
YOKOGAWAは、環境保全や人権に配慮したサプライチェーンの展開に注力してまいりました。今後は、さらに積極的にサステナブル調達を阻害するリスクを見つけ出し、お取引先様と連携し改善への道を歩み、サステナビリティ目標Three Goals 達成を目指す活動を強化します。
活動概要
1)活動方針
お取引先様向け YOKOGAWA グループ サステナブル調達ガイドラインを遵守し、「人権・労働」「安全衛生」「環境」「倫理」の4つの項目の実情の把握を中心に、お取引先様と共にサステナブル調達を阻害するリスクの特定を進めます。顕在化したリスクについては、お取引先様と協力し改善を行います。また、サステナブル調達に関する教育を、社内外に展開していきます。これらの活動は、指標(KPI)を定めて進捗を管理していきます。
2)活動体制
横河電機株式会社グローバル・ビジネス・サービス本部で、サプライチェーンにおける人権デューディリジェンス(DD)を基軸としたサステナブル調達の方針を定め、製品法規制統制機能・グループの事業体・関係会社と連携し、サステナブル調達活動を進めています。
グローバル・ビジネス・サービス本部では、お取引先様との取引開始時の確認事項などをグループ共通のルールとして制定し、事業体・関係会社が適切な調達プロセスを行っているかモニタリングしています。お取引先様と直接コンタクトする関係会社からは、取引情報のみならず購入品に関わるサプライヤー(含むTier1および非Tier1)の情報を収集します。また、取引情報に関しては、グループの関係会社間で統合されたシステムおよびその他の製品情報を利用し、事業体のビジネス情報も参考にグループとしてのデータ分析を行い、サプライチェーンのリスク評価に活用しています。
お取引先様の概要
1)お取引先様情報
YOKOGAWAグループでは、年間約1万社、70カ国以上のお取引先様と取引を行っております。2024年度のSAQの送付にあたり2023年度の全調達実績のテスクトップ調査を行いました。以下が国別の取引先数と取引金額割合です。
これらのお取引先様につきましては、原則、取引契約締結にあたり、サステナブル調達ガイドラインについての承諾を頂いております。
2)お取引先様とのコミュニケーション・教育
YOKOGAWAでは、拠点別に主要なお取引先様の経営層やご担当者の皆様と交流を行い、パートナーシップの強化に努めています。
例えば、日本国内では、お取引に対して定期的に「パートナーズデイ」を開催し、経営方針、事業計画、購買戦略などの説明を行うと同時に、「サステナブル調達ガイドライン」の補足ハンドブックを用いた環境方針やサプライチェーンに関わる法令の理解を浸透させる教育の場を設けております。また、プロバイダー別に、弊社で場所を提供し「部品展示会」や「技術セミナー」を開催し、お取引先様の取扱商品、市場動向、および部品動向などをYOKOGAWAグループの製品開発部署へ紹介することも行っています。
また、個別のお取引先様とのお打ち合わせの場において、上記のハンドブックを用いて、「人権・労働」「安全衛生」「環境」「倫理」などの重要性について説明をしています。
SAQ活動実績報告(FY2024)
YOKOGAWAでは、サプライチェーン全体の持続可能性向上を目指し、取引先様へのSAQ(Self-Assessment Questionnaire)を活用したCSRリスクの評価と改善活動を継続的に実施しています。
この取り組みは、2020年度~2022年度を第1期、2023年度からを第2期と位置づけ、以下のように進化しています:
第1期(2020–2022):人権デューデリジェンスを中心にCSRリスクの低減に注力
第2期(2023–):環境リスクなども視野に入れ、より広範なESG観点からサステナブル調達を推進
1)活動のPDCAサイクル
YOKOGAWAグループでは、毎年の全取引実績をもとに、以下の4つの観点から全取引先様の取引実績に基づくデスクトップ調査を行い、ESGリスクをスコアリングしています:
- 取引金額
- 取引先の所在国におけるリスク(例:腐敗度指数など)
- 購入品の特性に基づくサプライチェーンリスク
- 各国における取引先のビジネス上の重要性
この評価の結果のスコアの大きい600のお取引先様を対象に、3年間にわたってSAQを送付し、回答内容を分析します。この600のお取引先をさらに、必要に応じて改善を要請し、ヒアリングを実施することで、PDCAサイクルを回しながら継続的な改善を図っています。
このSAQを活用したサステナブル調達の推進のサイクルを以下に図示しています。
2)SAQ実施の流れ
上図のPDCAサイクルの従ってSAQの送付・回収・フィードバックを行い、さらに、必要な場合には、翌年に追跡調査を行うフローを実施しています。各フローを具体的に説明します。
SAQの送付:
前年度に第2期のSAQを実施されたお取引先様を除き、デスクトップ調査に基づいてESGリスクスコアが高い200社のお取引先様にSAQを送付します。このプロセスを2023年から2025年の3年間継続することで、Tier-1 における重要なサプライヤーの総数(合計600社※)にSAQを送付する計画です。
SAQの回収:
お取引先様には、YOKOGAWAグループに納品される製品を製造している事業所の状況について、SAQにご記入いただき、ご提出をお願いしています。
SAQの分析:
ご提出いただいたSAQの全ての質問項目について内容を確認し、詳細に分析し、リスクの特定とYOKOGAWAグループのサステナブル活動の評価をします。
フィードバックと改善のお願い:
