YOKOGAWAと生物多様性
2022年に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組では、2030年までに、陸と海の少なくとも30%以上を健全な生態系として効果的に保全する目標が掲げられました。生態系の保護・回復・持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営を目指す上で、企業が生物多様性に与える影響を開示することが推奨されるとともに、生物多様性に与える影響を考慮することが求められています。
YOKOGAWAはグループ環境方針で生物多様性の課題に取り組むことを定め、社会貢献活動の一環として自治体や地元のNPOなどと連携して、地域の生物多様性の保全活動を行ってきました。また、バリューチェーンの活動全体を通じて、生物多様性に与える影響を評価し、保全していく活動を進めています。お取引先様にも生物多様性に配慮した取り組みの推進をお願いしています。中期経営計画GS2028では、生物多様性をめぐる動向をビジネス機会として捉え、再生可能エネルギーの普及、水環境ビジネスなどを加速させ、事業を通じて生物多様性に貢献していきます。
YOKOGAWAは、2024年10月にTNFD※1のフレームワークに沿った開示を宣言する「TNFD Adopters※2」へ登録しています。
※1 TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures):企業が自身の事業活動による自然資本や生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、情報を開示するための枠組みを提供する国際的なイニシアチブ
※2 TNFD Adopter:2025年度までに、TNFD提言に基づく情報開示を行う意向を表明した企業や団体のこと
ガバナンス <自然関連のリスクと機会に関するガバナンス>
取締役会の役割
取締役会は、生物多様性を取り組むべき課題の1つとして認識し、リスクと機会の管理体制の整備に関する基本方針を定め、その体制が有効に運用されていること、およびサステナビリティの課題へ適切な対応がなされていることを監視・監督しています。
経営執行の役割
執行役は、事業戦略や計画の立案に際し、生物多様性を含む影響をリスクと機会の両面から考慮しています。生物多様性に関する目標を含む、サステナビリティ目標の達成に向けて取り組んでいます。
代表執行役社長の諮問機関となるサステナビリティ委員会では、サステナビリティ視点に特化した議論を行い、生物多様性の諸課題を対象に含むマテリアリティ分析を実施しました。
戦略 <自然関連のリスクと機会がもたらす事業、戦略、財務計画への影響>
生物多様性保全への取り組み方針
YOKOGAWAはグループ環境方針で生物多様性の課題に取り組むことを定めて生物多様性の保全活動を推進しています。生物多様性は社会の持続可能性の基盤です。YOKOGAWAはお客様、従業員、お取引先様、パートナー、事業所の近隣地域住民の方々を含むステークホルダーの皆様とともにバリューチェーン全体を視野に、地域の特性に配慮して生物多様性保全に取り組みます。事業活動に伴う負の影響を低減するとともに、ビジネスを通じた生物多様性への貢献を拡大することで、地域社会のより良い環境づくりに貢献します。
生物多様性保全への行動方針
- 事業を通じた生物多様性への貢献
YOKOGAWAが持つ最先端の技術を活用した製品・ソリューションサービスの提供により、お客様の課題を解決することで、生物多様性に貢献します。 - 地域と連携し、地域の価値を向上
行政やNPOと連携した取り組みを通じて、地域の価値を再認識するとともに、地域の価値を向上させていきます。 - 社員に教育機会を提供し、啓発する
生物多様性に関する社員向けのセミナーやイベントなどの啓発活動を実施していきます。 - 事業所における生物多様性保全に配慮
事業所内の緑地管理などを通じて、生態系に配慮し、事業所を運営していきます。
事業活動と生物多様性の関係性
- YOKOGAWAの事業活動が生物多様性に与える影響
YOKOGAWAのバリューチェーンにおいて、調達から製造までのプロセスでは、採掘による土地改変、製品の提供から使用までのプロセスでは、GHG排出による温暖化や大気汚染、廃棄のプロセスでは、埋立地による土地利用や水質汚染などの影響を与えるリスクがあります。事業所の運営においては、排水、GHG排出による温暖化、廃棄物、埋立や土地改変などにより、各地域の生物多様性に影響を与えるリスクがあることを認識しています。 - 自社操業におけるLEAPアプローチ※3分析
YOKOGAWAは、バリューチェーン全体を対象に事業活動と生物多様性の関連性に関する評価を行っています。2023年度は自社操業における依存と影響ならびにリスクと機会をTNFDのLEAPアプローチに沿って分析しました。
※3 TNFDが推奨する、企業の自然資本に関する依存・影響・リスク・機会を特定・評価・管理するための統合的な手法。Locate、Evaluate、Assess、Prepareの4つのフェーズで構成され、TNFDの開示推奨に沿った情報開示を支援するもの
