横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

自分たちのためのDX/業務効率化でデータ解析に注力し、彩りのある働き方への変革を推進するDIC株式会社様

DIC株式会社 堺工場 様 logo
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概要

DIC株式会社の歴史は古く、日本で雑誌の刊行や化粧品・食品などの包装パッケージの需要が拡大するなか、高品質でカラフルなインキの製造を開始し、時代に合わせた製品・技術開発により、成長を続けてきました。現在同社は、印刷インキ、有機顔料、PPSコンパウンドの分野で世界トップシェアを誇る企業となり、自動車、家電、食品等の分野に彩りを添える有機顔料や合成樹脂を幅広く提供しています。

大阪府にある同社の堺工場では、品質安定化のために行うデータ解析にかかる工数を大幅に削減し、よりモチベーションの高い働き方を実現するために、YOKOGAWAとともにデータ活用基盤システムを共創しました。

DIC株式会社 堺工場 様

 

お客様の課題とソリューション

データ解析にかかる手間

堺工場では、製造後にロットの運転状況を評価するためや、品質値に異常が認められたときにデータを解析しています。同じ品目の過去のトレンドデータと、当該のロットのデータとをさまざまな角度から解析し重ね合わせ、製造中にどのような事象が起こっていたのかを分析することで、品質の維持・向上につなげています。

データ解析を行うには、蓄積されている過去のデータを複数抽出し、グラフ上で時系列を重ね合わせるなど、解析の前準備に手間と時間がかかると言われていますが、さらに、堺工場の当該製造現場で生産している製品は200品目以上に及びます。中には一年に一度か二度しか生産しない製品もあり、過去のトレンドデータを抽出するのは大変手間のかかる作業でした。しかし品質に異常が見られた際にはその原因を必ず突きとめなければならず、製造部門のオペレータの負荷が高くなってしまっていました。

 

DXでムダを排除し、より価値の高い働き方を

エンジニアリング部門でマネージャを務めていた長尾 敦氏は、データ解析の前準備でオペレータたちに負荷がかかる状態を改善したいと考えていました。トラブルが起こるたびに、データを揃えることに忙殺されるのは、本来あるべき業務ではないからです。

その頃、すでに導入していた品質安定化システム Digital Plant Operation Intelligence (DPI) のフォローアップのために、YOKOGAWAが工場を訪れました。YOKOGAWAが紹介した他社でのDPI活用事例に着想を得た長尾氏は、堺工場の業務を効率化するための新たなソフトウェアソリューションを共創することを、YOKOGAWAにもちかけました。SAPの持つ品目・品質データと、YOKOGAWAのプラント情報管理システム Exaquantumが蓄積している生産制御システム CENTUM VPの製造データを連携し、さらにユーザインタフェースとして運転効率向上支援パッケージ Exapilotを用いることが議論されました。

 

データ活用基盤システムの構築

相互理解を深めるための打ち合わせが何度も行われました。エンジニアリング部門からは、製造部門の経験のある清水 康平氏がメンバーに加わり、オペレータの方々が普段どのような作業をしているか、どのような機能があれば業務が効率化されるか、またYOKOGAWAのソリューションがどのように活用できるかについて、活発な情報共有が行われました。 その結果を受け、YOKOGAWAはExapilotを用いたデモシステムを構築し、提案しました。そのシステムは、工場の課題を解決するソリューション「データ活用基盤システム」として正式に採用されることになりました。

データ活用基盤システムの構築

 

必要な品目・装置類・期間のロットデータを容易に抽出

データ活用基盤システムでは、必要なデータを素早く簡単に抽出することができます。多品種少量生産の場合、大量のデータの中から、各ロットに該当する装置類、および関連する各種センサ類に至るまで、必要なデータを選別し抜き出すのは至難の業です。データ活用基盤では、ボタンクリック操作のみで、同じ品目、同じ製造設備のデータを容易に抽出することができます。

画面上で選択したデータを出力し、DPIに登録することで、DPI上で容易に品質・製造データを紐付けて分析することができるようになりました。

また、現場でもシステムの簡単なカスタマイズや設定ができるようになっています。

データ活用基盤システムの検索画面
データ活用基盤システムの検索画面

 

システム導入の効果 ~彩りのある働き方へ

データ活用基盤システムの導入により、データ解析の前準備にかかっていた時間は劇的に削減され、本来のあるべき姿である、データ解析そのものに注力できるようになりました。

