分塊圧延工場の加熱炉工程における計装システムリプレースのエンジニアリング
特殊鋼業界のトップメーカーとして各種産業界の基盤を支える大同特殊鋼株式会社。その中でも最大規模の主力工場となる知多工場において、加熱炉の計装システムにSTARDOMが導入されています。今回は、大同特殊鋼株式会社 知多工場でのSTARDOM導入事例をご紹介します。
ユーザ紹介
大同特殊鋼株式会社は、技術研究所と全国9工場からなる製造部門で構成されています。
今回紹介する知多工場は、この9工場の中枢ともいうべき存在で、最新のプロセスを導入した最大規模の主力工場です。1962年の稼動を開始して以来、最新技術と設備の充実を図り、徹底した合理化及び効率化を推進してきました。
所在地 : 〒477-0035 愛知県東海市元浜町39番地
知多工場の特徴
世界最大級の一貫製造工場の機能と高い技術力で、鋼材・型鍛造品あわせて年間180万トンという特殊鋼業界で郡を抜いた生産量を誇っています。
主な生産品は線材・棒鋼など各種圧延条鋼製品です。その生産品は構内で二次加工され、自動車や新幹線の部品に生まれ変わり、人命をあずかるもの、そして私たちの生活に身近なものになり使用されます。
高度で緻密な技術力と確かな品質が要求される様々な製品を作り続けています。
導入の背景と狙い [2005年9月27日 インタビュー]
大同特殊鋼株式会社 知多工場 設備センター 保全Gr 電気チーム |
大同特殊鋼株式会社 知多工場 設備センター 電気スタッフ |
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工長 酒井 勲 様 | 平田 修 様 | 樋江井 文貴 様 |
Q. リプレースのきっかけは?
昨年、分塊圧延工場の1CC加熱炉(*1)工程にSTARDOMを採用、導入しました。
リプレースのきっかけは計装システムの老朽化です。昭和59年に立上げ、約20年間稼動していました。加熱炉は連続鋳造ライン上では主力のラインで、大変重要な設備です。 安定制御、安定生産できる設備にしなければなりません。 そのような背景もあり、機種の選定はとても慎重に行わなければなりません。
その上、リプレースと言うのは、なかなか予算が下りません。 設備の能力が上がることへの投資ならば良いのですが、そうではないので、予算がつきにくいという現状の問題点もあります。
STARDOM採用についてはコストが合ったというのが一番の決め手ですが、 まずは、温度制御の技術力が高いメーカをと考えていました。いろいろなメーカがある中、 コスト+温度制御に優れ、ものがいい、信頼度があるなどトータルで検討し、STARDOMに決定しました。
(*1):連続鋳造(鋼塊を再加熱して圧延を行う)工程の前の炉
STARDOMを選んだ理由
Q. DCSではなくSTARDOMを選んだ理由は?
DCSではなく、STARDOMを選んだのはコストが一番の理由ですが、会社の方針もありました。今後はメンテナンスを社内で行い、維持する方向になっていくと思います。本来、計装というのは長期稼動し、システムの改造もあまりないものです。今までは計装各メーカ任せでしたが、そうではなく現場側で社内設計を行うという方針が打ち出され、今回 初めて設計の仕方を含めて一から行いました。
自分の所で簡単に手直しができる、コストダウンにつながる、後々のメンテナンス性も重視しFCNコントローラを採用しました。IEC61131-3という世界標準言語でエンジニアリングを行えば規格も操作方法も統一されているので効率的なシステム設計が行えます。
Q. STARDOMを選んで良かったことは?
それから、将来的に上位とSTARDOMをつなごうという計画があります。自律型コントローラFCNは上位とLANで簡単につながります。FCNを導入することにより、上位側との連携も楽になります。
また、知多工場ではコントローラにタッチパネルを接続しています。FCNとタッチパネルの接続は、LAN経由でもModbus経由でも簡単に行えます。他社の場合、コントローラと自社製タッチパネルをセットにしたり同じメーカでも独自のものはつながるが他のものはつながらないと言うことがあるので検討する手間がかかります。タッチパネルの予備品がたくさんあるのでそれが使えて、活用できるのはとてもありがたいです。
導入システム
Q. 今回導入されたシステムの構成や特長を教えてください。
VDS2台+FCN4台のシステム構成です。
昨年、リプレースのきっかけとなった既設制御盤の指示計、調節計が続けて壊れ、強制的にAUTOで制御しましたがうまくコントロールしませんでした。さらに既設システムは親が壊れると通信しなくなり、すべてだめになってしまいました。
それもあり、今回は炉自体を1台のコントローラで制御するのではなく、予熱帯、加熱帯、均熱帯、廃熱ボイラと部位的に4分割し、効率的に分散化しました。さらに炉内を上部と下部の2つに分け、それぞれのFCN側で温度、重油、空気(蒸気)のコントロール機能を持たせました。最悪、コントローラが1台止まっても炉としては一帯なくても機能するということで分割するという、このような考えのもとに置き換えをしました。
VDS
盤内FCN
中央監視室
分塊圧延
導入結果と今後の展開
Q. 導入後いかがですか?また、今後の展開についてもお聞かせください。
昨年の夏よりエンジニアリングを開始し、10月初旬の立上げまでの短い期間(約40日)を3名で担当しました。もともと IEC 61131-3 規格は4年~5年前から他社のツールで経験済みで慣れていました。今回の ロジックデザイナ(*2)の操作方法は前回と大きな違いはなくローカル変数・グローバル変数などの考え方など苦労しませんでした。ロジックデザイナでは1枚のシートにFBDとラダーが混在できるのがいいですね。電磁弁の切り替えなどはラダーで書きたいですから。
今回は既設システムの計装フロー起こしにかなり時間をかけました。昔の計器(既設の調節形)は計器内に設定(パラメータ)を打ち込んでいるので、それがどこにあるのか、解読することや折れ線のカーブをつくることに時間がかかりました。その計装フローを元にロジックデザイナでFBDに置き換えをしました。計装フローさえ出来てしまえば、ロジックデザイナに置き換える作業は簡単にできます。
計装フローを見たまま、だいたい同様な制御の流れでロジックに反映することができ、若干の手直しを加えて終わりました。試運転も済みうまく立ち上がり、すんなりと切り替わりました。全く問題なく、稼動しており驚いています。
現在はSTARDOMで第二弾の計装リプレースJOBのエンジニアリングに着手しています。更に短納期でエンジニアリングを行う予定です。
(*2):STARDOMのエンジニアリングツール
会社概要
住 所 | 〒460-8581 名古屋市中区錦一丁目11番18号(興銀ビル) |
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設 立 | 1916年(大正 5年) 8月19日 |
資本金 | 371億7,246万4,289 円 |
事業内容 | 特殊鋼鋼材、エレクトロニクス材料、自動車部品 ・ 産業機械部品、エンジニアリング、新素材、流通 ・ サービス |
URL | http://www.daido.co.jp/ |
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