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高炉改修で進化する/働く人の安全・多様性・働きやすさを実現するコントロールルームデザインコンサルティング

JFEスチール株式会社 西日本製鉄所(倉敷地区)様 logo
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JFEスチール株式会社 西日本製鉄所(倉敷地区)様

概要

お客様について

JFEスチール株式会社は、自動車・船舶・建築等、幅広い市場に向けて、高品質かつサステナブルな鉄鋼製品を製造・供給する日本を代表する鉄鋼メーカーです。世界最高の技術を磨いてきたJFEスチールは、鉄鋼業界に強く求められているカーボンニュートラルを実現すべく、新たな挑戦を続けています。

岡山県倉敷市にある西日本製鉄所(倉敷地区)は、高炉3基を有しており、製造された高品質の製品は、世界各国にも輸出されています。

 

今回のプロジェクトについて

2019年、JFEスチールは西日本製鉄所(倉敷地区)にある第4高炉の4次改修工事をプレスリリースしました。一般に高炉の寿命はおよそ20年と言われています。高炉改修は、古くなった炉体を解体し、新たに組み立てるたいへん大掛かりな工事であり、高炉の内容積を増やし、新たな工法を確立する等、製鉄所そのものの進化として位置付けられてきました。今回の第4高炉の改修でも、操業効率向上のために新たな自動制御機能を導入したり、炉体の長寿命化を図る等、さまざまなレベルアップが行われました。
その高炉改修工事の一部として、JFEスチールはYOKOGAWAのコントロールルームデザインコンサルティングを利用し、コントロールルームならびに高炉センターのフロア全体の改装を行いました。的確な操作監視が行える先進的なコントロールルームとなり、ここを利用するすべての人々にとって安全で働きやすい環境を実現しました。

 

高炉とは

高炉は、約1,200℃の熱風を吹き込み、炉頂から装入された鉄鉱石を融解、還元して銑鉄を製造する、製鉄所の主要設備です。内部では装入原料やガス流れが複雑に影響し合い、高度な運転ノウハウが求められます。製造された銑鉄はトピードカーで搬送され、転炉で鋼となり、熱延、冷延等の下工程でさまざまな製品へと形を変えていきます。

高炉とは

 

お客様の課題とソリューション

JFEスチールは、第4高炉改修工事の一環として、プロジェクトのコンセプトの一つである「人の働きやすさ」を実現するため、コントロールルームがある高炉センターの全面改装に取り組みました。また、次世代のコントロールルームを作りたいという強い希望もありました。本プロジェクトで制御システムの更新も手掛けていたYOKOGAWAは、制御部門の山口祐樹氏をはじめとするプロジェクトチームとともに活動を始めました。

高炉センターのフロアの課題

高炉センターが前回改装されたのは、第3高炉の改修が行われた2010年のことでした。しかし室内の一部と廊下の区分が曖昧になっている等、動線には課題がある状況でした。昨今は女性従業員の配置も増えており、働く人々の多様性への対応も急務となっていました。また、第3高炉と第4高炉のコントロールルームは一体的に構成されており、今回のプロジェクトでは第3高炉側の操業を継続しながら第4高炉側の改装を行わなければならないという工事上の課題にも直面しました。さらに近年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の盛り上がりを考慮すると、今後のコントロールルームにおいては、情報機器の大幅な拡充が求められることが予想されました。これらのことから、改修後のコントロールルームは機器配置をよく整理し、スペースに十分な余裕を持たせることを前提に検討を開始しました。

改装前のコントロールルーム
改装前のコントロールルーム
(左側:第4高炉、右側:第3高炉)

 

コントロールルームに関する評価

YOKOGAWAのエクスペリエンスデザイン部に属するコンサルティングチームは、現状の課題を明らかにするために「ユーザによる主観的な評価」と、「ISO 11064との整合性に対する客観的な評価」を行うことにしました。“ISO 11064 コントロールセンターの人間工学的設計”は人間工学に基づき、安全で使いやすく、働きやすいコントロールルームの指針を示す国際規格の一つです。オペレータの健康を維持し、作業効率を高めることを目的として策定されました。コントロールルームの設計や環境によって、アラームの見落とし・聞き逃しによる不安全状態が起こることを防ぐのも、その目的の一つです。

ユーザによる主観的な評価として、コントロールルームで働く人全員に対するアンケート調査を行い、その結果、コミュニケーションは十分に取れている一方、環境の快適さや機器の使い勝手に課題を感じている人が多いことが分かりました。また、職制が高い人ほど、安全・衛生への配慮や空間としての使い勝手について改善が必要だと考えていることが分かりました。電気室内の一部が移動の動線になっていること等、安全の観点から改善すべき点もありました。

客観的な評価として、YOKOGAWAは動線分析、コントロールルーム内の約20カ所の照度測定を行ったほか、オペレータ1人の扱う操作監視の範囲やHIS(Human Interface Station)の台数、運転中に端末を使用する頻度等、実際のオペレーションの様子も詳細に把握し、評価できる点と改善すべき点とを整理しました。これらの結果は現場やプロジェクトチームと共有されました。