現場では、データを見ながら、どういう事象が起こっているのか、その要因は何か、などと考えを巡らせ、オペレータ同士で意見交換をすることも増えてきました。データ解析の質の向上はもとより、よりレベルの高い業務にチャレンジするモチベーションの高い働き方が実現されつつあります。

DPIの画面例
DPIの画面例

導入効果:

  • トレンドデータを抽出し、グラフを重ね合わせるまでにかかる時間が大幅に短縮(約30分)。
  • ボタンクリックのみで操作を進めることができるので、経験の浅いオペレータでも容易にデータ収集を行うことができる。
  • データの準備ではなく、データ解析そのものに注力できるようになった。
  • データを見ながら考察する時間が増え、新たな知見を得る機会が増えた。

 

お客様の声

製造部門の皆さん

(左から)瀧様、 尾形様、 佐嶋様、 山本様
(左から)瀧様、 尾形様、 佐嶋様、 山本様

Q. アクリル樹脂製造プロセスについて教えてください。

「製造する品目は、一現場あたり200種類以上あります。製造にかかる時間はまちまちで、バッチあたり12時間から48時間かかるものと多岐にわたります。反応時間が長いものが多く、最近の高機能製品は手間のかかるものが増えてきています。班が交替するときは、製造の様子や気になる点など、情報をハンズオーバーしています。」

「トータル11個の反応釜があり、時間帯によっては少ない人数で運転しなければならないこともあります。」

「DCSで同じように製造していても、どうしても4M(原料 Material、設備 Machine、オペレーション huMan、工程・手順 Method)等の違いがあり、毎回コンディションが異なります。運転中はデータを見ていて、分析値から反応の進み具合を判断しますが、判断は難しく人によって判断基準が異なることもあります。」

 

Q. データはどのようなときに利用されているのですか?

「反応終了後に、そのロットはどうであったかを確認するのにデータを見ています。これまでは十数個のタグをExcelで操作して、データの時系列を動かして、複数のトレンドグラフを重ね合わせて、とかなり作業負荷が高かったです。」

「作業経験の浅い人や、PC操作に不慣れな人は、データの抽出や重ね合わせに苦労していました。」

「もし性状が規格を外れたりすると、その原因が分かるまで仕事が終わらないという雰囲気もありました。手間と時間をかけて過去データを揃えてから解析を行わなければならなかったので、かなり大変でした。」

 

Q. データ活用基盤システムを導入してみて、いかがですか?

「時間短縮になりました。1時間が30分、状況によってはもっとかかっていた作業も数十分で終わるようになりました。これまではまさに人海戦術で頑張っていたという状況でした。」

「時間短縮になったことで、主である解析に使える時間が増えました。私たちのノウハウの多くは、先輩が『こういう異常は、こういう原因によるものだ』と教えてくれたものでしたが、あらためて製造するものに対する原理原則を学ぶことができるようになり、データについて考察する時間もとれるようになりました。」

「データを見るのは楽しいです。データを見ていると、なんとなくですが新たな発見ができている気がしています。」

現場では、解析結果について話し合う様子もよく見られる
現場では、解析結果について話し合う様子もよく見られる

 

Q. 今後のチャレンジについて

「なぜうまくいかないのかなど、要因について考えることに時間が使えるようになりました。今後は品質や製造状況の解析だけでなく、データを活用して配管の詰まりなど設備の故障の予測もできるようにしたいです。」

「製造中にリアルタイムに過去データと比較して、反応の進み具合や温度上昇の様子などをガイドできるようにしたい。可能なことは全部自動化していきたいです。」

「私たちの工場には、新しいことをどんどんやってみようというチャレンジの風土があると思います。データ活用基盤システムのようなツールを使ってアウトプットを出し、労働環境を良くし、自分たちが輝ける現場を作れればと思っています。DXは働き方改革の一つの方法だと思います。」

「データを溜め、解析するのが容易にできるようになると、品質が上がるだけでなく、時間が有効に使えるようになって先手々々の業務改善ができます。これは現場の総合力が上がり、働き方の改善につながるだけでなく、安全にも直結するので、非常に重要なことです。」(小河様)

小河様(グループマネージャ)、森脇様
小河様(グループマネージャ)、森脇様

 

