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YOKOGAWA

横河電機株式会社

雑誌掲載記事

安全・安定操業支援ソリューションと適用メリット

雑誌計装より 「”人・情報・制御”からみた安定操業のための要件」に掲載された内容です。

1.はじめに

経営効率の絶え間ない向上を目指すため、少人化やコスト削減を進めているプラントにおいて、安全・安定操業を実現することは極めて重要なテーマとなっている。その実現方法の一つとして、弊社は人・情報・制御が一体となって進化してく「運転操業システム」の構築を提唱している。(詳細は計装2007年9月号を参照

2.運転操業支援システム

Exapilotのフローチャート画面例

図1 Exapilotのフローチャート画面例

運転操業システムの中核となっているものはオペレータの業務を支援する「運転業務支援OWA(Operation Work Assistance)システム」である。このシステムの目的は「オペレータにとって必要な情報だけを最適なタイミングで受け取れるようにすることにより、安全・安定で高効率なオペレーションが行えるようにすること」と、「継続的に運転操業の価値を向上させること」である。

弊社ではOWA実現のためのコア製品として運転効率向上支援パッケージ(Exapilot)を2000年3月に発売を開始し、累計700を越えるプラントに導入して頂いている。(図1)

導入が進んだ主な理由は、第一に導入のし易さである。具体的には
(1)オペレータが簡単に構築できること。
(2)OPCインタフェースにより既存システムへの導入が簡単にできること。
(3)既存のコントローラの改造がほとんど不要であること。
である。

第二にベテランノウハウの伝承ツールとなることである。具体的には
(1)ベテランオペレータのノウハウをフローチャートやロジックチャートで置き換えることができること。
(2)チャートに文章、図、ビットマップの説明を貼り付けて "活きた標準運転手順書(SOP)"ができること。
     (詳細説明ドキュメントを呼出すボタンを付けることも可能)
(3)異常発生時に状態を分かりやすく表示し、的確に対処方法を伝える
      "活きた異常対応マニュアル"ができること。
(4)PDCA(Plan Do Check Act)で改善サイクル回すことにより、常にシステムを進化させることができること。
である。

3.OWAの実現を阻む問題点

Exapilotの導入が進む中、最近ではOWA実現の障害となる問題が発生している。問題は数多くあるが、具体的な例を「PDCA」に分けて、下記に説明する。

3-1. 「P、D」制御システムの統合化対応
近年、制御システムの統合化が進んだことにより、複数のプラントを一人のオペレータがオペレーションするようになっている。ここで問題になってきたのが、システム間での考え方の違いである。特にアラーム&イベントについてはオペレータが最も活用する情報源であり、表現の違いで判断を誤れば、事故の原因になりかねない。それぞれのシステムを統一した考え方で再定義できればよいが、現実的には定義する項目がないなど、無理な場合が多く、統合する仕組みが必要になっている。
また、それぞれのシステムが従来の頻度でアラーム&イベントを発報すると、一人のオペレータが対応できる処理量を越える場合(アラームの洪水)があるので、アラーム&イベントを適切に抑制する仕組みも必要になっている。

3-2.  「D」オペレーションの"きっかけ"通知
全てのオペレーションがExapilotでSOP化できれば良いが、全てがSOP化できるわけではない。ベテランノウハウの中には、「XXX事象(アラーム&イベントだけではない)が発生したら、YYYを調べて、ZZZ処理を行う」といったレベルのものも多い。また、オペレータもスタッフも少人化が一段と進み、ExapilotでSOPを作る余裕が少なくなってきている現状では、フィルインザフォーム(FIF)形式で簡単に導入できるパッケージで、何らかのオペレーションを行う可能性のある事象の発生を捉えて、オペレータに対処方法を通知してくれる仕組みが必要になっている。

3-3. 「C」解析支援ツール
PDCA改善サイクルの中では解析の過程が人財教育の面で効果が大きいが、難しい作業である。難しさを軽減するためには、起こった事象の実績を統計的に判断するための支援ツールが必要になっている。

3-4. 「A」改善ソリューション
むだなアラーム&イベントが発生しないように根本的な原因を除去するソリューションが必要になっている。

4.OWA実現に向けたソリューション

第3項の問題を解決するソリューションの一例を紹介する。

4-1. 制御システムの統合化対応ソリューション
システム毎に異なるアラーム&イベントを正規化/標準化し、メッセージの洪水を防ぐための仕組みとして、弊社は統合型アラーム管理パッケージ(CAMS for HIS)の導入を提案している。