コントロールルーム調査レポートの一部
コントロールルーム調査レポートの一部

また、第3高炉と第4高炉のコントロールルームの位置関係の見直し、室温調節のしやすさ、さらにはディスプレイの数や配置の自由度を向上させて将来のレイアウト変更や働き方の変化にも柔軟に対応できること等、プロジェクトチームでさまざまに検討を行い、改装の基本構想を作成しました。

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、プロジェクトに関する打ち合わせのほとんどがオンラインで実施されることとなりましたが、相互の緊密な情報共有はプロジェクト完了まで続けられました。

改装前の第4高炉のコントロールルーム
改装前の第4高炉のコントロールルーム

 

コントロールルームデザインの提案とブラッシュアップ

YOKOGAWAはいくつかのコントロールルームのデザイン案を作成しました。HISのディスプレイ・キーボードを置くデスク型のコンソール、大画面で運転状況を監視できるビデオウォールを基本とし、それらのレイアウトについてもいくつかのプランを提案しました。さらには床面や壁面の色や素材、照明や空調機の設置位置等、その提案は細部に及びました。
デザインの考え方や、CGによるイメージを共有し、意見や要望を反映しながら、幾度かのブラッシュアップが行われ、コントロールルームのデザインが決定されました。

コントロールルームデザインのCG
コントロールルームデザインのCG

デザインの特長:

  • これまでの二段積みコンソール型のHISではなく、ディスプレイアームの付いた液晶ディスプレイとCENTUMのオペレーションキーボードを用いることで、ビデオウォールへの視野を確保。ディスプレイはオペレータごとに使いやすい位置に調整して操作監視が可能。
  • エリア・作業ごとに適切な明るさとなるよう計算された、目への負担を考慮した照明。
  • 操作監視を行うコントロールルームエリアは、脳を活性化し集中力を高める寒色系のブルー、動線を兼ねる共用エリアには、什器類との親和性があり汚れの目立ちにくいグレーを採用。なお、休憩室には落ち着きや安定感を与える暖色系のカラーを採用。
  • 将来のレイアウト変更・拡張がしやすいOA床を採用。
  • ビデオウォールの下部を利用して、ドキュメント類を収める収納スペースを十分に確保。
    (整理・整頓を容易にし、安全な動線を確保するために有効)

 

高炉センターのフロアレイアウト

高炉センター改装工事の設計は、JFEスチールの建築部門が実施しました。YOKOGAWAは、これまでのコントロールルームデザインの経験を踏まえて、ISO 11064の規定に基づくレイアウトとなるよう、いくつかの提言を行いました。

新しいレイアウトの特長:

  • 将来の機能拡張を考慮し、コントロールルームにおける第3高炉、第4高炉各デスクの位置関係を見直し。
  • 現場とコントロールルーム間を安全かつ効率的に行き来できる動線を確保、会議室や食堂、洗濯室等を衛生面を考慮し利便性良く配置。
  • オペレータと見学者の動線を完全に分離し、安全を確保するとともに、見学ルートのコンテンツを充実。

改装後のフロアレイアウト
改装後のフロアレイアウト

 

段階的に行われた改装工事

コントロールルームの改装工事は、第4高炉の改修に合わせて実施しましたが、隣り合う第3高炉側は操業を継続しており、工事の影響を最小限にする必要がありました。工事計画にあたっては操業部門、建築部門、制御部門とで綿密なフェーズプランを作成し、第3高炉の停止タイミングを最大限に活用しつつ、電源、通信系統の整理や間仕切りの設置等を適切に行うことで、操業に支障を与えることなくフロア、照明、空調といった改装工事を完了させました。

改装後の第4高炉のコントロールルーム
改装後の第4高炉のコントロールルーム

 

お客様の声

完成したフロア、コントロールルームは、働く人々の多様性を考慮した利便性の高いレイアウトとなりました。見学ルートからガラス越しに見ることのできる第4高炉のコントロールルームは、ディスプレイの視認性が良く、オペレータ同士の情報共有を行いやすい先進的なデザインとなりました。各種備品の収納やワークスペースの検討を十分に実施したことから、改装から時の経った現在も、きれいに整理・整頓された状態が維持されています。

見学ルート
見学ルート

 

西日本製鉄所(倉敷地区) 製銑部 製銑技術室 藤井紀志様

「第4高炉の改修は、私たちにとって久しぶりの改修工事であり、それに合わせてコントロールルームを次世代のものにしたいと考えていました。DCSの更新等の経験はありましたが、フロアやコントロールルームの大規模な改装は初めてでしたので、YOKOGAWAさんと何度もディスカッションしながら進めさせていただきました。
新しいコントロールルームは、私たちの働き方に合っていると感じています。オペレータはディスプレイの2台構成にすっかり慣れて、各々ディスプレイの位置や角度を調節しながら便利に使っています。これまで別のエリアで入力していた運転レポートも、今では各自がノートPCを手元に置いておき、気になることがあればすぐに入力可能ですので、情報共有が素早くできるようになりました。働き方とデザインとがマッチしています。
昔は男性だけの職場でしたが、現在では女性社員も働いていて、交替勤務にも入っています。女性用のトイレを含めて、必要な機能やエリアをきちんと整理し、フロアを大きく改装しました。フロアやコントロールルームがきれいになったことで、皆のマインドが変わったと感じています。整理・整頓された状態が長く維持されています。見学に来られた方が、きれいで格好の良いコントロールルームに驚いてくださる様子も良く見られます。」

