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OpreX Laboratory Information Management System導入事例 ~需要が拡大する高品質なセルロース製品を効率的に製造するBracell~

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Bracell

概要

ブラジルのパルプ産業

ブラジルは世界第二位のセルロース生産国で、その原料の一つとしてブラジル国内で良く育つユーカリが用いられています。ブラジルの土壌と気候はユーカリの栽培に適しており、ユーカリはCO2を吸収しながら7年ほどで育ちます。毎年区画ごとに伐採し新しい苗木を植えれば、またどんどんとユーカリは育ちます。循環型でサステナブル、かつコスト競争力の高いビジネスモデルと言えます。
また、パルプ産業は、ユーカリの栽培、ケミカル、バイオ技術、運輸など幅広いサプライチェーンを構成しているのが特徴で、地域の雇用や経済にも大きく貢献しています。

Bracell社について

2010年に設立されたブラジルのBracellは、世界有数の可溶性セルロースおよび漂白ユーカリセルロースの製造メーカで、自社の森林で育てるユーカリを原料として、服飾、医薬品や食品、印刷インク、不織布等幅広いプロダクト向けの高品質な繊維を製造しています。ブラジル国内で生産されたパルプ製品は、アジア、ヨーロッパ、およびアメリカ合衆国などに広く輸出されています。

プロジェクトのサマリ

近年、環境への配慮として世界的なカーボンニュートラルの動きがあります。2019年、Bracellでは生産力を大幅に拡大するために、最新の技術を備えた新しいパルプミルを建設する「Project Star」をスタートさせました。増大する製品ポートフォリオと生産量、およびそれらへの高い品質要求に対応するため、BracellはYOKOGAWAの品質情報管理システム(OpreX Laboratory Information Management System、以下OpreX LIMS)を導入することを決定しました。YOKOGAWA South America(YSA)は古くからブラジルの紙パルプ産業のお客様とのつながりを持っており、プラントにおける製造プロセスにも深い知見を持っていたためです。

 

お客様の課題とソリューション

プロジェクトの背景

世界的なカーボンニュートラルの動きを受け、プラスチック製品の紙への置き換えが急速に進んでいます。Bracellにも、より高品質なパルプ製品を生産することが求められ、製品のポートフォリオと生産量が急速に拡大していました。
パプル製造プラントでは、原材料や中間製品および最終製品に対し、必要なタイミングで品質検査を行うことで製品の品質管理を行っています。原料であるユーカリにも個体差があるため、中間品質のチェックと製造部門へのフィードバックは欠かせません。しかし、従来の紙やMS-Excelを用いたやり方では、次のような課題がありました。

  • 検査結果を定型フォームから手入力しなければならず、手間がかかり、担当者の入力し忘れによる記録漏れが起こることがあった。
  • 検査業務の進捗管理が難しく、関連する部門間で情報を共有するのに時間がかかった。
  • 検査結果の検索、トレーサビリティに課題があった。

そこで、Bracellはこれらの品質検査業務を自動化し生産性を向上させるために、YOKOGAWAのOpreX LIMSを導入することを決定しました。これにはオペレーションコストを削減し、競合優位性を高めるねらいもありました。

サステナブルなユーカリ畑に囲まれたBracellのプラント
サステナブルなユーカリ畑に囲まれたBracellのプラント

品質情報管理システムとは

最終製品の品質を高めるために、プラントでは品質管理基準で定めた手順に則って、原材料、中間製品、および最終製品のサンプリング検査が行われています。

サンプリング検査のイメージ
サンプリング検査のイメージ

OpreX LIMSはそれらの検査業務をワークフローとして管理し、関係部門間で検査に関する情報を共有することができるソフトウェアです。製造部門へのサンプリング指示、サンプル検体に関する情報(ロット情報、採取日時、採取者氏名等)の管理、検査部門による検査結果の登録などを行うことができ、それらの情報をもとに出荷判定が行われるほか、関係部門間で検査の進捗や結果を確認したり、製造部門へのフィードバックを行うなど、さまざまに活用することができます。これにより業務効率、生産効率、および製品品質を向上することが可能です。

OpreX Laboratory Information Management Systemによるワークフローの標準化
OpreX Laboratory Information Management Systemによるワークフローの標準化

また、ERP(基幹システム Enterprise Resources Planning)やMES(製造管理システム Manufacturing Execution System)などの上位システムと連携し、品質情報を全社で共有したり、製造部門やロジスティクスと連携したより効率的な品質管理体制を構築することも可能です。

OpreX LIMS for Bracell

BracellのOpreX LIMSは、基幹システムSAPおよびPIMS(プラント情報管理システム Plant Information Management System)と連携しています。また、新プラントでの大規模な生産と標準化された品質検査をスムーズかつ漏れなく行い、検査部門の業務負荷を低減するために、顧客の要望に応じたさまざまなカスタマイズがなされています。