CAMSとはConsolidated Alarm Management Softwareの略称で、弊社のDCSであるCENTUM CS3000システムのヒューマン マシン インタフェース(HIS)上で複数システムのアラーム&イベントを統合して監視する仕組みである。

弊社のシステムでは、安全計装システム(ProSafe-RS)、ネットワークベース生産システム(STARDOM)、統合機器管理ソフトウェアパッケージ(PRM)が統合可能で、他社システムも統合できる。その主な機能を下記に述べる。
(1)アラーム&イベントの属性定義
    ・メッセージ名称の統一、タイムスタンプの表記方法の統一、重要度のレベル合わせ
    ・識別子(アラームの目的、重大性、対処までの許容時間など)による優先度付け
    ・付加価値情報(アラームの発生原因、対処方法)の付加

(2)統合ウィンドウ
    

    ・メッセージモニタウィンドウにより一目でプラントの状態が直感的に
      把握できる。
      ウィンドウはブラウザ、メッセージ一覧、Shelving、フィルタ、オンラ
      インフィルタエディタの領域に分かれており、状況に応じて適宜
      フィルタリングして表示することができる。(図2)
 

図2 CAMS for HISのメッセージモニタウィンドウ

(3)アラーム&イベントの抑制
    ・Suppression
    タグを装置単位などのグループに分け、装置のシャットダウン時に発生する不要なアラーム&イベントを
    一括で抑制できる。また、同じアラームが複数回発生した場合に最新の10回のみを表示させることがで
    きる。

(4)アラーム&イベントの統合監視
    ・Filtering
    ユーザ名、目的、重要度などのメッセージ属性をキーにして表示監視するメッセージを絞り込むことがで
    きる。
   
   ・Sorting
    発生時刻、対処までの許容時間、重要度などのメッセージ属性をキーにして表示監視するメッセージを
    並び替えることができる。

  
   ・Eclipsing
    同じタグから発生した複数のアラームの中から一番重要なものだけを畳み込んでツリー表示できる。
   (必要があれば畳み込んだアラームも表示可能)
  
    ・Shelving
    優先度の低いアラーム&イベントを一時的に別フォルダに移動(棚上げ)することができる。

    ・Load Shedding
    短時間に多数のアラーム&イベントが発生した場合、重要アラームを見落とさないようにするために、
    あらかじめ設定しておいたフィルタを自動的にかけることができる。

4-2. オペレーションの"きっかけ"通知ソリューション
オペレーションの"きっかけ"はプラントによりさまざまであるため、多くのソリューションが考えられるが、ここでは代表的なものを紹介する。

(1) PCSイベント音声変換パッケージ
CENTUMコントローラから発報された重要なアラーム&イベント
メッセージに対応する音声ガイドを出力する。本パッケージは発
生事象の詳細と対処方法をファイルに登録するだけで定義できる。
音声ガイドであるため、画面から離れているオペレータにも対処方
法を指示できる。聞きそびれた場合は履歴画面にてメッセージ内
容を確認することもできる。(図3)
 
                                 

図3 PCSイベント音声変換の履歴画面

(2)領域監視パッケージ
装置の入/出の温度など2変数の関係を二次元の領域で監視(最大で100組)する。入力変数の移動平均演算や監視入/切の判定処理 ロジックを組み込むことができる。
監視領域を外れた場合に、警報やメールをオペレータに通知することができる。また、ヒストリアン データ「Exaquantum」があれば、過去の実績を読み込んで領域決定の支援を行うことができる。(図4)  

(3) HH/LL事前警告パッケージ
HI警報発報中のタグを監視(ダイナミックに対象タグを切替えて、最大で同時に50タグが監視可能)し、一定時間後にHHの発生が予測される場合にHH事前警報を発報する。LLについてもLO警報を使って同様に事前警報を発報することができる。(図5)

