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雑誌掲載記事
「誰でもがベテランのプラント操作」
安全・安定操業支援ソリューションと適用メリット
「誰でもがベテランのプラント操作」
「運転支援から運転操業システムへ」
雑誌「化学装置」Plant&Processインタビューページに掲載された記事です。 プラント運転支援システムでは、次世代への技術伝承が最も重要な課題のひとつと言われていますが、「誰でもがベテランのプラント操作」を切り口に、当社運転支援関連ソフトウェアパッケージの企画から販売までの多くに携わってきた担当者が語ります。
はじめに

新名 伸仁氏
化学プラント運転支援システムの問題点
-開発背景についてお話ください。
新名 化学業界での運転支援にはさまざまな問題がありました。まず、主要製造業における手動運転の占める割合が依然として高いということです。そのため、各運転員の知識やスキルの差により、生産効率の違いが生まれました。もう1つは"2007年問題"です。高度成長期を支えた熟練運転員の大量定年退職による若手運転員へのノウハウ継承に危機感が高まり、緊急に対処することが望まれていました。
またプラント運転支援自体も転換期を向かえていました。私が入社した当時はAI運転支援システムが主流で、AI言語に精通したナレッジエンジニアが運転支援のノウハウをもっている専門家やベテラン運転員にインタビューし運転支援システムを構築していました。このシステムは化学産業だけでなく、石油、鉄鋼分野など向けにも作られました。
しかし、1990年代の後半になると、国際競争激化と高度成長期に作られたプラントの経年変化により、プラント運転方法の変更を頻繁に行われなければならなくなりました。AI運転支援システムはそれらの対応に時間と手間がかかり結果的に、オペレータが手動操作に切り替えて対応せざるを得なくなり、AI運転支援システムが次第に廃れていきました。そして、これらを解決するために開発されたのがExapilotです。
運転支援システムの概要
-特徴は。
新名 一言でいえば、オペレータの作業や単位操作などをフローチャート形式で記述するだけで運転支援システムが完成します。(1)利用するアイコン(工程部品)をマウスでドラッグして、(2)配置したい場所でドロップ、(3)アイコン間を結線し、(4)アイコン間のダブルクリックで表示される詳細定義ウィンドウにてパラメータを設定すれば、すぐにプラントで運用することができます(図1)。さらにオペレータ自身のノウハウを加味することによってオペレータ独自のプラント運転システムができ上がります。

図1 Exapilotl構築ウィンドウ
-運転状況はどのように確認するのか。
新名 図2のように、実行中のところは緑、一時停止中のところは黄、未実行のところは白、終了のところはグレーで表示されます。プラントのシャットダウンや立ち上げなど、現場と連携した確認作業が必要な工程では、コンファームメッセージウィンドウを表示し、1つひとつ確認しながら確実に作業を進めることができます。運転モードにはオフライン、試運転、通常運転の3つがあり、フローチャートを十分にテストして、安全で安心して実運転に使用することができます。 また6個のボタンでマニュアル操作を行う運転ツールバーを搭載しています。これは、認知科学の知見で、人が短時間に憶えられるのは7個程度といわれていたので、それを参考にして作りました。自由にアイコンを選択し、実行、終了や一時停止の操作を行ったり、工程の進捗をスキップさせたり、工程実行の手前で待たせたりすることで、プラントの動きに臨機応変に対応した運転が可能になっています。

