2008年横河技報[Vol.52 No.4]

No.4 研究開発特集

持続的成長社会の産業基盤を支える研究開発を目指して (PDF:313KB/4ページ)

  • 白井 俊明 *1

*1技術開発本部

産業・社会インフラを支える製品・ソリューションを提供する当社は,計測・制御・情報をコア技術として中長期的な視点から研究開発の方向性を定めている。当社のコーポレート研究開発部門である技術開発本部は,フィールド・ユビキタス・コンピューティング,マイクロ・テクノロジー,フォトニクス・テクノロジーの3 つの横断的技術分野を戦略要素技術ドメインとして,持続的成長を可能とする社会の実現を目指し,その産業基盤を支える研究開発に注力してゆく。


フィールド・ユビキタス・コンピューティングへのビジョンと取り組み (PDF:339KB/4ページ)

  • 野口 哲 *1
  • 左治木 次郎 *2
  • 大谷 哲也*3

*1技術開発本部 ユビキタス研究所
*2技術開発本部 ネットワーク開発センター
*3技術開発本部 計測制御研究所

産業向け生産システムを取り巻く状況は市場や社会環境とともに変化しており,生産システムの生産現場(フィールド)にも,多岐に渡る課題に関わる個々人のためのシステムとして柔軟に変化に対応できることが求められている。当社では,この柔軟な変化への対応を支援する環境/基盤技術をフィールド・ユビキタス・コンピューティングと呼び,その要素技術の研究開発を行っている。本稿では,フラットなシステムインフラの実現,成長を前提とするシステムアーキテクチャ,生産のための本質的な情報を提供するサービスという視点から,フィールド・ユビキタス・コンピューティングの要素技術の研究開発を紹介する。


マイクロ・テクノロジーへのビジョンと取り組み (PDF:650KB/6ページ)

  • 今村 誠 *1
  • 磯崎 克巳 *2
  • 田名網 健雄*3

*1技術開発本部 デバイス開発センター
*2技術開発本部 先端技術研究所
*3技術開発本部 遺伝子計測研究所

当社のコーポレート研究開発部門である技術開発本部では,「マイクロ・テクノロジー」関連の開発テーマとして,YOKOGAWA グループの新製品への適用を目的とした「シリコン半導体キーデバイスの開発」,グリーン生産方式を目指す「マイクロリアクタの開発」,個の医療・食の安全・緑や水の保全を目指す「遺伝子計測システムの開発」に取り組んでいる。これらは,いずれも技術開発本部の研究開発ビジョン“ 持続的成長を可能とする低炭素社会実現に貢献する技術の拡大”,“個を重視した生産,サービスへの社会構造変革を支援する技術の創出”を実現するための研究開発テーマである。


フォトニクス・テクノロジーへのビジョンと取り組み (PDF:205KB/2ページ)

  • 磯崎 克巳 *1

*1技術開発本部 先端技術研究所

戦略要素技術ドメイン「フォトニクス・テクノロジー」のアクティビティを概観する。光通信ビジネスへの取り組みは,ビジネスの加速を目的に活動母体が事業体に移っており,事業体からの報告「横河技報 Vol.52 No.3 フォトニクス特集号」を参照いただきたい。ここでは,もう一つのアクティビティであるフォトニックセンシングへの取り組みを概観し,次世代光通信用光学部品の特性を一括測定する掃引干渉測定技術,化合物半導体技術とMEMS 技術を融合し広い応用分野での活用が期待できる波長可変面発光レーザー光源,米国食品医薬局(FDA:Food and Drug Administrator)が提唱するPAT(Process Automation Technology)に適合するインライン対応高速分光分析計,及びDNA チップ用読取装置を紹介する。


IPv6 の制御ネットワークへの適合能力とその適用への取り組み (PDF:293KB/4ページ)

  • 宮田 宏 *1
  • 遠藤 正仁 *1

*1技術開発本部 ネットワーク開発センター

フィールドバスのもたらしたディジタル計装は計装の発展の可能性を広げた。ディジタル計装は,バス型からネットワーク型の通信形態へと進化していくことでそのメリットを最大限に活かすことができる。我々は,情報系システムをはじめいたるところに普及したInternet Protocol の最新版であるIPv6(Internet Protocol version6)をディジタル計装に適用するために評価を行い,課題を抽出した。さらに,それらの課題を解決すべく取り組んでいる。本稿では,これらの活動を紹介する。


