横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

Vol.65 No.2 (2022)

No.2 技術報告 特集

巻頭言 脱炭素化対策実現のための技術イノベーションへの期待 (PDF:529KB/2ページ)

  • 田中 謙司*1

*1 東京大学大学院工学系研究科 准教授


管表面の温度測定に基づく管内の析出物の厚さおよび形状の推定 (PDF:1272KB/6ページ)

  • 伊藤 俊平*1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター 企画管理部

   我々は管内の析出物の厚さと形状を管表面の温度測定によって推定する手法を開発した。管内の液温が周囲温度より高い場合に管内に析出物が生じると,管内から管外への熱の流れが析出物により妨げられるために管表面温度が低くなる。したがって,管表面の温度を測定し,管内から管外への熱の流れについての熱方程式を解くことで析出物の厚さを推定することができる。さらに我々は,複数点で管表面温度を測定することで,管内の析出物の形状 を推定するアルゴリズムを開発した。また,このアルゴリズムを用いて析出物の形状と厚さが推定できることを2つの実証実験によって確認した。一つ目の実験では,形状の異なる管内模擬析出物を作成し,管表面温度からその形状を精度よく推定した。二つ目の実験では,析出物の一つであるワックスを管内に析出させ,管表面温度からワックスの厚さの経時変化を推定した。その推定厚さは差圧やワックス質量から計算した厚さと一致した。


大電流および交流/直流の測定が可能な小型コアレス電流センサの要素技術開発(PDF:2134KB/6ページ)

  • 竹中 一馬*1
  • 寺尾 美菜子*1
  • 野口 直記*1
  • 小河 晃太郎*2

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター センシング研究開発部
*2 マーケティング本部 イノベーションセンター DXデザイン部

   電気自動車内の電池やモータ付近の密集したエリアに配置された導線をクランプし,1000 A レンジの大電流および直流から数MHz の電流を計測するための小型のコアレス電流センサを開発している。コアレス化により大幅 な小型化が可能である一方,導線からの電流に由来する磁界強度がセンサの位置により変化する,外部環境や隣接電流による雑音磁界の影響が大きい,といった課題が生じている。コアレス電流センサの実現に向けた磁気コアの機能を補填する技術として,導線の位置を推定するアルゴリズムを用いた電流センサと,雑音磁界をキャンセルするための磁気シールドを用いた電流センサを開発した。本稿ではこれら技術の概要と検証結果について示す。


ブリルアン散乱光を用いた分布型光ファイバセンサによる高温度測定技術(PDF:852KB/4ページ)

  • 熊谷 芳宏*1
  • 手塚 信一郎*1
  • 松浦 聡*1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター センシング研究開発部

   シリカガラスを材料とした光ファイバは,融点が1,000°C 以上と高く,高温環境下でも使用が可能であるため高温度センサとして注目されている。光ファイバを用いた分布型温度センサとしては,ラマン散乱光を用いたRaman Optical Time Domain Reflectometry(ROTDR)が既に実用化されている。しかしながら,光ファイバの伝送損失が高温環境下で変化するなどの問題から,光の強度比で測定するROTDR では,300°C 以上の高温度を長期に精度良く測定することは難しい。一方,ブリルアン散乱光を用いた分布型温度センサは,入射光とブリルアン散乱光の周波数差から温度を算出するため,光ファイバの伝送損失変化の影響を受けにくく,300°C 以上の高温度測定の実現が期待できる。本報告では,ブリルアン散乱光を用いた光ファイバセンサの高温度測定技術について説 明し,その実現可能性を見極めるための取り組みについて紹介する。


DNAマイクロアレイを用いた飲食料品・医薬品分野向け微生物迅速検査システムの開発(PDF:1398KB/6ページ)

  • 平川 祐子*1
  • 前村 知佳*1
  • 田口 朋之*1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター ライフ研究開発部

