横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

「見える化」が生み出す価値 ~全員参加の操業効率向上で、医と食の分野のお客様にむけた製品を安定供給する協和発酵バイオ株式会社様~

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協和発酵バイオ株式会社

概要

協和発酵バイオ株式会社は、独自の発酵技術で各種アミノ酸や医薬品原料などを製造・販売するバイオケミカル企業です。アミノ酸はヒトを含む生物の体を構成するたんぱく質の構成成分で、生物の発育・成長・体の維持に欠かせない重要な物質です。アミノ酸には体内で合成されるもの(非必須アミノ酸)もありますが、特に栄養上重要な必須アミノ酸は、食事や機能性食品により摂取する必要があると言われています。またアミノ酸は、医薬品、健康食品、化粧品、飼料や肥料などの原料として、幅広く活用されています。
協和発酵バイオ株式会社は、アミノ酸の主要な製法の一つである発酵法を発明し、アミノ酸の工業生産を世界で初めて可能にしたことでも知られており、現在も医薬・医療・健康食品の分野において、日本や世界の人々の健康に貢献しています。

2018年、同社の山口事業所は、保全を手掛ける協和エンジニアリング株式会社と協力して、IoTの導入によってさらなる設備安定化を図り、プラント全体の操業効率を最大化することを目的に、YOKOGAWAのSushi Sensorの導入を決定しました。センサによって製造に欠かせない装置の状態が可視化され、故障の予兆をつかむことができるようになったほか、運転に携わるオペレータの方々の意識にも、大きな変化をもたらしました。

 

課題とソリューション

絶対に避けたい予期せぬ製造の停止

協和発酵バイオ株式会社の製造プロセスはバッチプロセスが多く、作られる製品の種類によってレシピや工程が異なり、一回のバッチは数日間に及びます。製造ラインには、ポンプ、ファン、遠心分離機、撹拌機などの重要な装置が用いられています。万が一これらの装置が壊れてしまうと、修理や更新に数千万円もかかってしまうことがあります。なによりその間製造がストップしてしまうため、予期せぬ装置の故障は絶対に避けなければなりません。

これらの装置の点検は、点検業者に外注されています。バッチの合い間を利用するなどして、毎月数日間にわたって数百基の装置の点検が行われています。山口事業所はこうした定期点検に加え、IoTを用いて装置の状態を常時把握し、傾向監視が行えるよう、YOKOGAWAのXS770A 一体形無線振動センサ(Sushi Sensor)を導入することにしました。

 

およそ100台のSushi Sensorを設置

事業所全体でおよそ100台のSushi Sensorが、各製造ラインにある重要な装置に取り付けられました。定周期で測定される振動値と温度は、クラウド上に保存、蓄積されます。工程の途中でも装置の状態を把握できるよう、データ収集周期は10分または30分に設定されました。

 

システム構成図
システム構成図

Sushi Sensor
Sushi Sensor

クラウドに集められたすべてのデータは、現場のオペレータから保全員まで、全員が見られるようになっています。YOKOGAWAの産業用IoTデータロギング&ダッシュボードを用いていつでもデータが見られるので、異常があればすぐに分かります。さらに、運転操作によっては、装置の挙動に影響が表れる場合があることも分かり、オペレータの皆さんが装置の状態や保全について意識するきっかけとなりました。

産業用IoTデータロギング&ダッシュボードの画面
産業用IoTデータロギング&ダッシュボードの画面

 

しきい値を設定し装置の状態を監視

およそ100台のSushi Sensorには、しきい値が設定されています。異常な振動値が検出された場合には、アラートが管理者に通知され、現場で解決できない事象の場合は、保全員が対応を行います。

一般的な連続プロセスと異なり、山口事業所のバッチプロセスにしきい値を設定するには、次のような難しさがありました。

  • 製造プロセスは数日間にわたり、工程間の移送を何度も繰り返す
  • 攪拌時や移送時のみ稼働する装置がある
  • インバータ制御で回転数・振動が一定でない
  • レシピによって振動などの値が異なることがある

センサの設置当初こそ、試行錯誤しながらこまめにしきい値を設定することもありましたが、現在では蓄積されたノウハウをもとに、それぞれ適切なしきい値で管理されています。

 

Sushi Sensorによる異常の検知

Sushi Sensorによって、これまでに2回、大きな故障を未然に防ぐことができました。どちらも異常振動のアラートが通知され、現場で点検を行ったところ装置の基礎取付ボルトが緩んでいたケースと、オーバーホールしたところ実際に装置が壊れていたというケースでした。
装置が壊れてしまうと、事後保全のために急きょ何日間も製造を止めることになってしまいますが、故障の予兆さえ事前に分かれば、故障する前に計画的に対応することができ、ダウンタイムを最小に抑えて操業効率を向上することが可能です。