フィールド機器レベル・ネットワークへのIPv6 の適用と仮想ワイヤリング技術 (PDF:313KB/4ページ)

  • 岡部 宣夫 *1

*1技術開発本部 ユビキタス研究所

企業活動のグローバル化やさらなる天然資源の稀少化や環境指向等の社会的環境の変化は,大量生産の形態に大きな変化を促すことが予想される。制御システムは,規模だけでなく機能においてもフレキシビリティとスケーラビリティをもって,この変化に備える必要がある。我々の目標は,最新のネットワーク技術を利用し,システムを,すべてのフィールド機器へのアクセスをコントローラ経由で行わなければならないというコントローラ・セントリック・モデルから開放することで,上記のフレキシビリティとスケーラビリティを実現することである。具体的には,独自のネットワークセキュリティ機構とプラグアンドプレイ機構からなる仮想ワイヤリング技術を提案する。この技術は,フィールド機器等,計算資源(CPU能力やメモリサイズ)が限定された機器に適応できることを特長とする。本稿では,仮想ワイヤリング技術の実現に向けた取り組みを紹介する。


FOA 動作機構の実現を支えるシステム資源管理 (PDF:327KB/4ページ)

  • 大野 毅 *1

*1技術開発本部 ユビキタス研究所

生産現場では,本来業務である狭義の生産活動に加え,省エネルギー,安全管理,生産の効率化の実現などを担う多様な付加業務を併せて実現することが要求されており,この傾向は強まっている。一方,生産現場に分散された様々な機器に現場で改造を加えて多様な要求に適応させることは難しく,多くの場合,新たな機器を既存システムに並存して配置するか,新たな要求に対応することを断念しているのが現状である。我々は機器に予め共通プラットフォームを組込み,ネットワークで連結させ,必要となった時に必要な機能をネットワーク経由で対象となる機器に配置することで,柔軟で成長できる付加業務の実行環境を実現する動作機構(Field Overlay Architecture: FOA動作機構と称する)を提案してきた。本論文では,この動作機構を実現するための重要な課題である現場機器のシステム資源の管理に注目した取り組みを報告する。


トラッキング・シミュレータの活用と将来のプラントオペレーションへの応用 (PDF:342KB/4ページ)

  • 仲矢 実 *1
  • 中林 暁男 *1
  • 大谷 哲也 *1

*1技術開発本部 計測制御研究所

当社では,世界で初めて,仮想と現実を融合するオンライントラッキング・シミュレータを開発した。本稿では,このトラッキング・シミュレータの活用事例と,将来期待されているプラントオペレーションへの応用について報告する。活用事例としては,未来に起こりうることを把握した上で最適な操作を実施する未来予測オペレーションと,従来定数として扱っていたモデルパラメータを,そのパラメータに関連する変数の関数として扱い,より精度の高いモデルを構築する手段について述べる。将来期待されているプラントオペレーションへの応用については,プラントモデルのプラントライフサイクルの中での広範囲に渡る利活用の重要性を説明し,その例として,製品の品質を維持しつつ,頻繁に発生する再スケジューリングを可能とする品質直接制御による生産管理への応用について述べる。


MEMS プロセスを用いた半導体リレー用3000V 級MOSFET スイッチ (PDF571KB/4ページ)

  • 小町 友則 *1
  • 高山 忠彦 *2
  • 今村 誠 *1

*1技術開発本部 デバイス開発センター
*2IA事業部 プロダクト事業センター

小型で高耐圧なレコーダ用スキャナ向けの半導体リレーを実現するために,半導体リレーの心臓部であるMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)スイッチング素子の3次元の終端構造を考案した。素子の周囲を垂直にエッチングし,この垂直なエッチング面に接合をつくり込むことで,世界で初めて3200 V耐圧のMOSFETをわずか1.7 mm角のチップサイズで実現した。この構造の加工にはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスを用いて,通常のドライエッチングの数十~数百倍である400 μmの深さの垂直なエッチングを行った。


