横河電機がまず着手しなければならなかったのは、ボイラ燃焼方式の転換に対する制御装置の改修だった。既存の設備は、粉砕した石炭をいったんサイロに貯蔵し、必要な燃料をその都度ボイラーに注入する間接燃焼方式。機器トラブルや爆発の危険性が高く、燃焼効率も低かった。それを石炭を粉砕したあとすぐボイラに注入する直接方式に転換する。それにともないミル・バーナーの自動化方式も変えなければならない。既設の制御は給水系以外、ボイラ制御、ミル・バーナー制御は手動で行われていた。ボイラへの燃焼空気は全開で運転され、ボイラ燃焼効率も非常に低い状態であった。
ボイラ、補機、周辺設備も含め全て自動化したい。旧ソ連製石炭ボイラを直接燃焼方式に転換し、制御の信頼性と拡張性を考えて、アナログからディジタルへ転換する。さらに、オペレータの現行スキルも考慮し、既存のボードオペレーション方式を継承しながら、最新のデジタル制御技術を採用、スキルアップと安全運転教育のための訓練用シミュレータも導入する。
しかし、この顧客要求を実現するにあたり、決定的な問題が立ちはだかった。プラント建設時の資料がほとんどなかったのである。1980年代の建設・操業時の資料は、旧ソ連崩壊後の混乱で、ほとんど残っていなかった。唯一の図面は、ロシア語で手書きのプラント全体図のみ。ユニットごとの詳細な図面はない。課題は山積みだった。
国家の威信をかけた大改修プロジェクト、顧客の要望は切迫していた。限られた予算のなかで、この課題克服に向けて横河電機に大きな期待がかかった。