概要
AGL Energy Limited, Traralgon, Victoria, Australia
AGLエナジー社(AGL)は、ロイヤンA発電所の総合改修の一環として、4ユニットすべての改修を完了しました。
AGLロイヤンA発電所では、全体の改修が2006年に開始され、2014年末に4号機の負荷遮断試験が完了、4号機の休止改修が無事に終了しました。
この更新では、各ボイラー・タービンユニットに最新の協調運転制御が導入され、スタートアップから定常運転まで大幅な自動化を実現、ワンプッシュボタン操作のような自動制御が実現されています。
お客様の課題とソリューション
ラトローブ渓谷トララルゴン近くにそびえるロイヤン発電所の冷却塔と煙突は、30年以上前の1982年にプラントが稼働して以来、地域のランドマークとなってきました。ロイヤンは2,210メガワットの発電所で、ビクトリア州の電力需要の約30%を供給する、同州最大の発電所です。
30年以上にわたり、石炭価格の上昇や厳しい環境規制に対して絶え間ない効率化努力が繰り返されてきましたが、制御システムや保護システムがユニットごとに異なり、老朽化も進んだことから、ボイラーとタービン発電機4ユニットの統合制御監視システムの改修が必要となっていました。
この改修プロジェクトの契約は2006年に横河との間で締結され、そのスコープには以下が含まれています:
- ボイラーの制御保護監視システムの更新
- 既設Kraftwerk Union (KWU)社(現シーメンス)製のタービン制御システムと保護システムを、横河のCENTUM VPタービンコントローラおよびProSafe-RS SIL3安全計装システムで更新
- 共通設備の制御システム
- 運炭設備システム(炭鉱から発電所の石炭バンカーまでの自動バンカシステム)
- 高精度のオペレーター訓練シミュレーターの開発・納入
シミュレータは、CENTUM VPシステムよりも先に納入されました。制御システム更新に先だってシミュレータが納入されたことで、オペレーターが新しい運転操作や制御ロジックに慣れることができ、プラント試運転・再起動時に、オペレーターの誤操作を削減することに役立ちました。
シミュレーターはまた、試運転前に制御システムのロジックを事前検証・事前調整するためにも活用され、試運転期間の短縮に貢献。オペレーターのトレーニングの機会を増やすために、2台目のシミュレーターも納入されました。
本プロジェクトが完了するまでの期間を通じて、横河は常に、どうすればより効率的に、よりタイムリーに、より多くの価値を、ロイヤン発電所のオーナーに提供できるか追及してきました。これによって、ユニットの休止期間は、回を追うごとに短くなり、4号機の休止期間は予定よりも短期間で完了。しかも、ピーク時には800人以上の作業者がサイトに詰めていたにもかかわらず、一度も休業災害を起こすことはありませんでした。
新しい統合制御監視システムの効果はすでに顕れており、ひとつのユニットでは、建設以来最長の連続運転を記録しました。さらにオペレーターによると、新しい制御システムはボイラーの運転をより高精度にすることができ、近接する炭鉱からベルトコンベアで直接供給される石炭の品質や水分の変化にも素早く対応し、安定した運転が可能となりました。というのも、この炭鉱の石炭の質はあまりよいものではなく、場合によっては66%も水分を含むことがあるからです。
発電所に隣接する炭鉱
更新内容の詳細
ロイヤンA発電所に納入されたCENTUM VPシステムは40,000点を超える入出力点数を持ち、中央制御室には48台のオペレーターステーションおよびディスプレイが設置されています。
各ボイラー・タービンユニットには最新の協調運転制御が導入され、スタートアップから定常運転までの大幅な自動化を実現、あたかもワンプッシュボタンのような自動制御が実現されています。
- 主蒸気温度制御には、エンタルピー・バランス法によるモデルベース予測制御を用いて、主蒸気流量に対するスプレー流量の比率を制御、主蒸気の温度と圧力を一定に維持
- 給水流量制御は、点火後の圧力上昇から定格負荷に至るまで、エコノマイザーの保護を含めて全自動となり、オペレーターの手動介入が不要
- 燃焼制御は、水分の多い褐炭の品質・カロリーが急激に変化しても自動的に対応
- 高度制御のアルゴリズムに異常値入力があった場合は、標準的なカスケード制御へ自動的に移行
- インテリジェントな変圧運転により、中間負荷での高効率な運転を実現
- 1msecのシーケンス・オブ・イベント記録
- インテリジェントなアラーム管理ソフトを統合制御監視システムに搭載、プラントに大きな変動があった場合にも、アラームの洪水を防止
- 横河のProSafe-RS安全計装システムによりボイラーとタービンの安全性を確保
- 広大な運炭設備の制御は、横河のFA-M3高速PLCに更新
- 横河のCENTUM VP生産制御システムと、種々の運転管理やマネジメントシステムとの統合
- 横河のExaquantumプラント情報管理システム(PIMS)
ロイヤンの新しい制御室の一部
お客様の声
AGLロイヤン発電所の前計装保守責任者であるロン・トマセッティ氏は、システム更新直後からすでに収率の改善がみられるといいます。オペレーターの頻繁な介入を必要とせずに、より高精度で確実な制御が実現できており、「プラント全体で2-3%の熱効率の向上が見込まれています。」と述べています。
トマセッティ氏は、これは発電所・需要家・自然環境の三者にとって「Win-Win」なことであると言います。「効率性と環境配慮は同じことです。発電所を効率的に運転できれば、燃料の消費を抑えることができますし、蒸気温度の急上昇も避けられます。そうすればボイラーやバルブなどを含む蒸気系統全体の寿命と安全性を保つことができ、プラント全体の安全にもつながります。」
統合制御監視システムの更新プロジェクトが完了したことで、8年間に及んだAGLロイヤンと横河オーストラリアとの共同プロジェクトは終了しました。しかしお客さまと横河とのパートナーシップは、横河による長期保守契約のもとでこれからも続きます。写真はプロジェクトの完了を記念して、ダルマに目を入れた際のものです。
AGLロイヤン発電所の皆様と
業種
関連製品&ソリューション
-
CENTUM VP
統合生産制御システム 「CENTUM VP(センタム・ブイピー)」は、プラントの設計から、エンジニアリング、システム・機器の据え付け、生産立ち上げ、さらには稼働後の改修や変更を経て運転を終了するまで、プラントのライフサイクルにわたり最適な操作・エンジニアリング環境をお客様に提供します。
-
プラント情報管理システム Exaquantum
Exaquantum (エグザカンタム)は、プラント操業に携わるさまざまな部門のお客様に、必要な情報を最適な形にして提供します。製造業を知り尽くしたYOKOGAWAだからこそ実現できたプラント情報管理システム(PIMS)です。
-
安全計装システム ProSafe-RS
ProSafe-RSは国産初(2005年2月発売)の本格的なプロセス用統合型安全計装システムです。世界ではじめてシングル構成でSIL3に適用できる安全性を実現し、さらに冗長化構成により高稼働率も実現します。また、CENTUMとの融合により本格的な統合化が可能です。