マイクロリアクタシステム用微小流量センサ (PDF:339KB/4ページ)

  • 田中 仁章 *1
  • 寺尾 美菜子 *1
  • 阿久津 智美 *1
  • 磯崎 克巳 *1

*1技術開発本部 先端技術研究所

近年,医薬品やファインケミカルなど高付加価値機能性材料の少量生産プロセスの分野において,マイクロリアクタの技術が注目されている。当社でもこの技術に注目し,マイクロリアクタシステムの研究開発を進めてきた。その重要な要素技術開発の一つとして,液体用微小流量センサの研究試作を行なっている。マイクロリアクタシステムで生産される化学製品のプロセスでは,腐食性流体が取り扱われることが多いので,一般に市販されている微小流量センサを利用することは困難である。そこで,当社では,接液部を全てガラスで構成し,検出部を非接液として耐腐食性を高めた液体用微小流量センサの研究試作を行なった。本稿では,その微小流量センサの紹介を行ない,試作品の評価結果を報告する。


安全で確実な測定が可能な「遺伝子計測システム」 (PDF:526KB/4ページ)

  • 和気 仁志 *1
  • 福島 和久 *1
  • 田名網 健雄 *1

*1技術開発本部 遺伝子計測研究所

ヒトゲノム計画を契機として多くの遺伝情報が解明されつつある。これらを基に,遺伝子計測技術を応用した新しい世代の医療が始まろうとしている。医療分野では,病院や診療所などでの「個の医療」が実現しつつあり,変化し続ける生活・環境・産業などの分野では,食の安全,緑や水の保全など,健康な生活や環境衛生への期待も生まれてきている。本稿では,近い将来医療革命を起こすといわれる医療分野の現状,そして現在進んでいる生物情報の産業分野への応用を示し,そこで求められる遺伝子計測システムの技術的課題とマイクロ・テクノロジーとフォトニクス・テクノロジーを活用した横河電機の取り組みを紹介する。


MEMS 技術を用いた高速波長可変面発光レーザー (PDF:342KB/4ページ)

  • 蒲原 敦彦 *1
  • 野田 隆一郎 *2
  • 矢野 哲夫 *1
  • 齊藤 裕己 *1
  • 藤村 直之 *1
  • 西山 伸彦*3

*1技術開発本部 先端術研究所
*2IA事業部 プロダクト事業センター
*3東京工業大学理工学研究科電気電子工学専攻

シリコンのマイクロマシン技術を用いた高速波長掃引可能な新しい波長可変面発光レーザーを開発した。このレーザーは,一方の誘電体反射膜がない半VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)構造チップとマイクロマシン技術を用い作製した凹面形状の可動ミラーを持つSOI (Silicon On Insulator)基板から構成されており,2 つのチップは高精度な熱圧着により接合されている。SOI 基板のミラーが形成されたシリコンメンブレン構造とシリコン基板間に電圧を印加することにより,広い波長範囲を高速に掃引できるという特徴を持つ。試作したモジュールでは,モードホップフリーで応答周波数500 kHz 以上,波長可変範囲55 nm,サイドモード比60dB以上の良好な特性が得られ,これはVCSEL 構造のレーザーとしては世界トップレベルの性能である。


自社製高密度アレイセンサを用いたインライン対応高速分光分析計 (PDF:328KB/4ページ)

  • 小宮山 誠 *1
  • 村山 広大 *1
  • 伊賀 光博 *1

*1技術開発本部 先端技術研究所

ファインケミカル分野の筆頭である医薬業界では,米国食品医薬局(FDA:Food and Drug Administration)が安全と品質の向上を目的として提唱するPAT(Process Analytical Technology)により,高度センシング技術のプロセスラインへの導入が進もうとしている。製薬分野の特に製剤工程では粉体がよく扱われ,前処理無しに粉体の測定が可能である近赤外分光分析計がインライン向けセンシング機器の最有力候補である。粉体測定に必要な検出機構と高感度特性,ブレンダあるいは全数検査時に必要な高速測定特性を有する近赤外分光分析計の実現に向け,キーデバイス,要素技術を開発している。

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