小核試験

はじめに

小核試験は化学物質の遺伝毒性を評価する目的で行われる試験の一つです。小核とは通常の核とは別に存在する小型の核で、DNAの切断や染色体分裂の異常等により、細胞分裂に際して一部の染色体が細胞質中に取り残されることで生じます。この試験では被験物質の投与によって細胞内に出現する小核を検出して小核出現率を測定しますが、CQ1では焦点面を変えながら共焦点画像を取得することで細胞質全体を隈なく観察して小核の有無を判定することができます。また、付属のソフトウェアで解析プロトコルを設定すれば、データ解析を自動化することができます。このアプリケーションノートでは、遺伝毒性を有し、小核試験で陽性対照としてよく用いられるMitomycin C (MMC) の作用を検討した結果を紹介します。上述のような小核出現機序から、小核試験においては試験に用いる細胞が細胞分裂していることが前提となります。本実験では、アクチン重合阻害剤のCytochalasin Dで細胞を処理し、細胞質分裂が阻害されて核分裂のみが進行して複数の核を持つようになった細胞と、一度も分裂していないと考えられる単核の細胞を区別しました。そして、遺伝毒性の評価に必要な2核以上の細胞における小核出現率の算出と、細胞毒性の評価に必要となる単核および2核以上の細胞数の計測を行いました。

図1 CQ1での小核の検出

図1 CQ1での小核の検出
(AとB) MMC処理なし(A)と3µg/mlのMMCで処理した細胞(B)の例
それぞれ細胞質 (CellMask Deep Red, 左)、核 (Hoechst33342, 中央)の染色像と、CQ1による認識画像(右)
CQ1で主核(青四角)、細胞(赤の輪郭)と小核(緑四角)が認識できている
ここではCytochalasin D処理によって多数発生した二核の細胞のみを認識させている
(C)主核と近接していて画像上で明確に分離していない小核 (左図の矢印)も検出できている(右図のオレンジの丸)
 

図2 小核出現率のMMC濃度依存性

図2 小核出現率のMMC濃度依存性
MMC 処理の後、Cytochalasin Dの存在下で一回以上分裂したと考えられる複数の核を持つ細胞での小核出現率


図3 核数別の細胞数の計測によるMMCの細胞毒性の評価

図3 核数別の細胞数の計測によるMMCの細胞毒性の評価
(A) CQ1で認識した単核~4核の細胞(緑の輪郭)と細胞核(赤四角)の例
(B) 単核~4核の細胞数  (C) 単核の細胞数に対する2核以上の細胞数の割合

実験手順

実験手順
  • CHO-K1(チャイニーズハムスター由来上皮細胞株)を96ウェルプレート (NUNC #165305) に3,000 cells/wellで播種し、一昼夜培養
  • MMCを添加し、24時間培養
  • Cytochalasin D 6µM にて24時間処理
  • ホルムアルデヒドで固定し、核をHoechst33342で、細胞膜をCellMask DeepRedにて染色
  • ​​​​​CQ1で撮影・解析(20X対物レンズ、Z間隔 1 µmで31枚)

結果と考察

まず、小核の検出については、細胞質中に独立して存在している小核はもちろん、主核と接していて画像上で明確に分離していないものも認識し、小核出現率の増加を正確かつ定量的に示すことが出来ました。小核試験では、使用している細胞が被験物質への曝露中または曝露後に細胞分裂したことを担保する必要があり、そのために今回はCytochalasin D処理により細胞質分裂を阻害する方法を用いました。この方法では、細胞分裂に際して核分裂のみが進行して複数の核を持つようになった細胞を検出するために、それぞれの細胞内に存在する主核の数を認識して細胞を区別する必要があります。単核および2核以上の細胞数の情報は、被験物質の遺伝毒性と、細胞毒性による副次的な効果の影響を区別するために必要となります。今回の結果でも、高濃度のMMCが小核生成を誘発するだけでなく細胞分裂をも阻害していることがわかります。以上のように、CQ1による共焦点撮像・画像解析機能を用いて、小核試験に必要なデータを得られることが示されました。CQ1ではユーザの必要に応じて個々の細胞の小核・主核の数の他、体積や長さといった様々なパラメータも柔軟に関連づけて解析できます。従ってCQ1は小核試験だけでなく細胞分裂機構の研究においても大いに活躍できると考えられます。

Mitomycin C (MMC)
DNAを切断する等の遺伝毒性があり、小核を出現させる。

Cytochalasin D
アクチン重合阻害剤。細胞質分裂を阻害するが核分裂を阻害しないため、一回以上分裂を行った細胞は多核になる。
 


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