2024年4月26日発表
横河電機株式会社の最新1細胞分析ソリューションである「Single Cellome™ System SS2000(シングル・セローム・システムSS2000)」が、イギリスのサリー大学の研究者によるシングルセル(単一細胞)リピドミクスという新しい分野における画期的な研究に使用され、このたび、その論文が注目度の高い学術誌「Analytical Chemistry」に掲載されました※1。「SS2000」は、当社の独自のマイクロレンズ付ニポウディスク方式共焦点顕微鏡技術を搭載したライブセルイメージング装置であり、さまざまな最先端のライフサイエンス研究を支えています。
写真1 Single Cellome System SS2000
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リピドミクスとは、人体の恒常性の維持から重大な疾患の発症に至るまで、あらゆる生命活動によって生じる特異的な脂質分子の変動を網羅的に解析する研究です。従来、リピドミクスは、複数の細胞をまとめて前処理し、調製された試料(バルクサンプル)を用い、リピドーム※2の平均データを取得するバルクリピドミクスによって行われてきました。しかし、この手法では個々の細胞の微妙な違いを識別することや細胞間の相互作用によって引き起こされるリピドームの空間的または時間的な差異を明らかにできないという課題がありました。
これに対し、シングルセルリピドミクスは、個々の細胞ごとにデータを取得し、脂質組成を分析する新しい分析手法で、細胞間差異に加え、空間的・時間的差異の探索が可能です。本手法はがんなどの疾患のより包括的な理解を促進する鍵となるものです。複数の細胞をまとめて剥離、懸濁してから細い流路を通して単離する手法は細胞に大きなストレスを与え、細胞の脂質構成が変化してしまうケースがあるため、いかに細胞本来の状態を維持しつつ単一細胞をサンプリングするかという点が、研究者が直面している課題の一つです。YOKOGAWAの「Single Cellome System SS2000」は、生きた細胞の観察が可能な共焦点イメージング技術の活用により、懸濁工程を通さず、細胞へのストレスを最小限に抑えた、単一細胞丸ごとおよび細胞内の特定の部位や領域の全自動サンプリングを可能にします。
「SS2000」のアプリケーションの一例
サリー大学の論文は、シングルセルリピドミクスの分野において「Single Cellome System SS2000」を用いたサンプリングが、他の単一細胞分離技術よりも大幅に優れていることを示しました。細胞を培養しながら、共焦点イメージング画像に基づいてサンプリングできるYOKOGAWAの技術は、細胞本来のリピドームの状態を維持した分析を可能にし、これによって他の技術では実現不可能なワークフローが構築できるようになりました。「Single Cellome System SS2000」で得られた位置情報・形態情報を生かした研究は、リピドミクス分野における革新的な前進であり、がん、糖尿病、心血管疾患の代替療法や治療法における飛躍的な進歩につながると期待されています。
YOKOGAWAは今後も新しい価値や最先端の技術をお客様に提供できるよう積極的に取り組み、すべての人の豊かな生活(Well-being)に貢献していきます。
※2 リピドーム:細胞中の脂質の総体。
以上
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