図4 領域監視一覧画面と詳細画面        図5 HH/LL事前警告機能
         

(4)放置監視パッケージ
放置監視パッケージオペレータの誤操作の原因の一つとして"忘れ"がある。
たとえば、V400WvXN0uP0b}uP

・一時的に調節計を手動モード(MAN)にして操作出力(MV)を調整した後に、自動モード(AUT)に戻すのを忘れた。

・指示計をキャリブレーションモード(CAL)にして現場計器を調整した後に、CAL解除を忘れた。
     
・重要タグのHI警報が発生していたが、他の処理を行っているうちに対処を忘れた。

                                             図6 放置監視画面
といった事態を防ぐための警報を発報することができる。
放置検知条件 はファイルにタグ名と状態(アイテム、ステータス)を定義(最大300個)するだけでのFIF形式になっている。
また、全タグの放置状態を一覧で監視することができるので、直引継ぎ時の確認などにも利用できる。(図6)
 
4-3. 解析支援ツール
解析に必要な統計処理とグラフ化を簡単に行える支援ツールを紹介する。

(1)Exaplog + Reportツール
アラーム&イベントと操作履歴を分かりやすくグラフ化することができる。各種フィルタで問題のあるイベントを絞り込むことにより、むだなアラーム&イベントの発生状況やオペレータ操作(手動介入)の頻度を解析できる。オプションのReportツールを追加すると、日報、週報、月報の自動印字出力が可能になる。(図7)

(2)Exaquantum
長期のヒストリアンデータ、締め切りデータ、アラーム&イベントを使った解析を行う場合に使用するツールである。Explorerにトレンド、イベント、データを自由に貼り付けて解析用画面を容易に作成し、解析を行うことができる。(図8)
 

 図7 Exaplogイベントサマリ画面        図8 Explorerによる解析画面の例

(3)設備傾向分析パッケージ
トレンドグラフの重ね合わせ、統計解析、 理想曲線表示、領域表示、ヒストグラム解析など種々の強力な解析機能を持つパッケージである。生産設備全体の改善を行う場合には、本パッケージが有効である。(図9)

 

 

                                                                        

 

     図9 設備傾向分析画面:散布図の例

4-4. 改善ソリューション
不要なアラームの発報を改善するためのソリューションを紹介する。

(1)運転条件に応じたアラームしきい値設定パッケージ
プロセスの運転状態に合わせてコントローラに対し最適なアラームしきい値を設定することができる。プロセス内のタグを装置や系列などの単位にグループ分けし、各グループの運転状態に対応するアラームしきい値を定義する。運転モードには手動と自動があり、手動モードではオペレータが運転状態を指定するだけで、その状態のしきい値が設定される。自動モードでは、あらかじめ構築しておいた運転状態の遷移条件判定ロジック(Exapilot)に従って自動的にしきい値がダウンロードされる。また、しきい値の決定支援機能として現状のしきい値を一括して読み込むこともできる。(図10)
 
 

                図10運転条件に合わせたアラームしきい値設定画面


(2)運転条件に応じたアラーム一括抑制パッケージ
機能的には第4-4(1)項のアラームしきい値設定と同様で、アラームしきい値の変更が許されない場合に、タグのアラーム抑制(AOF)をダウンロードする機能である。
 

                                        

5. まとめ

DCSで完全自動化されたシーケンスの進捗状況を監視するためのSOP画面をExapilotで作成する例が増えている。理由は異常発生時に自動運転に慣れてしまったオペレータが対処に迷わないようにするためである。

4-2項で紹介したオペレータへのオペレーションの"きっかけ"通知ソリューションも、ベテランオペレータから見れば、役に立つのは1年に1度もないかもしれない。しかし、頻度が少ないからこそ、その時に適切に対応しなければならない。
運転業務支援システムはユーザの様々な要求に応えるために「小さな機能の集合体」となっている。それぞれの機能は、常時役立つものではないが、オペレータの運転操業には不可欠な機能と考える。弊社は安全・安定操業の実現のため、人・情報・制御が一体となり、PDCA改善サイクルで進化していく運転業務支援システムを今後も発展させていく。



CENTUM、ProSafe、PRM、Exapilot、Exaplog、Exaquantumは、横河電機(株)の登録商標です。
STARDOMは、商標です。
その他、本文中の製品名及び名称は、各社の商標または登録商標です。

掲載号:2007.12

<執筆者>
横河電機(株) IAシステム事業センター PAPMK部
赤松 信夫 (アカマツ・ノブオ)

赤松 信夫 (アカマツ・ノブオ) 

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