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YOKOGAWA

横河電機株式会社

トップ対談

YOKOGAWAが目指すサステナビリティへの貢献

2010年より当社のCSR活動をレビューしていただいている海野氏と当社代表取締役社長海堀が、YOKOGAWAだからこそできるCSR活動について意見を交換しました。 海野氏は、「エネルギー産業」や「安全」に密接した「計測と制御」のビジネスを展開する当社グループの「戦略的なCSR」、また、新興国などにおける地域の継続性とビジネスとの関係に着目しているといいます。

震災からの復興に向けて

海野:

東日本大震災では、横河電機は直接の大きな被害を受けなかったと聞いていますが、関連する影響はいかがでしょうか。

海堀:

今回の東日本大震災で被災された方々には、こころよりお見舞い申し上げますとともに、被災地の復旧をお祈り申し上げ、当社としてできる限りの支援を続けていこうと考えております。当社につきましては、海外の主力工場がシンガポールと中国にあり、国内の工場も東京と山梨にありますので、幸いなことに直接の被害はありませんでした。しかし、素材産業のお客様や、電力・ガスや上下水道など、社会インフラを支えているお客様は大きな被害を受けました。震災に関して言えば、そういったお客様の工場の復旧を支援することが当社にとって一番重要な役割です。

株式会社創コンサルティング 代表取締役 海野みづえ氏

海野みづえ氏

株式会社創コンサルティング代表取締役。日本企業のグローバル経営に視点を置き、サステナビリティ・CSR分野の実務を支援している。

海野:

横河電機では、工場で使われる制御機器やシステムを作っているのですよね。被災されたお客様に対し具体的にどのような支援をするのですか?

海堀:

制御システムは、工場にとって脳や神経のようなものです。被災した工場では、まずモーターなどの体に相当する部分を修復し、その後に、制御システムなど脳と神経を修復します。お客様の工場が一刻も早く通常の操業に戻れるよう、当社も全力で支援しています。

新たな局面を迎えるエネルギー産業

海野:

横河電機の事業は、エネルギー産業にも深く関わっています。今回の震災で、世間のエネルギーに関する考え方も変わってきていますが、事業への影響はどうお考えでしょうか。

海堀:

これまで、主に地球温暖化や資源枯渇の問題としてエネルギーが注目されてきましたが、震災をきっかけに「安全」が新たなキーワードになりました。自然エネルギーも注目されています。もっとも、すべての電力源をすぐに自然エネルギーに変更するのは難しいので、今は自然エネルギーへの移行期間、つまり「ブリッジ」の期間だと捉えています。当社では、二次電池や自然エネルギー分野の製品開発を進めるとともに、「ブリッジ」の期間においても、世間の流れに沿って当社グループの役割を果たしていかなくてはならないと認識を新たにしているところです。当社グループの存在意義は、「人間を尊重し自然を大切にして世界の発展を実現する」ことだと考えています。

海野:

事業の中で「サステナビリティ(持続可能性)」を実現する必要がある、ということですね。横河電機の計測、制御の技術はエネルギー産業に直結していますから、事業を通じてエネルギー問題の解決に貢献し、社会の持続可能性を高めることができます。これを戦略的に実行していくことが、企業価値の創造に繋がるわけですが。

海堀:

私たちは、基本的に「経営効率の向上」「安全性の向上」「地球環境保全」、この3つの価値をお客様に提供する企業を目指しています。ターゲットとする市場は、例えばエネルギー市場ですと、自然エネルギーの他、「ブリッジ」の期間には化石燃料のエネルギーがあるわけです。新興国ではエネルギー需要が旺盛で、とにかく需要を満たして早く豊かになろうということで、化石燃料が多く使われています。化石燃料のエネルギーは現実には増えているのです。ただ、古い設備で発電していたり、技術の問題もあって、燃焼効率や発電効率は良くありません。こういった施設に当社の制御システムを入れてもらえれば、燃焼効率、発電効率が上がるので燃料の使用量が減り、当然コストも下がります。例えばモンゴルの古い火力発電所に当社の制御システムを納入したのですが、その際、当社の技術者がお客様と一緒になってエネルギー効率を向上させる改善に取り組み、大きな実績をあげています。

お客様に、環境保全や安全のための解決策を提供

海堀:

また、中国や東南アジアの例ですが、エネルギーを大量に消費する製鉄所や石油化学工場でも当社のシステムが使われています。いくつかの工場でお客様の工場を診断させていただき、運転効率やエネルギー効率を上げるための改善を提案させていただきました。一流のグローバル企業であるお客様は、常に経営効率、安全、環境保全を追い求めていますから、日本の進んだ技術や世界のベストプラクティスにたいへん興味を持っているのです。当社の製品を使ってもらうことで、化石燃料が燃焼する際に排出されるNOx、SOxといった有害化学物質を大幅に削減でき、工場操業時の安全性を高めることができます。日本では昔からあるこういった技術を世界中に広めていくことで、社会に貢献できると考えています。

海野:

横河電機では、非常に優れた品質の製品を作っているわけですが、単にそれを顧客に提供するだけではない、ということですね。

海堀:

これまでの当社の強みは、信頼性が高く365日稼動し続ける製品とサービスを提供することでしたが、これからは、さらに一歩踏み込んで考える必要があると思っています。つまり、お客様の経営効率向上、労働安全、環境保全までを含むトータルな解決策を提供していくことです。

海野:

顧客が横河電機の製品を使うことで何を得られるのか、というところまで踏み込んで理解する必要があるわけですね。

地域社会の持続可能な発展のために

海野:

ところで、今後、より大きな市場となる新興国に横河電機も注力されていると思いますが、顧客の幅をさらに広げていくには、その地域での信頼関係をいかに構築するかが重要になります。その地域のコミュニティが抱える課題について、一緒に考え解決していく、ということです。それには自治体、企業、市民、といったステークホルダーが持つニーズを汲み取り、単なる慈善活動ではなく、事業を通してどうすれば貢献できるのか、といった視点が必要になります。

海堀:

新興国や途上国では、やはり「豊かになりたい」「そのために、エネルギーや資源を使いたい」という基本的な要求があります。私たちは、そのために必要な製品を供給しています。また、彼らは外国企業の資本と技術者を入れて、現地で製造して売るというやり方では継続性が無いと考えるようになってきました。どういうことかといいますと、当社グループは、石油やガスの出る中東、サウジアラビアやアブダビで多くの事業を手がけていますが、そこでは「自国の人材を活用してほしい」という要求が非常に強いのです。エンジニアリングを含むソフトウェアの製造については、作業する場所を選びませんから、日本やシンガポールの当社の拠点ではなく、中東地域で、現地の人にソフトウェアを作らせてほしい、というわけです。ところが、現地の人を採用したくても、充分なスキルを持った人がいない。そこで、私たちは例えばサウジアラビアの大学と提携し、講師を派遣する、インターンシップを受け入れる、といったところからやっています。大学で学生に計測や制御のエンジニアリング技術を教え、習得した技術を使って実際に社員と一緒に仕事をしてもらうのです。

海野:

企業内に学校があるようなイメージでしょうか。

サウジアラビアのエンジニアリング教育施設

サウジアラビアのエンジニアリング教育施設

海堀:

学校というわけではありませんが、サウジアラビアのオフィスでインターンとして働いてもらっています。さらに、シンガポールや日本の拠点訪問の機会も設けています。そういう独自のトレーニングプログラムを持っているのです。それから、アラブ首長国連邦のアブダビでも現地教育機関と連携したインターンシップのプログラムを持っています。アラブ首長国連邦は中東諸国のなかでも女性の就労が可能な国とされていますが、実際には働き口が足りないのです。そこで、アブダビオフィスでは、2011年から、インターンとしてまずは女性を5名受け入れました。

海野:

卒業した学生は、YOKOGAWAグループに就職するのですか。

海堀:

当社のサウジアラビアの拠点に就職する方もいますが、当社のお客様に就職する方もいます。どちらにしても、当社にとっては良いことです。当社の資本と技術を現地に投入するのと、現地の人を育てる、というのをあわせてやることによって継続性がでてきますので、当社にとっても現地の社会にとっても良いことだと思っています。これを、他の国にも展開していきたいと考えています。

海野:

技術開発と人材育成は新興国で関心の高いテーマですから、そういったプログラムに力を入れている、ということを異文化の市場に体系的にきちんと示していくと良いですね。日本人同士では言葉にしなくても分かり合えていましたが、異文化においては、より積極的にアピールする必要があります。ISO26000(社会的責任に関する手引き)にも、「コミュニティへの参画およびコミュニティの発展」という項目があるのですが、「技能の開発や雇用創出」によって人々の自立を可能にする、というような、地域にとってメリットのあるやり方に重点が置かれています。地域社会の存続にとって、基本的で大事な部分です。

海堀:

CSRや社会貢献について、色々とやるべきことがあると思うのですが、私たちにしかできない部分を大切にしたいと考えているのです。計測と制御の分野で人を育てるというのは、誰にでもできることではない。あまり目先の損得は考えずに、その国や地域のために貢献すれば、いずれは国が豊かになり、当社への注文が増えるなどして結局は自分達に返ってくる。そう思ってやっています。そこが、効率やコストを最優先で考える先進国での事業との、大きな違いですね。当社の製品は、工場で十年以上にわたって稼動し続けるのですから、短期的に売って儲けて引き上げる、というわけにはいかないのです。現地の人を育てるなどの、継続性への配慮が不可欠なのです。

当社の制御システムが導入された、ブラジルの特殊ポリマー製造工場の中央制御室(NITRIFLEX社)

当社の制御システムが導入された、ブラジルの特殊ポリマー製造工場の中央制御室(NITRIFLEX社)

海野:

地域社会の継続性とともに事業の継続性もある、ということですね。

海堀:

実は、サウジアラビアの大学とは、エンジニアリング教育の分野だけでなく、研究開発の分野でも協力を始めています。研究テーマを当社が持ち込んで、大学、現地の企業、当社のお客様などが共同で研究をするのです。海洋汚染の問題や、効率的な掘削など、現地でなければ研究できない面白いテーマがたくさんあるのですよ。

海野:

CSRでは、そういった現地との関わりを「ステークホルダーとのエンゲージメント」と呼んでいます。地域のステークホルダーは、ビジネス上のパートナーにもなるという考え方なのですが。むしろ、最初からそういう前提で事業を進めたほうが、サステナビリティに繋がっていくように思います。特に新興国でエネルギーや社会インフラの分野の事業をする場合は、事業のリスク管理の面からもステークホルダーとの関わりが欠かせません。

人権や労働安全に関する取り組み

海堀:

そうですね。社会習慣や宗教など、国によって常識が異なります。私たちは、世界中の先進国、新興国や途上国、いろいろな地域で仕事をしていますので、地域の特性にあった付き合い方を大切にしています。人権という言葉にしても、国ごとに意味合いが異なり、腐敗防止の捉え方も、先進国と新興国では異なります。ただ、企業として何かグローバルに統一された行動基準は必要なのではないかと考えまして。そこで、2009年に国連グローバル・コンパクトに参加し、その人権、労働、環境、腐敗防止に関する原則を、世界中の当社グループの基準としています。

海野:

「人権」や「労働」については、ISO26000や国連グローバル・コンパクトでクローズアップされており、世界中で意識が高まっていますね。

海堀:

先ほどお話ししたように、私は「経営効率の向上」「安全性の向上」「地球環境保全」、この3つを常にキーワードとして考えているのですが、「安全」については先進国の石油や素材産業など大手企業のお客様の取り組みは、かなり進んでいます。例えば当社の社内における作業、そしてお客様のサイトにおける作業の両方について、当社は労働安全に関する様々な実績データを収集し定期的にお客様に提出することが義務付けられています。今や、安全に業務をやらないとお客様から注文をもらえない、というのが現実なのです。また、そういった先進国の大手企業が、新興国や途上国に投資をし、同様の安全ポリシーに基づいてビジネスを展開していきますから、これからはエネルギーや素材産業を中心に、「安全」に対する取り組みは世界中で進んでいくでしょう。

海野:

世界の価値観が変わっていく中で、事業のあり方、組織のあり方が問われていますね。単に製品を売ってコストで勝負する、という時代ではなくなりました。

海堀:

今後は、コンサルティングビジネスを含め、お客様視点でソリューションを提供することがますます重要になります。私たちは、様々な業種のお客様と仕事をさせていただいていますので、例えば医薬品の仕事での経験を生かし、食品のお客様に対してベストプラクティスを提供することができます。当社は長い歴史の中で、高品質の製品を強みとしてきたわけですが、そういったコアの製品に、コンサルティングやエンジニアリングといった付加価値を加え、お客様にソリューションとして提供しています。

海野:

そういった事業の流れの中に、サステナビリティの考え方をしっかりと位置づけていただければと思います。

海堀:

リーマンショック以降、新興国や途上国が力をつけてきたこともあって、やはり人々の価値観は変わったと思います。豊かになるということの意味が、金銭的なことだけではなくなってきました。地球や地域社会の持続可能性、サステナビリティの切り口が重視されていると理解しています。「人間を尊重し自然を大切にして世界の発展を実現する」というYOKOGAWAの存在意義を力強く発揮していきたいと思います。

海野:

今後、横河電機でどのようにサステナビリティが展開されるか、期待したいと思います。

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