Well-being
  

「食」の分野のWell-beingの扉を開く、未来へのシナリオ

「食」は、生きものにとって生命を保つのに欠かせないものであることは言うまでもありませんが、人類にとっては、心を豊かにしたり、人とのつながりを深めたりするものでもあります。Well-beingとも呼ばれる、人々にとって身体的、精神的、社会的に豊かな生活は、食に支えられているといっても過言ではありません。しかしながら、その食をめぐる懸念がますます高まってきています。人口増加や経済発展などにより、世界の食料需要量は今後も伸び続け、食料確保に対する不安は社会課題の一つとなっています。一方で、食についての希望として、食の最適化への期待もあります。消費起点で食のバリューチェーンが最適化され、一人ひとりが健康を維持向上しつつ、自分に合った食のスタイルを確立できることへの期待です。

食料確保と食の最適化

― 「すべての人の豊かな生活」への希望

食料確保に対する不安は、世界がいまなお解決できていない課題です。国連食糧農業機関(FAO)など複数の国際機関が共同で発表した、食料保障と栄養をめぐる現況*1では、2020年において、世界の人口の3割以上が、食料が十分でないなどの「中程度の食料不安」かもしくはその日食べるものがないといった「深刻な食料不安」を抱えています。

持続可能な開発目標(SDGs)の「2. 飢餓をゼロに」では、具体的なターゲットの1番目として、「2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする」が掲げられています。また、具体策として、農業の生産量を増やすための技術開発をすることや、需給が調節され適正に価格が決定され、市場が適切に機能することが掲げられています。

一方で、食の世界の最適化が進んでいくという希望的な未来像を描く人々もいます。医療分野で一人ひとりの身体の状態に応じて診療をおこなう個別化医療や、最先端技術で医療サービスを高度化するスマート医療が始まっていますが、これと同様に食の世界でも、一人ひとりの健康状態や嗜好に応じた食の提供や、フードテック革命による新たな食のバリューチェーンの構築がされていくという考えです。

食料確保に対する不安解消も、食の世界の最適化も、食におけるWell-beingにつながるものといえます。これらの実現が、すべての人の豊かな生活につながるからです。

植物工場

「よく考えることも、よく愛することも、よく眠ることも、きちんと食べるからこそ」
- "A Room of One's Own," Virginia Woolf, September 1929

「すべての人の豊かな生活(Well-being)」。YOKOGAWAはこれを、2050年に向けたサステナビリティ目標「Three goals」の一つに掲げています。この目標に向けて、食を、注力して取り組む分野の一つとしています。

「自律型フード社会」を、共創で実現する

― YOKOGAWAが描く未来へのシナリオ

先行きが不透明で予測が困難な時代にあって、社会課題の解決に向けた新たな価値をいち早く提供するためには、未来を見据え、共通の価値観・ビジョンをもってお客様やサプライヤーと共創することが必要です。YOKOGAWAは、すべての人にとって望ましく、YOKOGAWAが実現したいと考える食の未来の世界観をお客様やサプライヤーに提示し、共感を得ることが共創のきっかけになると考えています。食の分野の事業機会の探索に向け、 YOKOGAWAが貢献してきたことや貢献できることを整理した上で、実現したい世界観をいわば未来へのシナリオとしてまとめています。

これまでもYOKOGAWAは、オイル&ガスや石油化学、素材産業のお客様のみならず、食品業界のお客様向けにも現場から経営まで業務を幅広く支援するソリューションを提案してきました。食の安心・安全をもたらす高い品質とコストダウンの両立を追求する食品業界のお客様に対し、品質管理や工場運営の最適化を支援するさまざまなソリューションを提案し、実績を重ねてきました。これらは日本国内向けが中心ですが、その知見を海外拠点とも共有し、グローバルに提案活動を拡大することを進めています。

食品業界向けに開発している新たなソリューションの一つに、YOKOGAWAの高感度蛍光計測技術を生かした、微生物コンタミ管理ソリューションがあります。食品業界は衛生管理に徹底して努めていますが、異物や微生物混入による食品の回収事例や食中毒事例が依然として発生しています。特に微生物混入については検査に長時間かかるため、検査結果を製造工程にフィードバックして被害を未然に防ぐことが困難です。YOKOGAWAは、食品中に混入した微生物を従来に比べ容易に計測できる遺伝子センサのプロトタイプモデルを開発し、実際の飲食料品を用いて原理の検証に取り組んでいます。この原理が検証されると、食品への微生物混入が迅速に判定できるようになり、食の安全の確保とコスト削減に貢献できます。

食品製造工程以外の食の分野でも、YOKOGAWAは、新たな価値の創出に向けた挑戦をしています。植物工場では、光量・温度・湿度など環境を制御することで安定した品質で植物を栽培することができます。YOKOGAWAは、植物栽培につきものの病害虫や、葉先枯れ症などの生理障害の発生を抑え、植物工場でのより確かな収穫を支援する研究に取り組んでいます。この研究は、機械学習・画像認識技術を使って、苗の植え付け後に計測した植物体データと画像データ、および植物工場の環境データから予測モデルを作成し、品種ごとに最適な環境条件を導き出すというものです。導き出された環境条件で栽培することで、歩留まりのよい収穫が期待できます。

対話する人たち

このようにYOKOGAWAは、食の分野での社会課題解決に向けた取り組みを進めています。YOKOGAWAが未来へのシナリオで描いている、実現したい食の未来は自律型フード社会です。自律型フード社会は、一人ひとりの健康状態や幸福感に適応し、かつ作り過ぎや不足、無駄な輸送を生じさせない社会です。こうした社会では、消費者一人ひとりの食の嗜好や消費行動がデータとして集約され、それをもとに生産のあり方が定まる新しいバリューチェーンの実現が必要となりますが、それは個々の組織でできるものではなく、社会のつながりによる共創が必要です。
YOKOGAWAは、共創を重ねながら、未来へのシナリオで描いた世界観を実現するために、幅広い産業で蓄積してきたシステムインテグレーションとエンジニアリング能力を生かして、技術開発やソリューション提供を行っていきます。

YOKOGAWAにとって未来へのシナリオとは、お客様やサプライヤーとともに食の分野のWell-beingの扉を開くためのものです。事業を通じて環境や社会をめぐる課題を解決することを目指し、食の分野でも、すべての人の豊かな生活(Well-being)の実現に向けて新たな価値を創造していきます。


YOKOGAWAが描く未来のシナリオ

Food for Well-being

Food for Well-being

自律型フード社会の実現で、あなたらしい食の幸せがもたらされます。YOKOGAWAの考える、食の分野の、すべての人にとって望ましい未来の世界を描いた「Food for Well-being」はこちらでお読みいただけます。


参考文献

*1 : "The State of Food Security and Nutrition in the World 2021," FAO, IFAD, UNICEF, WFP and WHO, July 2021