100周年記念誌「時代を超えて-Always Reaching Higher-」
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制御事業のビジョン「VigilantPlant ~理想の工場」を発表海堀 周造金沢事業所53YOKOGAWA 100th Anniversary 海外での評価が向上して優先供給契約締結が相次ぎ、制御事業はようやく軌道に乗ってきたが、欧米市場では知名度の低さから導入検討の土俵に乗れないことも多かった。制御市場でのブランディングの重要性が叫ばれ、当社は「寝ずの番」を意味する「vigilance」という言葉を掲げたキャンペーンを開始した。vigilanceは、「お客様のプラントを24時間365日見守る」というYOKOGAWAの企業姿勢を示し、「お客様に提供している価値として認知されているもの」を可視化したものとして海外拠点に歓迎され、社内の求心力となった。お客様にも着実に浸透し、2005年には「VigilantPlant~理想の工場」という制御事業のビジョンに発展する。発表時に内田社長が制御事業でグローバルNo.1を目指すビジョンを語り、安全計装システム「ProSafe-RS」の発表と相まって注目を集めた。 同年、海外制御事業を統括するYokogawa ElectricInternationalをシンガポールに設立。24時間365日お客様に対応するレスポンスセンターも各国に展開し、文字どおり「寝ずの番」としてお客様の制御システムを見守る体制を強化した。こうした取り組みにより、海外売上高は2002年からの5年間で2倍強の成長を遂げ、グローバルプレーヤーとして認められるに至った。2008年にはVigilantPlantを支えるプラットフォームとして「CENTUM VP」を発表。お客様の生産現場に混在するさまざまな制御・情報システムを効率的に統合できる環境を実現し、生産制御システムとしての完成度はさらに高まった。2006年には新長期経営構想の第2のマイルストーンとして、戦略投資分野と2010年度の数値目標を設定した。2005年までの構造改革をベースに新事業の拡大による大きな成長を目指したもので、計測機器事業や、2005年に金沢に事業所を構えたライフサイエンス、2007年に相模原事業所での生産を開始したフォトニクスなどの新事業の発展に積極的に取り組んだ。2007年4月には社長に海かいほり堀周しゅうぞう造が就任したが、DRAM価格急落による半導体投資抑制で測定器や半導体テスタなどの事業が赤字化、好調だった海外制御事業の利益率の低下、国内需要の減速も重なり増収減益となった。 この時、価格競争に追従できないコスト構造、ソリューション領域へシフトする制御事業のビジネスモデルの変化などから、当社の事業構造は変曲点を迎えたと判断し、コスト競争力の強化やエンジニアリングの付加価値向上に着手した。2008年度は、9月のリーマンショックに端を発する世界経済の悪化、半導体市場の急変といった厳しい事業環境にさらされ、営業利益こそ赤字を免れたものの、繰延税金資産の取り崩しなどにより大幅な最終赤字となった。 この結果を受けて当社は、2009年度と2010年度を「次なる飛躍に向けた構造改革の時期」と位置付け、さらなる事業構造改革と固定費削減に着手した。半導体テスタの事業環境の悪化に加え、新事業についても市場の将来性や変化の見極めが不十分で想定していた事業展開がかなわなかったことから、ATE事業、フォトニクス事業、アドバンスト・ステージ事業から撤退を決定。脳磁計ビジネスは縮小、測定器ビジネスは横河メータ&インスツルメンツに統合、医療情報システム事業も分社化して、横河医療ソリューションズを設立するなど、事業ポートフォリオの全面的な見直しを図った。さらには希望退職者の募集という痛みを伴う施策も実施した。「vigilance」によるグローバル企業への変身新長期経営構想の第2のマイルストーンとリーマンショック

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