図2 Exapilot運転ウィンドウ
-その他の特徴は。
新名 フローチャートで作成し、運転した手順を運転手順書として文書化できます。確認メッセージなどに詳細文書を参照するようなリンクを設定することで、詳細の手順MS明朝注意事項を参照したり、インターネット上のページを開いたりすることが可能なハイパーリンク機能を備えています(図3)。ソフトとの連携が容易なため、最近ではポンプ点検方法などの経験の無い人でもWindows Media Playerを使って作業を確認し、確認内容を現場に指示するなど画像と映像を組み合わせて知識を補完するケースが増えてきています。さらに当社以外の主要制御機器を、OPCという業界標準インタフェースで数多く繋いでいます。またベテラン運転員から若手運転員への技術伝承の道具としての役割も果しています。ベテラン運転員が若手運転員に運転ノウハウを伝授し若手運転員はそれをフローチャートにまとめます。その時、ノウハウの背景などをベテラン運転員から吸収することで、自分たちのスキルを上げています。

図3 Exapilot ハイパーリンク機能
さらに運転だけでなく、運転前の現場装置の準備や切り替え前のデータの確認にExapilotを使って作業を確実に行うことで、運転作業の安全性や効率を上げることができます。今後は運転支援からオペレータ業務全体の効率を向上させる機能を追加していきたいと思います。
-業績技術に関しては。
新名 操作タスク(手順)をフローチャートで表現する操作知識記号化技術、監視において人間が考えるパターンをロジックチャート形式で表現する監視知識記号化技術、そしてプロセスの状態を記号として表現する状態検知技術を融合させました。これによって定常、非定常運転やトラブル対応など、あらゆる運転状況にも活用でき、機器の工学モデルやニューロなどと連携することで、効果的な支援ができるようになっています。また直感的に使ってもらえるよう、認知工学の理論を応用導入し人間と機械とのインタフェース障壁を非常に低くしました。
-導入実績は。
新名 700プラントに導入され、そのうち国内が約90%を閉めており、化学関連業種には全体の約70%以上が導入されています。なお、最近では鉄鋼関係からの引き合いが増えています。
-具体例を。
新名 ある化学大手ユーザーではオレフィンをつくる際、反応器のコイル内壁にポリマーが付着するため、35日間運転し、3日間の停止(9時間)~洗浄(35時間)~起動(16時間)の作業が必要でした。また温度の変更変換などが手動主体で行われていたため、切り替えによるDCS操作回数の増加や運転員のスキルの差による工程時間にバラツキが生じる問題がありました。導入した結果、停止~洗浄~起動工程中のDCSタッチ操作がゼロになり、作業量も1/4に軽減しました。さらに200t/年の増産、安全性の向上を達成しています。
日本の技術を海外にも
-今後の展開は。
新名 販売に関して、現在海外での浸透が進んでいないため、知名度を高めて認知を広めていきたいと思っています。最近、石油系のメジャー会社への導入が決まり、韓国や台湾ではExapilotを使ってプラント運転支援システムを構築していますが、特に韓国では他社のDCS上に数多く導入されています。海外のオペレータは日本のオペレータのように自分たちで運転業務を改善する文化がないため、Exapilotの展開が思ったほど進んでいない状況ですが、いずれ、海外も日本と同様にプラント運転支援の浸透が進んでいくると考えています。日本発の運転支援ソフトとして海外に認知してもらうため、引き続き海外展開を推進していきたいと思っています。
また、最近Exapilotのユーザーが、自分たちで作ったフローチャートを販売していると聞いています。5年後か10年後か分かりませんが、運転時間を短くする運転ノウハウなど付加価値のあるフローチャートがユーザー間で流通するようになり、それが産業界会での商売の1つとして成立する日が来るかもしれません。たとえば、プラントメーカーやライセンサーなどがプラントやライセンスを販売するとき、運転ノウハウをフローチャートにした商品として納めるなどが考えられます。更にまた、フローチャートは隠蔽することができるため、公開したくな無い知識を隠すことで、より競争力ある運転ノウハウを商品化することができます。
21世紀は"知"の時代といわれていますが、正に"知"を売ることが商売になる時代になると思います。
-ありがとうございました。
<インタビューに答えた人>
新名 伸仁(ニイナ・ノブヒロ)
横河電機(株) IA事業部 システム事業センター PAPMK部
掲載号:2007.08