エンジニアリング部門の皆さん

Q. もともとどのような課題意識をお持ちでしたか?

「品質を安定化しなければならないというのは当然あったのですが、働き方をなんとかしたいという思いが強くありました。品質トラブルが起こると早く対処しなければなりません。データを揃えているだけで残業になるなんて、嬉しくもない後ろ向きの業務です。そういうことに時間を使わないで済む、同じことを何回もしなくて済む、楽しくない思いをしなくて済むためにはどうすれば良いかを、ずっと考えていました。」

長尾様(プロジェクトリーダー)
長尾様(プロジェクトリーダー)

 

Q. 製造部門の皆さんの声はいかがでしたか?

「たくさんの意見が出て驚きました。それだけデータ活用基盤システムを使ってくれているということで、素直に嬉しいです。ITやDXの導入は設備の更新などと比べて費用対効果が示しづらいので、投資判断が難しいことが多いようですが、データ活用基盤システムは効果が十分に実感できるものであったと思います。」

「私たちはエンジニアリング部門にいますが、製造の経験もあり、ものづくりや、現場の問題意識も理解しています。その経験が活かされたことで、データ活用基盤システムが現場で活用できるものになったのだろうと嬉しく思います。」

清水様
清水様

 

Q. 今後のチャレンジについてお聞かせください

「工場としては、製造現場の要望をもっとサポートしていけるようにしたいです。元気に働けて、実のある仕事ができる環境を作っていきたいです。」

「データ活用基盤システムのデータと設備情報をつなげていくことで、もっと効果が大きくなると考えています。データ解析を進めていきたいです。実は、自分たちで他社のバルブの監視ソフトとデータ活用基盤システムをつないでみました。DCS上ではバルブは全開になっているはずなのに、実際は詰まりがあって80%しか開いていなかったりということがあります。異常時にDPIにDCSのデータとバルブのデータを取り込んだことで、解析にすごく役立ったことがありました。トラブルの要因が原料系なのか、制御系なのか、設備系なのか、データによって切り分けられるようにしていきたいですね。」

「現在、私は本社に異動となり、全社工場の生産デジタル技術の推進を行っています。デジタル人材が豊富な化学会社を目指します。ただデジタルが分かるだけではなく、現場を知っていて問題意識のある人たちをつないでいきたい。部門や役割、さらには工場も超えてつながれる組織を作り、興味のある人、熱意のある人がDXを活用したさまざまな改善活動に参画できるようにしていきたいと思っています。」(長尾様)

(清水様撮影)
(清水様撮影)

 

Q. YOKOGAWAへのコメントをお聞かせください。

「コンサルティングに入ってもらい要件を決めながらシステムを作ったのは、私たちにとって初めての出来事でした。YOKOGAWAはまず「困っていることは何ですか?」という問いから入って、私たちの実現したいことを聞いてくれました。」

「ExapilotやDPIについての印象ですが、統計学やデータ解析だけをやってきたベンダが作ったのではない、なんていうか、ものづくりの現場のことが分かる、経験のある人が作ったものだと感じていました。そういう“匂い”がする製品だなと。これを発展させれば便利に使えるという予感がありました。」

「既存製品にこだわらず、さまざまな機能をミックスしたようなものを、どんどん提案していただきたいです。コンサルティング、課題解決型のサービス、新しいソリューション、ユーザの立場からすると他社のシステムも組み込まなければならないこともあります。得意なことをどんどん言っていただき、一緒にやっていければWin-Winになります。」

「DICは内製文化で、これまでもさまざまな社内アプリケーションを作ってきましたが、最近では工数もないし、製造ラインや工場が違っても使えるような汎用的なものが欲しい。世の中にはなかなかそれを満たす製品がないと思っていましたが、YOKOGAWAと共同作業することで、私たちでも汎用的に大いに活用できるようなものを作り出すことができました。」

Q. YOKOGAWAへのコメントをお聞かせください。

業種

  • 化学

    化学品製造の新しい“あたりまえ”を創出する DX ~ ワークキングスタイル変革の実践 ~

    私たちの暮らしと日本のものづくりを支える化学産業。石油化学、機能性化学、ライフサイエンスなど分野も広く、製造現場が抱える課題や解決方法は多様化しています。「人」を中心として化学品製造業を取り巻く環境も大きく変わりつつある今、YOKOGAWA はDigital Transformation (DX) により実現される「新しい働き方」についてお客様と共有し、共にプラントの価値最大化を目指します。

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