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東京大学大学院 薬学系研究科 池谷裕二先生

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従来法に比べ桁違いに大容量の脳神経ネットワークを高速で解析できる、多ニューロン解析法(fMCI*1)を確立し、脳活動研究に多くの新たな発見をされている若手脳科学者、東京大学大学院薬学系研究科池谷裕二先生を訪問しました。

共焦点スキャナユニットCSUを選ばれた理由を教えてください

高速、広視野で脳スライスのカルシウム反応を計測したいニーズからCSUの高速性に注目していましたが、使う機会を得たのは2002年から留学した、コロンビア大学Yusteラボでした。このラボには2光子顕微鏡は2台あったのに共焦点顕微鏡が無かったので、CSUシステムを導入してもらいました。

CSU system

CSU system

実際にCSUで観察していかがでしたか?

真っ先に気付いたのは、留学前に使用していたポイントスキャナの共焦点に比べて顕著にブリーチングが低いことでした。Yusteラボのメンバーは2光子しか使ったことがないので当然と受け止めていましたが、言い換えれば、CSUでのイメージングは2光子並みにブリーチングが低いと言えます(厳密には2光子は励起ポイントでのブリーチングは通常の共焦点以上に速い)。また、fMCIは長時間にわたる安定な高速撮影が必須であり、CSUの特性が高度に発揮される実験手技でもあると思います。

fMCI

海馬CA3野の神経細胞の発火パターン

CSUを使いこなす上でのアドバイスをいただけますか?

Dr.Yuji Ikegaya

一般的に、実験科学の研究は、新機能を持つ新たな機器の登場に伴って階段状に発展することが多々あります。といっても、新機能が直ちにブレークスルーを産んでくれるわけではありません。使う側が、徹底的に条件検討をしてその機器の限界能力を引き出す努力をしてこそ、新たな切り口での実験結果に基づく発見が産まれます。徹底的な条件検討をしていくうちに、個々の機器の個性(癖)までが見えてきて、スペックの限界一杯まで使いこなせます。

私はCSUシステムを使いこなすためにも、徹底的に条件検討をしました。
まず、ハード面で最も重要なのは、最適なカメラを選択することです。余談になりますが、CSUは暗くて使えないという方がいて大変残念です。そういう方には「最近の高感度カメラを是非試してください」とお話ししています。
勿論、ハード面でも対物レンズの選択など検討する条件は多々あります。更に、試料の調整は最大の課題であり、スライスの調整・培養条件、蛍光色素の種類やローディング方法をはじめ多くのファクターを本当に徹底的に条件検討し最適化しました。更に、大量のシグナルを解析するためのソフトも自作しました。

今後のご研究について教えてください

Dr.Yuji Ikegaya

現在の一般的な脳科学の実験スケールでは、細胞数100個以下、時間分解能も50Hzまでが限度ですが、私たちのシステムでは、10000個以上の細胞から、また撮影スピードも2000Hzで記録し、解析できます。
このようにCSUシステムの機能を限界まで使いこなすことで、世界の脳科学研究レベルから桁違いに高容量のデータ取得と解析が可能になりました。
このシステムだからこそ可能な、多細胞レベルでの脳神経ネットワークの解析を更に追求していきたいと思います。
今研究室では2台のCSUシステムがフル稼働していますが、事情が許せば、もっとCSUシステムを増やしたいです。

Dr.Yuji Ikegaya


CSUを徹底的に使いこなして最先端の研究成果をあげている池谷先生が、その真価に気付かない方が居ることを大変残念がってくださるほどにCSUに愛着を持ってくださっていることに、感謝いたします。
弊社としても、特に旧製品ユーザの方々に、最近のカメラ、レーザ、フィルタ類などと組合わせることでCSUの機能が大きく向上できることをアピールしていく努力を続ける所存です。池谷先生は、脳科学研究の成果を上げる傍ら、サイエンスの門外漢にも最新の脳科学研究成果を大変判り易くしかも面白く伝えるアウトリーチ活動にも精力的に取り組んでおられます。
最新刊の『単純な脳、複雑な「私」』(朝日出版社)は、人の”脳と心”の思いがけない不思議な現実を伝える、また、出版物としても新たな工夫に満ちていて読み応えのある力作です。

*1 fMCI : Functional multineuronal calcium imaging
ニューロンの細胞体の一過性Ca2+上昇がスパイク出力を反映していることを利用して、光学的にスパイク時空パターンを再構築する手法


池谷 裕二(いけがや ゆうじ)先生  
ホームページ:http://gaya.jp/
東京大学大学院薬学系研究科 教授


取材:2009年6月

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