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細胞の脱水収縮過程の三次元実時間観察

はじめに

 凍結解凍後に細胞が受けるダメージは、氷の成長に伴う電解質の濃縮の影響を受けます。細胞外の電解質濃度が上昇すると浸透圧が上昇し、その結果、細胞は脱水収縮します。その速度は細胞膜の水透過率に依存し、その速さが細胞の凍結損傷のメカニズムに大きな影響を及ぼすと考えられています。
 従来の顕微鏡を用いた細胞の浸透的挙動の観察では二次元的な情報しか得られず、脱水収縮速度を求める場合には、液中に浮遊した状態の単離細胞を試料として、投影面積から体積を推定してその変化から算出するしかありませんでした。
 そこで、周囲の溶液濃度変化に対する細胞の応答を観察できる灌流顕微鏡に高速スキャンが可能な共焦点スキャナユニットを導入し、細胞の脱水収縮挙動を三次元的に実時間観察しました。そして、単離細胞に加えて付着状態の培養細胞の観察を行い、比較しました。

浮遊状態の細胞の脱水収縮挙動

図1 浮遊状態の細胞の脱水収縮挙動
画像処理後の細胞の三次元再構築像を上から見たもの(上段)と横から見たもの(下段)

付着状態の培養細胞の脱水収縮挙動

図2 付着状態の培養細胞の脱水収縮挙動
画像処理後の細胞の三次元再構築像を上から見たもの(上段)と横から見たもの(下段)
Z方向にのみ収縮することが確認できます

等張液中の細胞の表面積

図3 等張液中の細胞の表面積(付着状態の場合には頂端部側のみの表面積)と体積の関係

体積の経時変化の測定例

図4 体積の経時変化の測定例
NaCl の濃度(C) が高くなるにつれ、浮遊細胞は全体的に、培養細胞は高さ方向にのみ収縮しますが、どちらもほぼ同程度の時間で収縮し、水透過率(Lp) にはほとんど差はありません

実験内容

下記の条件で浮遊状態および付着状態の細胞の脱水収縮挙動を観察しました。

試料 ヒト前立腺ガン細胞株PC-3 細胞膜をカルボシアニン蛍光色素DiI(Molecular Probes)で染色
システム 共焦点スキャナユニット CSU10
レーザ ArKr (488nm、561nm)
カメラ HAMAMATSU EB-CCD C7190
顕微鏡 NIKON TE-2000U
対物レンズ ELWD 60 × NA 0.7
3Dデータ取得条件 画像取得間隔 0.5um
撮影間隔 2.5秒/1立体
溶液濃度 0.15 M NaCl aq → 0.5 M NaCl aq
温度 23°C

結果

 高浸透圧溶液に曝されると、浮遊細胞は三次元的に、しかしややいびつに収縮しましたが(図1)、培養細胞は基質への接着面積を維持したまま高さ方向にのみ収縮しました(図2)。また、浮遊細胞の表面積と培養細胞の頂端部側の表面積はほとんど等しいことが明らかになりました(図3)。さらに、細胞の体積変化を測定したところ(図4)、細胞膜の見かけの水透過率にもほとんど差がないことがわかりました。

まとめ

 共焦点スキャナユニットCSU で高速観察することで、今まで見ることのできなかった三次元形態変化を解明することができました。共焦点スキャナユニットCSU-X1は世界最速2000fpsで高精彩に観察できるため、素早い動きを詳細に観察することができます。

データご提供:九州大学 大学院工学研究院 機械工学部門 教授 髙松 洋 先生
参考文献:
Yoshimori T, Takamatsu H, 3-D measurement of osmotic dehydration of isolated and adhered PC-3 cells, Cryobiology 2009, 58(1): 52-61.


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