西日本製鉄所(倉敷地区) 製銑部 製銑技術室 藤井紀志様

 

西日本製鉄所(倉敷地区) 制御部 制御技術室 林 誠一郎様

「大幅なレイアウトの見直しであり、設計の段階では動線のイメージを掴むのに苦労しましたが、実際にできた新しいフロアはとても良いと感じています。私は現場とコントロールルームとをよく行き来するのですが、動線も使いやすいですし、スムーズにコントロールルームに出入りすることができます。
第3高炉の操業を行いながらの工事でしたので、見学ルートとの窓もなければ、フロアの壁もないような状態で運転を継続しなければならず、これまで経験したことがないぐらい、大変な改装であったと思います。

今後は高炉の電炉化等も計画されており、従来の高炉改修工事とは異なることも想定されますが、技能伝承を行っていくことが、今後の課題の一つであると考えています。私は今回も含め、高炉改修に二度携わりました。最初の改修は、当時の改修経験者が集まって実施したことを覚えています。今回は、若い頃に高炉改修を経験した部長クラスの人たちが、現在の若手に教えながら実施しました。人を育てるのは一番難しいことですが、カーボンリサイクルの取り組み等もあり、高炉も鉄鋼業界全体も、今後は大きく変わっていき、働き方も変わっていくのではないかと感じています。」

西日本製鉄所(倉敷地区) 制御部 制御技術室 林 誠一郎様

 

データサイエンスプロジェクト部 山口 祐樹様

(プロジェクト当時:西日本製鉄所(倉敷地区) 制御部 制御技術室)

「昨今は働く人の目線で適切な職場環境を作ることが重視される時代となってきています。改装に適したタイミングである高炉改修に合わせて、高炉センターフロアとコントロールルームの全面刷新をプロジェクトチームで推進することになりました。
高炉改修は、古くなった炉体の入れ替えをするとともに機械設備、電気設備等のリフレッシュを行うものです。高炉の寿命は20~30年ほどであり、これは高炉に携わった人にしか分からない感覚かも知れませんが、高炉改修とは高炉に次の命を与えるようなものだと思っています。ですので、この先20~30年の間をしっかり生きていける良い高炉になってほしい、そのためには人とシステムの接点となるコントロールルームも含めてレベルアップしたい、というのが私たち関係者の願いでした。

新型コロナウイルス感染症の影響で対面での打ち合わせがほとんどできず、オンラインでの打ち合わせとなったので、当初はコミュニケーションの難しさを感じていましたが、YOKOGAWAさんは提案内容や協議内容を都度分かりやすく整理してくださったので、十分な議論を行うことができました。建築部門に対しては、結果としてのデザインだけでなく、その意図も含めて理解していただくように心がけました。
第3高炉側のコントロールルームの機能を維持する必要がありましたので、工事工程の管理には苦労しましたが、工期を細かく分けたり、関係各署と調整を行うことでやり遂げることができました。

2021年12月の第4高炉火入れ後、私は2月に他地区へ異動となりましたが、その後も新しいコントロールルームがどのように使われているかを気にかけていました。オペレータが『家族に働いているところを見せたい』と言っているという声を聞きましたので、とても嬉しく思っています。今回のプロジェクトは、コントロールルームやフロアのデザインのモデルケースとなったと考えています。
YOKOGAWAさんは悩みに対して真摯に話を聞いてくれる存在です。似たような課題に見えても、悩みはそれぞれ違うはずですから、ユーザーの本当の課題を掘り下げていただき、お互いに腹を割って相談できる関係でいてもらいたいです。」

データサイエンスプロジェクト部 山口 祐樹様

 

 

業種

  • 鉄鋼

    鉄鋼業界のお客さまは、世界的な過剰供給構造となっている鉄鋼市場において、コスト競争力強化のために生産拠点の集約化や集約先の設備の強化を図るなど、非常に厳しい経営環境に直面している中で、以下のような課題を抱えていると考えております。

    • 安全対策の更なる推進
    • 高品質/高付加価値製品の製造と徹底したコスト削減の両立
    • ますます厳しくなる環境・省エネルギー問題への対応
    • 製造/操業技術、ノウハウの共有と伝承
    • 設備/装置の老朽化対策

    一方で、ビックデータやIoTなど最新のICT活用により、これらの課題解決を加速させ、新たな付加価値を創出し、さらなる競争力強化につながることが期待されています。

    YOKOGAWAは、これまで最新・最高の技術と、計測・制御・情報の分野で長年培ったノウハウをベースに製品開発を続け、日本の産業基盤を支えるお客様と共に進化してきました。
    YOKOGAWAは、これまでと同様に、24時間365日のプラント安定稼働に貢献し続けると共に、お客様の新たな課題に対処し、お客様のビジネスの成長に貢献できる最良のパートナーとして、これからも努力を重ねていきます。

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