaptability)と復元力(resiliency)を強化し,生産の効率性と安全性を向上させることである。本コンセプトの目標は,1)人の知識と経験を再利用可能なものにし,2)人の作業の効率性と安全性を向上させ,3)人に対する危険を回避することである。本コンセプトを実現させる研究としては,腐食センシング画像を用いた異常検知,Industrial Augmented Reality (iAR) などを行っている。


エネルギーマネジメントシステムにおける電池利用技術 (PDF:645KB/4ページ)

  • 池澤 克哉 *1
  • 丸山 孝生 *2

*1 イノベーション本部市場開拓部
*2 IA-MK 本部グリーンファクトリー推進室

社会がエネルギーマネジメントシステム(EMS)を求める時代となり,住宅(HEMS)やビル(BEMS),コミュニティ(CEMS)での実証がグローバルで進められている。EMS を構成する電気エネルギーのストレージデバイスとして,電気自動車(EV)用途で注目されたリチウムイオン電池を使う動きがある。リチウムイオン電池は特性を引き出すために,電池の状態(充電量,容量等)を正しく把握して運用する必要がある。本稿では社会システムにおける電池の役割と,リチウムイオン電池を使いこなすには何がポイントかを解説する。


ニューロサイエンスと脳機能計測(PDF:1046KB/4ページ)

  • 冨澤 英明 *1

*1 イノベーション本部

脳と心を扱うニューロサイエンス= 神経科学は対象が複雑であること,分子,細胞,ネットワーク,個体レベルなど広範な領域を扱うことからも,まだまだ未知のことが多いが,近年のヒトゲノムの解明や非侵襲的脳機能計測技術の進歩などにより急速な発展を見せている。本稿では,各国の戦略的脳科学プロジェクトに触れた後,脳磁計(MEG: magnetoencephalograph)を用いた脳機能計測・解析事例を示す。人の脳と心を実証的に明らかにしていこうとする諸領域の研究にとっても脳機能計測・解析技術の向上は重要な課題となるが,脳内プロセスの推定や脳内ネットワークの検証といった最新の技術を紹介する。


拡張現実技術の産業オートメーションへの応用
- 拡張現実によるコラボレーション革新 - (PDF:678KB/4ページ)

  • 石井 庸介 *1
  • 大石 憲児 *1
  • 櫻井 康樹 *1

*1 イノベーション本部 研究開発部

プラントオペレータの高齢化や引退により,プラント現場ではより少ない人員で高度な技術を用いた操業を強いられており,その結果として人為的ミスによる操業効率低下や重大事故を招くケースが世界的に増加傾向にある。このようなユーザ課題に対して当社は,人間の五感を駆使し,あるいは超越するオペレータ支援システムのコンセプトを提案し,概念実証 (PoC:Proof of Concept) 活動を行っている。特に拡張現実 (AR:Augmented Reality) 技術を用いたコンセプトは,人間が最も頼りにする視覚的情報を拡張するアプリケーションとして,ユーザから高い期待を寄せられている。本稿では,当社が提唱してきたAR を含む人間中心設計の新しいオペレータ支援コンセプトと,その実現に向けた取り組みについて解説する。


 

確率的モデルを用いた効率的なプラントモデルのエンジニアリング (PDF:787KB/4ページ)

  • 中林 暁男 *1
  • 鵜飼 将太 *1
  • 和田 英彦 *1

*1 イノベーション本部 研究開発部

プロセス産業の操業の現場において,製品品質のリアルタイム推定・高度制御・運転条件最適化などのプラントモデルを用いたアプリケーションの重要性が増してきている。プラントモデルを用いたアプリケーションは,適正に利用すれば効果の大きいアプローチであるが,プラントモデルの構築と運用は決して容易な作業ではない。外れ値の除去,モデル構造の決定,入力因子選定やダイナミクスの次数決定など,エンジニアはプラントモデル構築時に多くの事項を検討する必要がある。またプラントモデルは,触媒・装置の劣化・交換,生産する銘柄の変更などに伴い劣化していくため,劣化を速やかに検出し,モデルを再構築しなければならない。これらの状況から,プラントモデルを用いたアプリケーションを活用するためには,利用者の負担が大きいのが現状である。そこで我々は,プラントモデル構築にかかる作業を確率的モデルの枠組みで定式化することで,プラントモデル構築を効率的に行う方法を開発した。開発した手法により,従来エンジニアが行っていたモデル構築作業の一部を数値計算問題として扱うことができ,効率的なプラントモデルのエンジニアリングが可能となる。本稿ではその概要と数値実験の結果を示す。


リチウムイオン電池の劣化診断技術の開発 (PDF:1315KB/4ページ)

  • 岡田 修平 *1
  • 吉武 哲 *1
  • 冨永 由騎 *2
  • 姉川 彰博 *2

*1 イノベーション本部 市場開拓部
*2 株式会社本田技術研究所 四輪R&D センター

リチウムイオン電池は,充放電サイクルや長期保存により,容量低下や内部抵抗増加といった劣化現象が起きることが知られている。また,劣化の解析手法として,周波数応答アナライザで測定した交流インピーダンス特性を用いた取組が数多く報告されている。今回,電池運用中における電池劣化診断を目的として,任意波形から交流インピーダンスを推定する技術を開発した。また,実車走行における電流・電圧波形を用いて技術検証を行い,車載化の実現可能性を確認したので報告する。


レーザ分光式炭化水素多成分分析計 (PDF:895KB/4ページ)

  • 光本 康彦 *1
  • 大山 将也 *1
  • 矢田部 力 *2
  • 蒲原 敦彦 *2

*1 IAPF 事業本部共通技術開発センター要素技術開発部
*2 イノベーション本部研究開発部

横河電機は,多成分の炭化水素の同時測定を高速かつ高精度に行うレーザ分光式炭化水素多成分分析計の試作機を開発した。可変範囲の広い波長可変半導体レーザMEMS-VCSEL (Micro Electro Mechanical Systems -Vertical Cavity Surface Emitting Laser) を搭載し,独自のスペクトル解析アルゴリズムを用いて各成分濃度を測定する。本分析計によりC1-C5 の飽和炭化水素濃度を秒周期で同時計測でき,リアルタイムプロセス制御への適用が期待される。本分析計の応用として,我々は都市ガス熱量調整プロセスにおけるガス熱量測定のフィールドテストを実施した。本稿ではその結果も紹介する。


高速・高空間分解能な光ファイバ歪み・温度分布測定技術BOCDA
- 航空機構造健全性診断への取り組み - (PDF:1393KB/4ページ)

  • 熊谷 芳宏 *1
  • 松浦 聡 *1
  • 鎗 孝志 *2
  • 齋藤 望 *2
  • 保立 和夫 *3
  • 岸 眞人 *3
  • 吉田 幹夫*4

*1 イノベーション本部 研究開発部
*2 三菱重工業株式会社 技術統括本部 名古屋研究所 機体強度研究室
*3 東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻
*4 一般財団法人素形材センター 次世代材料技術室 航空機材料技術部
現・民間航空技術サービス株式会社

横河電機株式会社,三菱重工業株式会社,東京大学,一般財団法人素形材センターは,航空機機体の構造健全性を診断するため,BOCDA (Brillouin Optical Correlation Domain Analysis) 法を使った光ファイバ分布型歪み・温度センサの開発を進めている。BOCDA は高速・高空間分解能でかつ歪みと温度を分離可能であり本目的に好適である。航空機搭載可能な試作機を開発し実航空機による評価を行い,機体上昇に伴う気温変化と機体歪みの分離測定を実現した。


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