第三者意見
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株式会社創コンサルティング 代表取締役 海野みづえ氏 千葉大学園芸学部、同大学院修了。ローランドベルガーなどを経て、1996年に(株)創コンサルティングを設立。 現在は日本企業のグローバル経営に視点を置き、サステナビリティ・CSR分野での企業活動の実務をサポートしている。 東京大学大学院非常勤講師ほか政府の委員会の委員なども務める。著書に、「企業の社会的責任[CSR]の基本がよくわかる本」(中経出版社)などがある。 |
本評価にあたっては、横河電機の主要工場のひとつである甲府工場の査察とCSR担当へのヒアリングを行い、当レポートを査読して意見を表明しています。
CSRの基本理解:戦略的CSRへの発展へ
CSRといえば、コンプライアンスや企業倫理の徹底あるいは地域ボランティアなどの社会貢献活動ととらえることが多くみられます。つまり「一人一人が誠実な行動の原点に立ち返ることであり、社会に善意の行為で報いること」と考えがちです。
しかし世界で語られているCSRは、「自社に関連する社会課題について、事業活動の中にどう織り込んで解決につなげるか」という点が強調されています。先ごろ発行になったCSRの国際規格ISO26000ではその点が明確に定義されており、CSRはサステナビリティ(社会の持続可能な発展)に強く結び付くべきものとしています。
これにはCSRをリスク対策や良い会社としての活動だけで終わらせるのではなく、経営にとって機会を生み出すプラス要因として、競争力の強化につなげる戦略的CSRへと発展していくことが重要です。

横河電機のCSR活動への意見
CSRの戦略性への発展
現在の横河電機のCSR活動はリスク対応としての側面が中心となっています。また、現状の製品やソリューションは個別に環境・社会への負荷の削減に貢献しているものですが、サステナビリティつまり環境・社会要因を全体の事業戦略に組み込んで機会と考える視点が少ないことが残念なところです。
同社の主力事業である計測・制御機器は、顧客の利用サイドでの環境負荷削減やプラントの効率的な操業に大きく貢献する製品群です。顧客と一体となって世界のサステナビリティに寄与する事業を軸にされており、それこそ戦略的CSRといえるでしょう。世界が地球規模で長期的な発展を目指している今日、横河電機が環境問題の解決につながる事業を行っていることは強みです。これは最早CSRを超えており、横河電機の事業戦略がサステナビリティ経営として統合しているといえます。
これまでの横河電機の特徴は優れた技術にあったと伺いますが、これからはそうした技術や製品がどのように社会のニーズに適合し、社会全体のベネフィットをもたらすかが問われます。「顧客のニーズに応える」だけでなく、「社会全体のニーズにどう対応し課題の解決につなげていくか」という視点で事業をとらえ直していかれればと考えます。
その際重要なことは、サステナビリティを目指した適用分野に重点を移していくことです。これまでは製油所など石油関連が中心でしたが、サステナビリティ時代では脱石油のクリーンエネルギー開発、水処理設備の開発が強まっています。そして個別機器や施設での省エネルギーから、地域一体をスマート化する都市広域レベルでの全体効率化があがっています。これらの課題に横河電機としてどう関わるかといった、サステナビリティ戦略が期待されるところです。
CSRの基本部分
このようにCSRをサステナビリティ面での全体戦略に組み込んで考えると、現在の活動は基本部分+ガバナンスにあたるといえます。労務管理や環境・安全衛生管理など、既に内部統制システムのなかでCSRの取り組みがされているものもありますが、「管理」としての側面が強いようです。基本的CSRでも「やるべき活動」として枠に押し込むのではなく、日常業務のなかで環境・社会的な意識が自発的に生まれるようなマネジメントを目指していただきたいと考えます。
特にこれから重要になるのは、海外での事業活動におけるCSRです。ISO26000でも、人権や労働慣行といった新興国・途上国を念頭においた主題が多く盛り込まれています。グローバル化した経済下での多国籍企業への責任がますます問われているのです。下記の課題に体系的に取り組むことがこれから必要になってくるでしょう。
・労働慣行
職場の安全衛生や雇用労働環境、人権の課題が重要になっています。
横河電機の場合、様々な人種・国籍の人材が混在する海外グループ会社や顧客プラントの
サイトまでがこれらの課題の対象となっており、難易度が高いといえます。
また、労務条件の整備にとどまらず、人材育成や能力開発までを含んだ労働慣行の課題として考慮する必要があります。
・サプライチェーン
CSRの要請は、社内だけでなく、サプライヤーやビジネスパートナーにまで及んでいます。横河電機の工場に顧客企業からCSR査察が訪れているように、サプライヤーの活動まで対象になっています。「サプライチェーンCSRガイドライン」の提示とともに、その実践具合まで把握しておくことが求められてきます。
・社会貢献
国内の社会貢献には積極的な横河電機でも、海外でもその地域で求められる活動ができているか、これからはそこまで視野に入れることが必要です。昨今は与えるだけの活動でなく、地域や従業員の能力を引き上げるといった自立を支援する姿勢が求められています。企業にとっても、コストではなく社会への投資ともいえる取り組みです。
どの会社にもお馴染みの取り組みだけでなく、横河電機の事業ラインや操業の特徴にあわせた戦略的社会貢献活動をうまく展開していくよう期待します。


