HepG2高密度培養と細胞の個別解析

はじめに

近年、様々な形態の高密度細胞培養の手法が提案されています。スフェロイド、繊維スキャフォールド、細胞外マトリクスといった細胞培養手法や素材は、細胞にとっての自然な生存環境を創り、化合物アッセイにおいて生体内での組織本来の状態に近い反応が得られることが期待されています。
単層培養での利用を前提につくられた一般的なホモジニアス・アッセイの手法は、これら高密度培養のアッセイにも、大きな改変を加えることなく利用することができます。しかし顕微鏡画像ベースのアッセイプロトコルにおいては、従来の解析手法を高密度培養のアッセイに転用することに大きな障害が発生します。一般の顕微鏡機能を組込んだ研究用機器においては、その被写界深度の狭さなどから厚く積み重なった細胞層全体の光情報を捉えきることが出来ません。さらにまた、単層培養検体への使用に最適化して開発された画像解析ソフトウエアは細胞個々を選択抽出し定量計測することに困難があります。

ヒト肝由来腫瘍細胞株HepG2を高密度に培養した検体を使った計測データをもとに、次のことを説明いたします。

  • CQ1が高精細な三次元的な細胞の画像を取得できること
  • CQ1を使って化合物に対する反応を一細胞単位で解析できること

ここに記述した化解析手順は、三次元培養を含む、様々な高密度の培養に応用できる可能性があります。

HepG2高密度培養の画像と細胞核の輪郭認識

図1 HepG2高密度培養の画像と細胞核の輪郭認識
薬剤非処理(a)およびスタウロスポリン処理(10-7M、48時間処理)(c)の細胞画像
細胞個々の認識をCQ1ソフトウエアに搭載されているスフェロイド解析アルゴリズムを用いた個々の細胞核の認識(b, d)
20倍対物レンズ使用

実験手順

  1. ガラス底96ウエルマイクロプレートを細胞外マトリクス(マトリゲル、培地にて5倍希釈)で表面をコート
  2. HepG2細胞をコーティングしたプレートに5X104細胞/ウエルの密度で播種、48時間培養を行い、細胞が過密な状態を作成
  3. 薬剤処理区のウエルにスタウロスポリンを添加し、さらに48時間培養
  4. ホルムアルデヒド溶液で細胞を固定し、抗活性型カスパーゼと抗H3Ser10P抗体でマーカーを標識
    一次抗体はそれぞれ蛍光標識二次抗体で可視化、細胞核はRNaseA存在下でDraq7で蛍光染色
  5. CQ1で細胞画像の取得・解析、統計解析とグラフ化はFCS Express™ 5 Image Cytometry (De Novo Software、オプション)を使用

結果と考察

極度な高密度状態にしたHepG2細胞培養を作成しました。CQ1を用いて細胞単位の解析を行い、また肝毒性作用のある化合物であるスタウロスポリンに対する反応を評価しました。
凝集した細胞層の形成を促すため、培養プレートに細胞外マトリックスのコーティングを施しました。予備検討の結果では、細胞外マトリックスコーティング上で培養したHepG2細胞はコーティングを施していない通常のプラスチック底プレートで培養したものよりも約10倍、スタウロスポリンの毒性に対し高い感度を示しました(データ非掲載)。
蛍光標識した厚みのある細胞層の画像を三次元的に取得しました。2種類の分子マーカー、H3Ser10P(細胞増殖)と活性型カスパーゼ3(アポトーシス)、を蛍光免疫染色法で標識しました(図2)。
個々の細胞核を認識することで、スタウロスポリンに対する反応を細胞単位で計測いたしました。増殖と死滅の方向性の差を定量的に評価するための情報を得ることが出来ました(図3)。
CQ1を使用することで、積み重なったHepG2細胞のような高密度の細胞サンプルに対して複数マーカーの同時解析を行い細胞単位のアッセイが行えることが示されました。

HepG2細胞の三次元画像再構成

図2 HepG2細胞の三次元画像再構成
50µmの厚さにわたってZ軸方向に沿って21枚の多色画像を取得し、三次元画像を再構成した
薬剤非処理(a)あるいはスタウロスポリン(10-7 M 48時間)処理(b)した細胞は活性型カスパーゼ(緑色)とH3Ser10P(赤紫色)の細胞マーカーを蛍光免疫染色、細胞核はDraq7で蛍光染色
20倍対物レンズ 使用

2つの細胞マーカーのマルチパラメーター解析

図3 2つの細胞マーカーのマルチパラメーター解析
薬剤非処理(a)あるいはスタウロスポリン(10-7 M 48時間)処理(b)した細胞の画像解析データをCQ1から出力し、FCS Express™ 5 Image Cytometerを用いて散布図解析
細胞の生死の割合を推定することができる
各散布図には1 X 104個の計測データをプロットした


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