Locate:自然との接点の特定
自社操業における自然関連リスクを特定するため、ENCORE※4を活用しました。電子機器製造事業(ENCOREではElectronic Equipment & Instrumentsに該当)においては、地下水・地表水の依存があり、土壌汚染・水質汚染の影響を与える可能性があることが分かりました。次に、オフィス・生産拠点を対象にAqueduct※5を活用して、水関連リスクがあるエリアに立地している拠点を特定しました。
※4 ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure):経済が自然にどのように依存しており、影響する可能性があるのか、環境の変化がどのようにビジネスのリスクを生み出すかを可視化するためのツール
※5 Aqueduct:世界の地域毎の水リスクを、物理(量・質)・規制・評判の各リスクの観点から評価するツール
Evaluate:依存・影響の評価
Locateで特定した水関連リスクがある拠点に対し、水関連リスクの評価を行っています。さらに評価内容をもとに、YOKOGAWAの環境パフォーマンスデータを用いて、リスクの大きさを評価しています。
Assess:リスク・機会の評価
YOKOGAWAでは取水量の目標を設定し、取水量のモニタリングや水資源を効率的に利用するための施策を強化しています。生産工程の改善や、工場やオフィスに節水システムを導入するなど取水量削減に取り組んでおり、水使用による生物多様性関連リスクは小さいと判断しています。
Prepare:対応と開示
自然への依存・影響を評価し、YOKOGAWAの自社操業が生物多様性に与える影響は比較的少ないと評価しました。しかし、YOKOGAWAは多様な側面で自然に依存し、生物多様性は、直接的また間接的に事業に影響を及ぼしていることから、生物多様性は重要な課題と認識し、今後もバリューチェーン全体の生物多様性への影響評価を実施し、リスクへの対応を検討していきます。
リスクと影響の管理 <自然関連リスクの特定、評価、管理方法>
生物多様性は、直接的また間接的にYOKOGAWAの事業に影響を及ぼしていることは認識しており、組織全体のリスク管理対象に含まれます。グループの各組織は、リスクを洗い出し、その大きさと発生可能性を評価するとともに対応策と目標を立案・実行し、重要なリスクはリスク管理委員会で、定期的にモニタリングしています。またYOKOGAWAでは、「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」のフレームワークに則り、マテリアリティ分析を行っています。「欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)」で定められている開示要求項目 ESRS E4「生物多様性と生態系-生物多様性へ直接的な影響要因」の気候変動、土地改変、淡水・海水の使用、大気・土壌・水質汚染などが、リスクまたは機会の側面でYOKOGAWAのビジネスと関係することを認識しています。
指標と目標 <関連する自然関連リスクと機会を評価・管理するための指標と目標>
影響要因 |
指標 | YOKOGAWAの取り組み指標 |
2030年度(2050年度)目標 |
2024年度実績 |
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気候変動 | 温室効果ガスの排出 | 温室効果ガス排出量(Scope1,2)(基準年2019年度) | 100%削減 | 41.7%削減 |
温室効果ガス排出量(Scope3)(基準年2019年度) | 2030年度 30%削減※6 / 2050年度 100%削減 ※6 購入した商品とサービス(カテゴリー1)、および販売した製品の使用(カテゴリー11)を対象にしています。 |
3.8%削減※6 | ||
エネルギー使用量(売上原単位・基準年2023年度) | 30%削減(平均5%改善/年) | 14.3%削減 | ||
汚染・汚染除去 | 廃棄物の発生と処理 | 廃棄物発生量(実績値のみ) | ー | 前年度比 5.4%増加 |
温室効果ガス以外の大気汚染物質総量 | 揮発性有機化合物(VOC)排出量(実績値のみ) | ー | 前年度比 23%削減 | |
資源の利用・補充 | 水不足の地域からの取水量と消費量 | 事業所の取水量(売上原単位・基準年2023年度) | 20%削減 | 4.8%増加 |
生物多様性へ貢献する取り組みの指標
影響要因 |
指標 | YOKOGAWAの取り組み指標 | 2030年度目標 |
2024年度実績 |
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気候変動 | 温室効果ガスの排出 | お客様事業のCO2排出抑制量 | 2018年度-2030年度累計 10億t-CO2 | 2018年度-2024年度 4.3億t-CO2 |