はじめに
単層培養で動物細胞が増殖する過程において、細胞周期の進行に伴い細胞核の形態と高さ方向のポジションはダイナミックに変動を繰り返し、M期においてこの現象は顕著になります。
共焦点顕微鏡の光学系は焦点深度を限定することで細胞の微細な構造をシャープに撮影することに優れています。しかし、そのトレード・オフとして焦点深度範囲から外れた高さ方向の情報を排除してしまうという性質があり、高さ方向の幅が大きい細胞検体から高精細画像を取得しなおかつ定量情報も欲しいという、相反する要求を両立させることが難しい側面があります。
CQ1にはZ軸方向に対物レンズを精確に移動させながら共焦点画像の連続撮像を行いかつ定量解析する機能を備えており、ヘテロな細胞周期ステージが混在する細胞層全体の定量情報を取得することが出来ます。しかも解析の基となった高精細な共焦点画像のファイルを利用することで細胞分裂に関与する分子の微細な構造の観察と解析を並行して行うことが出来ます(図1)。細胞集団レベルの統計解析と細胞個々の形態情報の観察・計測をシームレスに行える特性を備えたCQ1は、細胞周期に関わるメカニズムの解明と薬剤の探索に強力なツールとなります。
図1 A)単層培養での細胞周期進行に伴う細胞核の形態および高さ方向の位置の変動と共焦点光学系の撮像範囲
B)Z方向連続撮影像の模式図
基本例
Z軸方向に連続撮影した画像情報をCQ1ソフトウエアのSUM機能で合成したうえで細胞周期解析を行い、特定の細胞周期ステージにある細胞核を選択(図2)さらに選択した細胞核の詳細な観察を行いました(図3)。SUM機能はZ軸方向の輝度値を合計する画像処理方法で細胞全体の定量情報の解析に優れ、MIP機能は重ね合わせるイメージ間の最大輝度値を選択してZ軸方向に画像合成する手法で細胞の微細な形態の観察と解析に優れています。
図2 3D機能を利用したA549細胞の細胞周期解析
20X対物レンズを用い、X軸およびY軸方向に加えZ軸方向(11枚)の連続撮影を行った画像ファイルを取得し定量解析
96ウエルガラスボトムマイクロプレート内で培養した細胞をDraq7核染色(グレー)およびαチューブリン免疫蛍光染色(赤色)で可視化
1ウエルあたり6フィールド、約3X103個の細胞を撮影
A) Z軸方向連続撮影像から合成したSUM画像
B) 細胞核の蛍光量と凝集度で二次元展開した散布図
凝集度の高いM期細胞を選択(グレー表示)
C) 選択されたM期細胞核(緑色表示)
図3 図2において選択したM期細胞を含む画像の部分拡大
CQ1ソフトウエアに搭載されているSUM機能およびMIP機能による表示、および3D画像の再構成を行った。M期進行の主要なイベントである紡錘糸形成の状態が観察される
M期阻害剤の影響
M期の進行を支配する細胞内分子群はガン化学療法剤のターゲットとして重要視されています。
ZM447439はオーロラキナーゼに対する阻害活性示すことで知られ、この化合物を投与された細胞は、M期における正常な細胞核分裂を完了出来ないだけでなく、そのままDNA複製を繰り返すため、核あたりのDNA量が倍加する現象を呈します。ZM447439で処理された細胞をCQ1で定量解析したところ、4Nで停止した細胞の集積に加えて、8Nの細胞核の存在がヒストグラムから確認されました。これらの細胞核では染色体の凝集が明瞭ではなくまた紡錘糸の形成も認められず、薬剤によるM期進行の分子メカニズムの阻害が発生していることが写真画像からも推察されます(図4)
図4 A)ZM447439を投与されたA549細胞の細胞周期ヒストグラムの変化
薬剤投与以外は図2の実験条件に同じ
B)解析に使用した細胞画像の一部とヒストグラムから倍数体を選択する手順の説明
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