   飲食料品・医薬品分野における微生物検査には培養法が一般的に使われているが,その検査時間や手技・手法の課題を克服するような技術革新が望まれている。我々は,迅速・簡便な微生物検査システムを開発するため,基盤 技術となるシグナリング方式を採用したDNA マイクロアレイを開発してきた。本稿では,検査システムとしての性能向上を目的としてゲノムDNA 抽出工程および遺伝子増幅工程に新技術を導入し,DNA マイクロアレイを用い た汚染菌のカテゴリ別判定が可能であることを示した。微生物検査が迅速化されることにより検査結果の素早いフィードバックが可能になり,様々なメリットが期待できる。また,検査の工程や操作の簡略化により,専門的な知識や手技を要しない微生物の迅速検査法が普及することが期待される。


脱炭素社会の実現に貢献するYOKOGAWAの取り組み(PDF:3626KB/6ページ)

  • 小野寺 湧紀*1
  • 上田 仁美*1
  • 山下 貴大*1
  • 神野 豊広*1
  • 張 仁又*1
  • 林崎 浩典*2

*1 横河ソリューションサービス株式会社 ソリューションビジネスコンサルティングセンター エネルギーマネージメントビジネス部
*2 横河電機株式会社 マーケティング本部 イノベーションセンター DXデザイン部

   気候変動問題対策の重要性が増すなかで,脱炭素社会の実現に向けた脱炭素経営,環境会計,ESG(Environment,Social, Governance)投資などへの関心が高まり,企業にはサプライチェーン全体のCO2 排出量の算出や削減が求められている。企業活動による二酸化炭素排出量の開示と削減目標の設定,また企業が消費する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指すイニシアチブ,すなわち,「RE100」への取り組みが加速している。本稿では,脱炭素に関する社会の変化を概説したあと,YOKOGAWA が行っている自治体や工場などに対する脱炭素に向けた提案事例,およびYOKOGAWA が自社工場で生産した半導体の再生可能エネルギー比率を,ブロックチェーンを活用してトラッキングする取り組みを紹介する。


カーボンニュートラル実現に向けた再生可能エネルギーおよび蓄電池の導入(PDF:2145KB/4ページ)

  • 東條 天真*1
  • 上本 達也*1
  • 鳥越 花奈*1
  • 石川 結衣*1
  • 大津 和樹*1
  • 松下 武司*1

*1 横河ソリューションサービス株式会社 ソリューションビジネスコンサルティングセンター エネルギーマネージメントビジネス部

   2050 年カーボンニュートラル目標の達成に向け,蓄電池が最重要技術として注目されている。蓄電池は,再生可能エネルギーの出力変動や電力需要変動に対する安定化対策に不可欠である。また,企業や製品の価値向上を目的としたエネルギーマネジメントにおいて,再生可能エネルギー電源と組み合わせて使用する重要なアイテムの一つとなっている。これらの背景から,YOKOGAWA はエネルギーマネジメントにおける蓄電池の活用提案を行いつつ,蓄電池システムメーカのパートナーとなり,蓄電池の価値向上に向けた提案活動を進めている。本稿では,そのYOKOGAWA が提案しているソリューションと,お客様企業の価値向上のための活動事例について紹介する。


現場AIソリューション「設備・品質らくらく予兆検知」の開発(PDF:1479KB/6ページ)

  • 都築 純*1
  • 今村 吉宏*2
  • 片山 裕矢*1
  • 坂上 正徳*1

*1 横河プロダクト本部 コントロールセンター エッジソリューション統括部 商品企画部3課1グループ
*2 横河プロダクト本部 コントロールセンター エッジソリューション統括部 商品企画部3課

   横河電機は,AI を用いてお客様のプラントにおける様々な課題を解決してきた。これらの技術と経験を活かし,ハードウェア上で動作する3 つのAI 製品(GX/GP 未来ペン,GA10 違和感検知,Python 対応e-RT3 Plus)を2020年に同時リリースした。さらに,装置のバッチプロセス終了後に設備の劣化や製品の品質低下の度合いをヘルススコアとして数値化できるヘルスモニタ機能,および変動するプロセス値の異常をリアルタイムに検知するためのプロファイル機能を開発し,これらの機能を「設備・品質らくらく予兆検知」として2022 年にリリースした。本稿ではその概要と,お客様データを利用したAI アルゴリズムの実証結果について述べた後,今後の展望を紹介する。


 


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