 

故障に至るまでに何が起こっているのかが分かる

Sushi Sensorを導入したことで、装置が故障する前に装置に何が起こっているのかや、どういう状態を経て故障に至ったのかが、データで見えるようになりました。それまでは、装置の状態を定量的に知る術はなく、異常のありそうな装置があれば、何度も現場に行って触るなどして確認するしかありませんでしたが、今では故障する前のいつ頃から、どういう事象が起こっているのかを把握することができます。装置の整備前と整備後の振動の違いも明確に分かるようになり、これらの情報は装置の状態診断のために活かされています。

異常振動を捉えた例
異常振動を捉えた例

 

データの見える化と共有が生み出す効果

Sushi Sensorのデータが見られるようになったことで、現場のオペレータの皆さんが保全にも関心を持つようになるという効果がありました。それにより、装置の状態にも目を向けながらの運転が行われるようになりました。

また、山口事業所では保全に関する情報を管理するために、YOKOGAWAの設備保全管理システム eServを導入しています。装置や機器ごとの保守点検計画や点検結果を登録して管理しており、Sushi Sensorが異常を検知した際にも、eServに登録されている過去の保守・故障履歴を参考にしながら対応がとられています。
eServのユーザ数は多く、保全員だけでなくオペレータも保全の情報を見たり、装置に気になる点があれば書き込んでおくなど、当たり前のように活用されています。保守計画の立案や見直し時には、eServに登録されたデータを見ながら適切に計画を見直すなど、全員で操業効率の向上に取り組んでいます。

 

お客様の声

山口事業所でSushi Sensorの活用を進めているお二人にお話を伺いました。

-- Sushi Sensorの導入のねらいは?

「私たちの製品は、医薬・医療・健康の分野でお客様にお使いいただいています。設備や製造の安定化を図ることで、お客様に製品を安定供給し続けることが何より大切だと思っています。Sushi Sensorはそのためのツールの一つです。 また、私たちはSushi Sensorを保全部門のためのツールとしてではなく、現場オペレータのツールとして導入しました。保全員だけでなく、現場のオペレータもSushi Sensorのデータを見ています。保全部門と製造部門が一体となってプラントを運転することができている点や、大きな故障を未然に防げているという点では、期待どおりと言えます。」
「点検作業の外注は現在も行われています。もちろんコストダウンは行いたいのですが、保全基準で決められていたり、必ず人の手で行わなければならない点検もあるためです。Sushi Sensorの導入は、データの見える化などの面で価値があると思っています。」

 

-- 現場の皆さんに変化はありましたか?

「ダッシュボードを使って自分たちでデータが見られるようになったことで、運転や保全に対する意識が変わったように感じます。月例の点検項目の見直しを行った際に、オペレータからSushi Sensorの点検項目を追加しようと声が上がるなど、普段の点検にも興味を持つ人が増えたようです。点検項目には、Sushi Sensorの振動値と電池残量のチェックが含まれています。」
「データが可視化され、共有されているということは、オペレータの参画意識にもつながっているのではないかと思っています。Sushi SensorやeServを活用して、メンバー同士の情報共有も積極的に行われるようになっています。」

 

-- しきい値の設定や見直しはどのように行っていますか?

「弊社の製造プロセスは工程の移送を何度も繰り返す上に、インバータ制御の装置があったり、ファンは一定で動いているけれどもポンプは移送時のみ動くなど、しきい値の設定には試行錯誤しましたが、現在は適切な値が設定できていると思います。なお、YOKOGAWAさんにソフトを改造してもらって、しきい値を何回か超えたらアラートを出すようにしています。」

 

-- Sushi Sensorは屋内外問わず設置されているのですか?

「屋内だけでなく、屋外にも設置されています。一部、過酷な条件下に付けられているものもありますが、問題なく動いています。」

 

-- 今後の取り組みについて教えてください。

「故障に至るまでに“何が起こっているのか”が見えるようになったことは、私たちにとってすごい価値だと思います。データを蓄積していくことで、保全活動の改善につなげることもできますし、前回の異常時と同じ挙動を見せたらすぐに通知がきて分かるようになれば予防保全を実現できます。YOKOGAWAさんや代理店の新川電機さんには、AIの導入など引き続き良い提案をいただければと思います。」
「新しい製造ラインができることもあり、追加で二十数台のSushi Sensorを発注しているところです。Sushi Sensorのようなツールを活用しながら、より良いものづくりをしていきたいですね。」

協和発酵バイオ株式会社 技術部 中本 裕紀様(左) 協和エンジニアリング株式会社 技術部 設備担当 水越 聖人様
協和発酵バイオ株式会社 技術部 中本 裕紀様(左)
協和エンジニアリング株式会社 技術部 設備担当 水越 聖人様

業種

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  • 医薬品

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