分析結果は、「人権・労働」「労働安全衛生」「環境」などの分野ごとに、回答スコア、全体平均スコア、改善ポイントを記載したフィードバックとしてお返しします。重要な事業所については、第三者機関による現地ヒアリングを実施し、課題の特定と改善提案を行います。下図は、フィードバックの紙面の抜粋です。
追跡調査:
改善が必要と判断されたお取引先様には、追跡調査として翌年に再度SAQの実施をお願いしています。
FY2024の実施実績:
FY2024のSAQのサマリーは以下となります。
- 机上評価(tier-1 100%実施)※
- Tier-1 サプライヤーの総数(お取引先様の数): 11937※
- SAQ送付先 お取引様数:203
- 提出されたSAQシートの数:153(tier-1 130 非 Tier-1 23※)
- 実地評価(回答を頂いた事業所の現場での第三者によるヒアリング) 1事業所
- SAQ回答結果に基づく直接の対話 1事業所
- 追跡調査依頼 16事業所(返却率 100%):
※のデータは、第三者保証を受けています。詳しくは、下記の声明書をご参照下さい。
サステナビリティデータ独立保証声明書| YOKOGAWA
3)SAQにおけるKPIモニタリング
SAQに関わるデータを記録・分析し、改善状況を数値化しモニタリングをしております。
第1期から第2期への改善:
2020年(第1期)からのSAQの回答および弊社からの依頼に対する反応は継続して記録し、個々のサプライヤーの回答の変化、全体平均のスコアの傾向などを分析しています。
第2期では、お取引先様とのエンゲージメントを重視し、第1期と第2期で共通する項目「人権・労働」「労働安全衛生」の項目について、第1期・第2期ともに重要サプライヤーとしてSAQの回答を頂いた事業所のパーセンタイルの値の平均値を比較しています。(質問が異なるので、スコアそのものの比較ができないため、パーセンタイルの値で比較をしています。)
パーセンタイルは、回答企業における順位を示し、その事業所よりも低いスコアの事業所があるのかを示しており、数値が高くなれば、改善があったと推測することができます。
追跡調査におけるスコアの改善:
2023年の結果に基づき、2024年の追跡調査を16の事業所に対して実施し100%回収しました。各分野におけるSAQ回答の平均スコアの改善を確認しました。
リスク分析について
YOKOGAWAグループでは、SAQの回答、その他の情報をもとに、リスク分析を行っています。
1)SAQのスコア分析
SAQの回答および回答提出に関する態度を、詳細に分析しており、平均を算出するだけでなく「人権・労働」「労働安全衛生」「環境」等の分野別のスコア分布弊社からの依頼に対する反応は継続して記録し、個々のサプライヤーの回答の変化、カテゴリー別、全体平均のスコアの傾向などを分析しています。
以下に、提出頂いた事象所の総合スコアのヒストグラムを示します。また、公開はしておりませんが項目別、回答別に傾向を把握し、リスク評価をおこなっています。
毎年、総合評価のCランクの事業所は、高リスクサプライヤーとして追跡調査などを行っています。2024年度に高リスクサプライヤーと見做した19の事業所には、2025年8月に追跡調査依頼を行います。
また、環境に関する設問で、GHG排出量削減の取り組みを行っていると回答頂いたお取引先様とのヒアリングの場を設定し、Scope3の削減のための1次データ取得に向けた協力をお願いしております。
2)SAQ以外の調査について
お取引先様へのアンケート調査のみならず、定期的に重要な法令に関わるエンティティリストにYOKOGAWAグループのお取引先様が掲載されていないかなどを確認しています。確認したエンティティリストには、お取引先様の企業名はありませんでした。
サステナブル調達実行に向けた教育
1)調達人財育成プログラム
YOKOGAWAグループでは、調達組織を統括し、調達人財育成体制を構築しています。分野別の130の知識項目を設定し、国内外の関連会社を含めたすべての調達部門の調達担当者に対し、達成度を確認することで知識レベルの年度ごとの推移の確認をおこなっております。2023年と2024年のレベル比較データは以下のようになっております。
2)グループ調達メンバーによるサステナブル調達方針の確認
YOKOGAWAグループの調達統括拠点の代表メンバーで毎年会合を行っています。2025年5月の会合では、サステナブル調達の課題についてワークショップを開催し、各国の施策の情報共有を行いました。
3)下請法関連
令和6年11月の運用基準改定、令和8年1月の下請法改定など、法令の動きをとらえ、国内グループ会社でタスクフォースを組み活動を行っております。下請法の講習会は、毎年テーマを変えたライブ配信に加えてオンデマンドでも聴講できるプログラムを提供しています。今年度も、下請法改定を踏まえた法令理解をメインとした法務のプログラム、実際のオペレーションに即した研修プログラムを準備し、意識向上のみならず、思わぬ法令違反の防止に努めています。また、各部署•グループ各社に調達責任者を設置し、下請法に関する情報の共有を図り、遵守体制を構築しています。
4)外部との連携
サステナブル調達の推進のため、YOKOGAWAグループとしての活動のみならず、JEITA,GCNJの活動に参画し、ツール開発・啓蒙活動を進めております。
5)中小企業へのサステナブル調達(人権デユーデリジェンス)の働きかけ
JEITAのCSR委員会の活動タスクフォースで、中小企業向けの人権デユーデリジェンス実施支援のためのサステナブル調達パートナーシップ構想検討TF(Sustainable Procurement Partnership)を進めております。横河電機は、このメンバーとして2024年度に、中小企業の人権方針策定支援プログラムとなるSSPトライアルの実施に参画いたしました。