横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

石油・ガスパイプラインの流路確保を支援するオンデマンドハイドレートリスク管理ソリューションの提供を開始

2018年8月27日発表

 横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:西島 剛志)は、石油・ガスのパイプラインのつまりを防止するための薬剤注入(ケミカルインジェクション)を最適化するオンデマンドハイドレート※2リスク管理ソリューションを開発、本日から提供を開始しますのでお知らせします。これは、海上石油プラットフォームのオペレータに対し、石油・ガスの生産レベルを維持し、プラント設備の状態を適切に保ち、また運転コストと停止期間を最小限に抑えることを支援します。この新しいソリューションは、当社の子会社であるKBC Advanced Technologies(以下、KBC)が有する、業界最先端のシミュレーションソフトウエアを、柔軟性・拡張性に優れた当社のSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)ソフトウエア上で統合し、オンデマンドで一元監視ができるダッシュボードを実現します。必要に応じて、ケミカルインジェクションメータリングバルブを組み合わせて薬剤注入までを自動化することができます。

オンデマンドハイドレートリスク管理ソリューション
オンデマンドハイドレートリスク管理ソリューション
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開発の背景

 ガスハイドレートは、ワックス、アスファルテン、スケール(酸化皮膜)などと共に、石油・ガスパイプラインの流路を阻害する重大な要因であり、とくに深水化が進む海上石油プラットフォームでは、流路の低温化によるハイドレート生成が深刻な問題となっています。ハイドレートは一定の温度・圧力状態で急速に形成されるため、深刻な生産レベルの低下、設備の損傷、安全性の低下や設備緊急停止となる恐れがあります。これを防ぐために、一般的には、薬剤を流路に注入し未然にハイドレード形成を抑えています。
 石油ガス海上プラットフォームでは、プラントの設計段階において、モデリングソフトウエア、シミュレーションソフトウエア、および操業前の現場試験データが利用され、最適なパイプライン網の設計と同時にハイドレート形成を防ぐために必要な、最適な注入量の計算も行われます。このシミュレーション結果は、操業中もハイドレートを防ぐための薬剤注入量の計算に利用されます。この注入量は、現場の専門家が定期的に見直しますが、パイプラインの状態をリアルタイムで確認できないため、オペレータは、操業に問題が生じないよう十分な余裕を持たせ、また現場特性の経時変化を補うために薬剤を過剰に投与する傾向があります。結果として、必要以上に薬剤が使用され、操業上の大きな費用負担となっています。
 より効率的で最適化されたハイドレートリスク管理ができるよう、当社は、KBCの2種類の高度シミュレーションソフトウエアMaximus®およびMultiflash®と、当社の大規模広域分散形アプリケーション向けのSCADAソフトウェアパッケージであるFAST/TOOLS™との共通ダッシュボードを開発したことにより、リアルタイムで実現できなかった流路確保が可能となります。

ソリューションの特長

 KBCのMaximusは、油井、チョーク弁、流路、およびさまざまな処理装置を含むパイプライン網の熱力学定常状態を構成部ごとにシミュレートするための専用ツールです。このソフトウエアは、パイプライン網の物理的状態を予測する生産予測および流路確保のツールとして用いることができます。一方Multiflashは、石油・ガスの流路確保および生産モデ リングのための圧力・体積・温度(PVT)ソリューションであり、そのカバー範囲の広さと優れた精度により業界標準ソフトウエアとなっています。Multiflashは、複雑な混合物にも純粋物質にも対応し、これらの相挙動と物理・輸送特性の評価に用いられています。とくに、石油・ガスの多相混合物のモデリングに優れています。
 プラント内、およびプラント間の統合SCADAシステムとして使用される、当社のFAST/TOOLSは、さまざまなデータソースやアプリケーションと連携し、それらの情報をダッシュボード上にまとめて表示します。海底の石油井戸元、パイプライン、および海上プラットフォーム上に据え付けられた温度や圧力センサーのデータはFAST/TOOLSによって集められ、連続的にまたは要求時に、KBCのシミュレーションソフトウエアに送られます。またFAST/TOOLSは、シミュレーション計算結果から、ハイドレートリスクのレベルと場所、ハイドレート生成曲線、KPI(重要目標達成指標)をダッシュボードに表示します。また、このソリューションは薬剤注入の推奨量を計算・表示することにより、オペレータに対し、リスクと費用のバランスが取れた運用を指示することが可能です。
 KBCのシミュレーションおよびモデリング技術と当社のフレキシブルなSCADAプラットフォームとを統合することによって、オペレータは、技術者の分析に頼ることなく、必要とする情報がオンデマンドで入手できるうえ、最適な薬剤の注入量をすぐに決定することができます。また、当社子会社のYokogawa TechInvent ASの高精度ケミカルインジェクションメータリングバルブFluidCom™(フルイドコム)を利用して薬剤注入の自動化も可能となります。このオプションにより、一貫したハイドレートリスク管理を実現することができます。

 オンデマンドハイドレートリスク管理ソリューションは、8月27日から30日、ノルウェーのスタヴァンゲル市で開催される石油ガス業界の世界的な展示会とカンファレンスであるONS 2018に出品されます。

※1.当社調べ(2018年8月27日時点)
※2.ハイドレート
低温・高圧下でガス分子と水分子が水和した固形物

主な市場

海上石油プラットフォーム

用途

石油・ガスのパイプラインのつまりを防止するための薬剤注入を最適化するオンデマンドハイドレートリスク管理

以上

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