  • 検査頻度の自動調整
    直近ロットの検査結果に応じて、OpreX LIMSが後工程での検査周期を自動的に変更します。品質に課題がある場合は検査頻度が増やされるなど、適切な検査周期が設定されます。
  • 検査頻度の異なる検査の確実なスケジューリング
    検査部門に持ち込まれる数多くのサンプル検体には、検査頻度の異なる製品グループがありますが、これらを確実に検査するため1時間毎に実施すべき検査対象を抽出し、担当者に通知します。
  • 品質等級の判定サポート
    品質判定者が行う判定作業を容易にするため、検査結果をもとに製品の品質等級を示し、判定をサポートします。
  • 製造部門との連携
    製造部門とのシステム統合により、製造中のみ検査依頼が作成され、何らかの理由で製造が一時停止している場合は、検査依頼は行われません。検査部門は、実際の製造状況や各製造ラインでどの製品が作られているかを、OpreX LIMSを用いてリアルタイムに確認することができます。
  • 過去の検査結果を用いた原材料のロットスキップと検査頻度の最適化
    原材料入荷時にSAPに入力されたデータをもとに、その原料を今すぐ検査する必要があるか、もしくは検査をスキップして後工程で検査すれば良いかを判断し、適切なタイミングでの検査依頼を作成します。また、原材料ごとの品質検査結果を、あらかじめ設定してある合格基準と照らし合わせ、実施すべき検査頻度を自動的に最適化します。たとえば、原材料の品質が良好な場合はいくつかの検査をスキップすることができ、そうでない場合や新たに使う原材料の場合は検査のタイミングを増やすなど、検査頻度の調整が適切に設定されます。

OpreX LIMSの画面例
OpreX LIMSの画面例

OpreX LIMSのインプリ

YOKOGAWAとブラジルのパルプ産業のお客様との関わりは長く、統合生産システムCENTUMシリーズなどの納入実績は数多くありましたが、品質情報管理システムのプロジェクトはYSAにとって初めての経験でした。プロジェクト開始当初、YOKOGAWAとBracellは何度もミーティングを行い、会話を通じて互いへの理解を深めていきました。Bracellは自身の工場がどのように製造を行っているかや、検査担当者が具体的にどのような業務を行っているか、また品質情報管理システムに何を期待しているか、どのように業務を改善していきたいかを詳細に説明し、YSAはそれらを満たすための最適な仕様を検討し、Bracellに提案しました。そのプランを両者でさらにブラッシュアップしながら最終仕様が決められました。
OpreX LIMSの基本部分の実装と、カスタマイズ機能の開発は、新プラント建設に合わせてフェーズを分けて実施されることとなり、システム構築が進められました。

これらのプロジェクト活動のほとんどは、Covid-19の影響を受けました。プロジェクト開始当初こそお客様サイトを訪問してのミーティングができましたが、その後はほとんどオンラインミーティングでのコミュニケーションとなりました。実際にシステムと分析機器を連携させる作業は、電話で連絡を取り合いながらBracellのITチームが行いました。日本のYOKOGAWA本社にいるスペシャリストは、時差のあるなかオンラインでYSAのエンジニアをサポートしました。
このような状況のもとでしたが、2021年3月、BracellとYOKOGAWAの密な協力により、OpreX LIMSの立ち上げに成功しました。

 

導入の効果

OpreX LIMSの導入により、Bracellには次のような導入効果がもたらされました。

  • 検査ワークフローの自動化
    高レベルシステムとの統合により、原材料から中間・最終製品まで、検査頻度の異なる多種多様な検査のワークフローを自動化・管理することが可能となり、各検体の情報や検査結果を正確に登録・管理することができるようになりました。
  • 他部門への品質情報共有の手間削減とスピード向上
    紙やMS-Excelへ検査結果を手動で転記する手間が軽減。多くの検査結果は、分析機器から自動取り込み可能となり、タイムリーな情報共有が可能となりました。
  • ヒューマンエラーの防止
    検査依頼を1時間ごとに通知することで、点検忘れなどのヒューマンエラーを回避し、必要な検査を漏れなく実施できます。これは、検査責任者の負担が軽減されることにもつながります。OpreX LIMSを製造システムに統合し、製造ラインが稼働している製品に対して適切なサンプル検査要求を行うように設定されており、検査員の作業負荷を大幅に軽減することができます。
  • 最終製品の品質向上
    原材料や中間製品の品質に応じて適切な検査頻度を自動調整することで、最終製品の品質向上を図ることができます。

 

お客様の声

「YOKOGAWAのOpreX LIMSはとてもユーザフレンドリで使いやすく、現在では検査に携わるメンバー全員が当たり前のように使用しています。プラント情報管理システムであるPI Systemと統合されているため、検査結果が関係する各部門に迅速に共有できるようになっています。これまでは検査結果を手作業で定型フォームに入力する必要があり、入力し忘れなどのミスもありましたが、現在は多くの分析機器の検査結果が自動でシステムに登録されるようになっています。今後は入力用のフォームを全廃していくことを目指しています。
また、特に便利なのが検査計画の自動スケジューリング機能です。上位システムと連携して検査計画を自動で生成してくれるのですが、原材料等の過去の検査結果も加味して、製品品質を低下させることのない適切な頻度での検査計画を作成してくれます。自動生成されたワークフローがシステム上で管理されていますので、検査漏れや入力漏れなどのヒューマンエラーを削減することもできました。
今後はプロジェクトの第2フェーズに入っていきますが、YOKOGAWAには今後も良いサービスとサポートを提供していただくことを期待しています。」

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